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そのスペルダスト 『ニュートライズド』 14

 「しかし、どうしてスピラはキングスウィングに?」


 白色のテラス。希少鉱石を加工して出来上がるティーカップ等が並べられた一帯。見晴らす先は湖と森系ダンジョンがあり、満月が宙空に浮かぶ。

 ミストヴァイトの本ギルドだ。


 ミストヴァイトの基本的な活動内容はダンジョン探索。その目的はゆるく探索して素材でも集め、こうして趣味と言っても過言ではないオブジェクト生成に費やすことだ。

 だとも言うのに、血なまぐさいPvPに、そしてキングスウィングにスピラは出ると言う。それを聞いた同ギルドのフェアリーPCがスピラに問う。


 「自分を試してみたい……とか?」


 据え置きのポッドをそのまま掴んで、スピラは胸の前で掲げた格好で静止する。


 「なんていうかさ、自分は不公平なことが嫌いでPvPとかその典型で嫌いだった。”マリス”を引退させたリザとかその典型だけど、私はあの個人そのものを嫌うことは少ない。ああいう人種が嫌いなだけなのは確かだけど、そういう連中に後ろ指さされず堂々と挑戦できるって素敵なことだと思うんだよね」

 「は、はぁ」


 ポッドの蓋を取って、スピラはその飲みくちに口元を当てる。ガブガブと行儀悪く紅茶を飲み干して口元を拭うスピラに、フェアリーPCは険しい表情を見せながら息を漏らすように沈黙していた。


 「私も人間だ。仕返しなのかもしれないし、そんな発想が湧くほど出来てない人格なのかもしれん。でも、新しい世界を突き進んでいく……ゲームのデータでできたダンジョンエリアとかそういうのでなく、人と人の意志と思いがぶつかり合う確かな空間──ま、つまんなかったらやめるけどね」


 そう言ってスピラは舌をぺろりと出して席を立った。

 テーブルの上で空になったカップ2つとポッド。斜め45度の角度で据え置かれた2つのオブジェクトが月光に照らされ艶めいた白色の光を帯びている。


 「オーナー……」

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