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心の護り方

作者: 虚月

 心を護るために、君は一体何をする?








 心は脆そうで、でも丈夫で、柔軟で。どんな形にもなる。それが心。


 いろんな色があって、いろんな形があって。


 どんなことがあっても、もう無理だろって思っても完全に壊れないのが心で。


 でも、心に傷が付くのはすごく痛くて、ずっと残って。


 傷一つでこれからが変わる。


 傷なんかつけたくないから、みんな自分を必死に守る。


 ある人は心の周りを、偽物の心で覆って。壁を作って。周りに人がいなくなる。


 ある人は心を騙し続けて。いつしか自分を忘れて行く。


 ある人は心を傷だらけのまま放置して、ボクの目の前から消え去っていって。


 どんなに心が壊れたって思っても、涙はなぜか流れてきて。


 幼かったボクはそれを見ているのが辛かった。そうなるのも嫌だった。




 でも、そうならざるを得なかった。ありのままでいるのを、社会は許してくれはしない。


 多数が正義で、少数は悪。


 少しでも他人と違えば、目の敵にされ。


 一歩間違えば、暗闇へまっさかさまに落ちて行く。




 ボクは、自分を偽るのは嫌いだった。


 だから、ボクは心に鍵をした。


 いくつも心を創って。本当の、全てがつまっている心を包むように。幾重にも重なった心は、重かった。


 重ねた心は、盾のようで。その時にちょうどいい感情を出せるように、間違えて自分が傷つくことのないように、入れ替わっていく。


 それでも、本当じゃないボクの心は、本当よりも脆くて硬くて。ガラスのように壊れやすい。



 気付けばひびだらけになっていたボクの心の代わりたち。それは、日に日にボロボロになっていった。


 治ることも、治す事も無く。


 ついに一つ、心が死んだ。


 死んだその心は、本当になって、代わりの心たちを押しのけて、出てこようとする。


 でもそれを代わりの心が押さえつける。


 だから、ボクからその感情は消え失せる。


 だんだん、生きてる代わりが少なくなってきて。


 押し殺していた本当はいつしか、死んでいて。もう、前に出てこようとすることはなくなっていた。




 ふとした瞬間。最後の代わりが死んだ。


 ボクの顔からは表情が消える。


 その代わりとでも言うように、今まで痛まなかった胸が、ズキズキと痛みだす。


 今度は本当のボクの心にひびが入っているかのように。どろどろと、血を垂れ流し、鉛のように重く、鉄のように冷たい。そんなボクの変わり果てた心が。


 それでも、心が壊れてしまったわけではなくて。


 壊そうと、壊さなければと。


 いくら試しても、ボクの心は壊れてくれない。




 どうやったって壊れはしないけど。壊れてくれなきゃ、無理なんだ、ダメなんだ。




 そうしてボクは今日も、あの天井からぶら下がっているわっかにたどり着けるように。


 なんどでも、心を壊そうとする。





 心を護ったところで、いつしかそれは壊される。


 そして、本当の心を、いつしか自分が壊しだす。



 壊さなければ、終わらすことができないから。


 壊れなければ、終わるしかないから。


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