黒い読み聞かせ⑦「予想だにし得なかったダニ」
ある家庭の、
湿ったお布団に、
たくさんのダニたちが、暮らしていました。
ある日、
じいさんダニが、みんなに警告しました。
「このお布団も、そろそろ陽に干されて、
大勢の仲間が犠牲になるじゃろう。
悪いことは言わぬ。今のうちに、
みんな、ベッドの下に逃げるのじゃ」
若いダニたちが、笑い飛ばしました。
「ちょ。じじい! うわごと、ほざいてんじゃねえよ」
「予言とか信用できねえし」
「フトン干すとか、あり得なくね?」
じいさんダニは
「おろかな若者たちよ。地獄をみるがよい」
そうつぶやくと、布団から離れ、ベッドの下に避難しました。
よく晴れあがった日、
お布団は、外に干されました。
ダニたちは大騒ぎです。
お布団は、干上がったアフリカの大地のように、
みるみる水分が蒸発し、乾いていきました。
ダニたちの体は、
ジリジリと焼け焦げ、カラカラになっていきます。
それは、ダニたちが
予想だに、し得なかった、大参事になりました。
やがて、天から
ハートの形をした、巨大な棒のようなものが現れ、
お布団の大地を、パンパンと、はたいていきました。
大地は、大きく揺らぎ、
干上がったダニたちは、
お空へと、舞い飛んでいきました。
やがて、お布団は、
再び、暗い寝室の、ベットの上に戻されました。
ベッドの下に隠れていた、じいさんダニは、
「あわれなダニどもよ。あれほど警告したのに」
小さくつぶやきました。
そして、フカフカのお布団の中に戻ると
「むふ~。この、こんがりとした、におい。たまらんのう。
んふふふ。てか、いったい何のにおいかのう。むふふふ」
とっても、幸せな気持ちになりました、とさ。
めでたし、めでたし。
(了)
あの香ばしい匂いは
ダニの死骸のにおいらしいすね。ʕ -ܫ-ʔ
【黒い読み聞かせ】
①「虐げられたシイタケ」
②「微塵も反省しないミジンコ」
③「ブチ切れる青筋アゲハ」
④「思う壺だったウツボ」
⑤「白黒つかなかったパンダの国会」
⑥「チクワが好きなチワワ」
⑦「予想だにし得なかったダニ」
「ホラー館」(第19話までUP済)もよろしくね。
by 渋クマ通信社