穢れた血族
「ルールはアリーナと同じ3on3の団体戦。この”ダルヴ”がサブオーナーとなり『鮮血の暁』の運営方針を決めるかどうか、こちらが勝った時それを要求する。できなかった時は、そちらの良い様にしてくれて構わない」
ニュートライズド実装後においてもコンスタントに好成績を残すダルヴという青年型PC。オールバックの黒髪と、むき出しになった堀の深い顔つきが厳格さと威圧感を持つ。美青年ではないが、確実に女性からの支持を得るような顔つきだ。
そのダルヴが言った言葉で、鮮血の暁。基、アルカ=D=ケーニッヒの率いるギルドの内部分裂が始まった。
結果が出るのは早かった。”今”についていけない旧上位者であったアルカは、ダルヴに地力で負けていた。
デック構成、相性、それらを整えた上でも経験、戦い慣れ、センス。その全てがダルヴに敵わない状態だ。
ダルヴに敵わなかったのはアルカだけではない。今までの鮮血の暁を支えてきた上位メンバーも、ダルヴに一本取ることも無く打ち破られていった。
「ダルヴ。私も今の”ダストレイジ”の情勢に対応出来ない状況だ。お前に鮮血の暁の運営を任す。実力も確かで、それに以前お前と語り合った時、私利私欲で人を巻き込まない人間だとも信用している。任せ……頼みます」
ダルヴ率いる実力派勢力はオーナーの失態に苦笑を漏らした。ダルヴはそんな情けないアルカを鼻で嗤うこともなく「ありがたいお言葉、承ります」と丁重に返した。
無力さと屈辱感。ゲームとリンクするための電極を剥がした時には、胸の中がえぐり取られ空洞になったような感覚があった。
「人の輪と歴史」を尊重して、そして自分の為に戦ってくれたメンバー。その誰もがアルカを笑うことも責めることも無かったが、アルカ自身が──いや『奥坂シト』だけが、何もない自分を嗤い飛ばしてやりたい気分だった。
「俺は……俺は……」
時計を見れば午前中の大学の講義が終わっている時間帯だった。締め切られたカーテンからは間もなく春を通り過ぎようとする陽がこぼれている。