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そのスペルダスト 『ニュートライズド』 12

 朝の学内の廊下の隅、その一角で語られる学生らの会話の端々からはキングスウィングという言葉が散りばめられていた。


 キングスウィング。ダストレイジ内に存在する数少ない消費型アクセサリー。手に入れた瞬間から2周間で消失するアクセサリーで、身につけているとPCから翼型のオーラが3対現れ、黄金の粒子を放つ。

 このキングスウィングの入手はアリーナで定期的に行われる個人戦総当りトーナメントの優勝者に送られるもので、別段特殊な効果はないが強さそのものの証明となることには間違いないだろう。


 ニュートライズドが浸透し、対人戦のイロハや定石がすべて変わってからの初めてのキングスウィングトーナメント。ダストレイジをしているプレイヤーで、特にアリーナに精通する人間としては見離せない話題だ。


 教室の扉を空けて現れるのは目の下に漆黒のクマを付ける少年、紗宮アキツ。フラフラと今にも倒れそうな浮浪者が如く自分の席へと歩いていった。


 「ねえ、ミソギ。聞いてんの?」

 「へひぃ!?」


 垢抜けた学生の集団、その中で硬直する長い黒髪の少女は、仲間内の同性に言われて間抜けな声を溢す。


 「どったの? 怖い顔して」

 「こ、怖い顔?」

 「そうだよ。何か悩みでもあるの?」


 水原ミソギの中に、悩みなどはなかった。しかし、自分の頬や眉間に指を重ねて見ると強直しており、どこか筋肉繊維に怒りに似た何かが篭っているのを感じていた。


 「ちょ、ちょっと重くて」

 「ははーん」

 「うるさいなぁ、何ニヤニヤしてんだよ」


 微笑しながらそう返すミソギだが、その胸の中には疑問符が今だに残り続けていた。


 リザ=グランツ、この現実世界で紗宮アキツと言われる存在が、あんなにフラフラで死にそうな血色、死にそうな風貌でもあるのに──どこか充実感や期待に胸を光らす輝く瞳をしていたからだ。

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