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東方屍姫伝  作者: 芥
一章 その盲目少女は何を聞くか
62/72

新聞

私の朝はピピピッとなる目覚まし時計の音を聞くところから始まる。

針は四のところをさし、外は薄暗くまだ日の出前である。


私は未だ開こうとしない眼をこすりながら煩くなるその目覚まし時計を止め、大きな欠伸をした。


「……ん、あさですかぁー?」


情けなく欠伸をした後、よしと気合を入れ直し私は起きようとすると、私の隣で寝ている全裸の少女が寝ぼけながら目を開き、起き上がろうとする私を見上げる。


私はそんな寝ぼける様子を見せる愛しの人を見て、微笑んだ。


「ああ、おはよう斬乂」


千樹 斬乂ーー、私は愛しの彼女を見つめながら優しく彼女の頬を撫でた。



✳︎✳︎✳︎



ーー私こと、白鷺 雪の朝は早い。

春先で少しひんやりする中、生まれたままの姿で起きる私は枕元に散らかるお馴染みの白装束を羽織り、未だ寝ぼける旦那様ざんげを背中に台所に向かう。


時刻はまだ午前四時ちょっとで、日も出ておらず少し起きるには早いなか私は台所のところにかけられたエプロンをつけ、冷蔵庫を開ける。

昨日のうちに炊いておいたご飯を出して、それを電子レンジに入れて温め始める。


続けて私は電子レンジでご飯を温めるとともに、収納棚からフライパンを取り出し、ガスの元栓を開けて火をつける。

私は未だ見慣れないひねるだけで火がつく河童製のそれを見て、うおっと驚きながらもフライパンに油を乗せ、卵を割った。


私が調理を始めると背後から襖の開く音がした。


「……ふあぁ、あさごはんはいらないって何度も言ってるじゃないですかあー」


まだ目が覚めていないのか目をこすり大きな欠伸をし、文句を垂れながらいつも通りの大きな声を張り上げる斬乂。

私はそんな彼女に目を向け、呆れながら返事をする。


「なにをいっている? 朝は大事だぞ?」


「そうかもですけどー、ただでさえ私に合わせて早く起きてくれてるのに朝食まで準備してもらうのは何か申し訳ないですよー」


「別にいいだろう? 仕事に行く旦那の朝食を作るのは妻の役割だ」


「むー、それよりも私はもっと雪にゃんとニャンニャンしたいんですぅー」


斬乂は無邪気な様子で私の背後が抱きついてきた。

私はいきなりの斬乂ののしかかりに慌てて火を止め声をあげる。


「ーーっこ、こらっ!?」


「いいじゃないですかー。雪ニャンだって昨日の夜はもっととか言いながら甘えて……」


「と、時と場所を考えろ!?」


この前だって朝に盛ってしまい止まらなくなり、いつまでたっても地底に行かない斬乂に呆れをなした八雲 紫が、行為中にもかかわらず頭上にタライを落として止められたばかりだというのに……。


私はそう思いながら斬乂を引っぺがして、焼きあがった目玉焼きをさらに移し替え、昨日の残りの味噌汁を温め直す。

そんなつれない私を見てか斬乂はぶーたれながらも冷蔵庫を開き、作り置きの冷えた麦茶を取り出して、台所から出てすぐの部屋に行き、卓袱台の前に座る。

私も電子レンジから温めたご飯を取り出し、目玉焼きと一緒に斬乂のもとに運び、斬乂の前に置いた。


「ま、こういう生活し始めたころに比べれば昨日の残り物ばかりで、朝食を作っている感じはしないがな」


「それでいいんですよー。最初の頃なんて午前の二時起きで朝食を作るとかアホとしか言いようがないですよー」


「い、いいじゃないか……。私は家にいるばかりで斬乂に何もしてやれないし……」


「そんなことないですよー。夜は色々とお世話になってますぅ」


主に布団でね、とうひひと笑いながら斬乂は私の出した目玉焼きに醤油をかけながら私の姿をジロジロと見る。

そんな斬乂の下卑た目に晒されるも悪い気はしないと私は思いながら顔をほんのりと赤くし、逃げるように台所へと戻り温め直している味噌汁を取りに行く。

そして、そんなやり取りを毎度迎えながら私の1日は始まって行く。


これは、私こと白鷺 雪が起こした骸鬼異変からもう少しで四ヶ月が経とうとする日の事である。



✳︎✳︎✳︎


「ちーす! 雪いるかー?」


私が斬乂を地底に見送り、掃除と洗濯物を一通り済ませこれから一息つこうとした時にその白黒の魔法使いは現れた。


妖怪の山の麓にある私と斬乂の暮らす屋敷。

数ヶ月前までは数百年単位で使っていなかったから相当ボロボロではあったが、地底の鬼らの協力により新築同然と綺麗になり、家具や電化製品などは妖怪の山に住む河童などが鬼の大将である斬乂にみかじめ料といい持ってきたものが多数ある。

特に住み心地は悪くなく、不満があるとすれば八雲 紫の出した斬乂は1日の半分は地底で過ごす、というよくわからない条件くらいだろうか?

なんか妖怪のパワーバランスがどうのとか言っていたがそんなこと知ったこっちゃない……のに斬乂は一応は律儀に守っている。


しかし、制限はそれくらいで私としては何不自由なく平和に暮らしている。

時々、買い物に人里に出たり、黒羽のところにお茶を飲みに行ったり、茜の墓参りに行ったりと自分なりに今の生活を謳歌している。

まあ、他に文句があるとしたら……


「おーい……っているじゃないか?」


白黒の魔法使いは手に持つ竹箒で襖を勢いよく開け、私の様子を見るなり一言いい、もらうぜーとか言いながら図々しくも私の前に座り今から食べようとしていた煎餅の袋を開けボリボリと食いだす。


「はぁ……、あのなぁ……」


私のいう文句……。

それはここ幻想郷に住む奴らは異常にフレンドリーな事……いや、図々しい。

人の家に平気に上がりこむわ、人里を歩いていたらいきなり肩を組んで話しかけてくるわ、人が人里の甘味処で食べていた団子を平気で横からかっさらうわ……。

しまいには私と斬乂が夜中にいちゃいちゃ、というかいざこれから行為を嗜もうとする時にも宴会やるぞと上がり込んでくるわと……。

まあ、ほとんどはこの白黒の魔法使い……霧雨 魔理沙が元凶なんだが。


私はボリボリと煎餅を齧る魔理沙に呆れながら煎餅の袋を取り返し、私も同じように煎餅を齧りながら問いかける。


「で、なんのようだ白黒?」


「そうそう!とりあえずこれ見な!!」


「……天狗のところの新聞?」


煎餅を咀嚼しながら魔理沙は私に一紙の新聞を寄越してきた。

私は煎餅をボリボリと齧りながら渡された新聞に目を通す。


内容は先日起きた地底から来たでっかい船のことや、その異変の元凶であった奴らの密着インタビュー、他にも人里で起きた些細な事件や博麗の巫女がまた何かやらかした、などくだらないことが書いてあった。

しかし、軽く見る感じでは特に気になることは……。


「違う違う、その裏だ」


「……裏?」


私は魔理沙の指摘に言われるがままに新聞を裏返すと、一面とは言わないが半分ほどの記載で書かれた内容に私は目を向けた。




『"屍の姫"と瓜二つ!? 博麗神社で奴隷生活か?』




屍の姫。

その二つ名に私はまず目がいった。

内容を読み進めていけば、外から来た外来人でその人間は黒髪ではあるがまるで私の生き写しで、現在は博麗神社で匿われ中であるという事だ。


「……これは?」


「あぁ、なんか昨日神社の境内にいきなり現れた外来人らしいぜ」


「外来人と……私はまだ会ったことないな」


幻想郷の外から迷い込んでくる人間、と私は外来人については把握しているが……、一説には八雲 紫が野良の妖怪の餌用に連れて来たり、気まぐれの遊び感覚で連れてくるとは聞いたことがある。

つまり、八雲 紫が全ての元凶、と私が慧音先生の外来人の話を聞いて思ったことである。


「私も今日のこの新聞を見て本当かどうか気になっちまってさー。物見ついでに瓜二つというお前を連れてって本当にそっくりか比べて見たいなー、てな!」


「……ふーん」


つまりこいつはそのそっくりさんと私を比べて面白がりたい、と。

まあ、クール系美少女を自称するいつもの私ならくだらない、と鼻で笑って魔理沙の首根っこを掴み追い出していただろう。

だが、私と瓜二つ、と言われて私の元妻の白鷺 茜と、その茜と瓜二つであった数ヶ月前にほんの少しの間だけ私と行動を共にしていたあの"狐の面"の少女のことを思い出す。


あれからなんの音沙汰もないし、関係はないとは思いたいが……。


「まあ、人里への買い物ついでに行ってみるかね」


ちょうどもう少しで味噌がきれそうだった気がするしね。

そう思いながら私は必要なものを持ち、魔理沙と共に博麗神社に向かった。


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