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東方屍姫伝  作者: 芥
二部 "桜ノ命"編
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カミガミノアソビ


ーー目は開かない。

私が盲目になったわけではない。

しかし、目を開こうと意識をしても見えるべき風景どころか自身の姿さえ己の目に映ることはない。


ーー口も開かない。

ここはどこ?

その言葉を唱えるどころか、呟こうと意識しても口が動く感覚がしない。

それどころか自身に不思議な浮遊感があり、己の身体の感覚すら感じない。


ーー私はなにを?

明日から夏休みだね……、そのような会話を昔馴染みの幼馴染としていたのは覚えている。

しかし、そこから先を思い出せない。


ーー身体も、意識も、空白に感じる。

ここはどこだ?

いまはいつだ?

私は何をしている?








ーーわたしは、なんだ?



























「ごきげんよう!! 客人よ!!」


私が困惑する中、そんな馬鹿でかいセリフと共に"それ"は現れた。


歌舞伎か何かの舞踊で使っていそうな"狐の面"をつけ、中性的な声を発し男か女かもわからない存在。

自身の姿を捕らえることができなかった目は、なぜかその狐の面をつける存在を見つめることができた。



ーーここはどこで、おまえはだれだ?



訳も分からぬ状態だが、冷静とそう問いかけようとすることはできた。

しかし、あくまで問いかけようとしただけで口から発せられるべきその言葉はあるかわからない自身の口から発せられることはなかった。


だが、その狐の面をつける存在が見えるというなら、なぜ私の目は"私"を捕らえないのか?

そう疑問に思っていると、私の疑問にその怪しげな"狐"は簡単に答えてくれた。


「どうやら色々と困惑しているようだ! だが仕方なし!! しかし、言わせてもらおう哉!!」


変に高いテンションで、"狐"は言った。







「死んでしまうとは情けがない!!」






その変な存在は某ゲームの王様のセリフを高らかに言う。

私は思わぬ言葉に、は? という言葉を脳内に浮かべるだけであった。



✳︎✳︎✳︎


その言葉に、私は暫く呆然としていた。


ーー私が、死んだ?


言葉にはできないが、脳内というか意識上にそう呟きながら私はここに来て初めて混乱をし始める。


子どもの頃から貴女は小さいのに大人びている、と近所のおばさんたちから言われ、クールで大人びていることを自称している私が……、滅多に動揺することがなかった私が生まれて初めて取り乱し、頭の中が混戦としている。



「おっとお!! どうやら今宵の客人も、己の置かれた立場を理解していないようだ!!」



テンプレ反応あざーす、と言いたげな様子でそれは嘲笑うかのように私を見下ろした。

そして、ケタケタと笑いながら言葉を続ける。


「私は神様!! 迷える仔羊を導くありがたい存在さ!! それで、君は死人……いな、肉体を持たぬタマスィさ!!」


ーー私が、死んだ?


「ザッツライッ!!」


私が思ったことを読むように、それは答えた。

私は突然の返答に困惑し、そんな様子を見て自称神様は笑いながら答えた。


「そう!! 君の最後は交通事故!! トラックに轢かれて、バラバラでグチャグチャな最後さ!! ああ、とても憐れ!! 今頃はご両親もグチャグチャで面影のない娘を見てさぞ悲しんでいることであろう!!」


ーー……あぁ、そういえば。


そうだ。

私は、確か学校の帰り道に……。


「うら若き少女っ……! それはバラバラとなり、若くして亡くなった!! あぁ、可哀想に!! これからの未来ある若者をよくも運命は終わらせてくれたようだ!!」


ーー自称神様が、運命とか……


「おや? 思ったより冷静だね」


自称神様のボケ?に私は呆れながらに呟いた(思った)。

そして、どうやらそんな私の呆れた様子を見てか自称神様は首を傾げた様子だった。


「以前に迷い込んできた子猫ちゃんは泣き叫びながら、想い人の名を叫んでいたが……、どうやら今宵の仔羊は中々見所があるようだ!」


自称神様はケタケタと笑い、嬉しそうに笑いあげた。

そして、その自称神様は続けて言葉を放った。





「ーーさて、では君の"望む"ものはなにかな?」




あまりの急な言葉。

なんの脈絡もなく、"それ"は私に尋ねた。


私が突然のその言葉に、今日何度めかの動揺を見せるとその自称神様はくくくっ……、と怪しげに笑った。


「以前の子猫ちゃんは、"想い人"との日常を願った!!では、今宵の仔羊はなにを"望む"の哉?」


ーー望み?


「そう!! 私は神様さ!! 運命に挫け、叶えるべき夢も進むべき未来にも進めなかった憐れな仔羊に、せめてもと思い死後に"一つ"だけ望みを叶えてあげることのなにが悪いの哉!!」


笑いながらも、先ほどのおちゃらけた感じとは違い、力ある言葉で自称神様は力説する。


私は、そんな胡散臭い様子を感じながらも色々とありすぎて理解が追いつかず、いつの間にか自分が死んだという疑いすら消え失せていた。

しかし、一周回って冷静になったのかその自称神様の言う"望み"という言葉を聞いて、私は少し考えた。


望み、願い。

その自称神様は、この私の願いなるものを叶えてくれるといった。

死んだ、と言う自覚は未だにわかず、もしかしたらこの時ももしかしたら阿呆な夢で、本当は私の一夜に見る壮大で、ちっぽけな自問自答な夢かもしれない。

もしそうなら自称神様は内なるもう一人の私で、深層心理がウンタラカンラタと、己の欲望がナンタラとなり、少ししたら目が覚めていつも通りの目覚めが来るのかもしれない。

そして、トラックに轢かれて死んだというのももしかしたらなんの脈絡もないくだらない夢なのかもしれない。



「ふふ、どうやらまだ信じていないみたい哉?」



今この時間は果たして事実か現実逃避か否かを考えていると、自称神様が待ちきれずか私に話しかける。

私はいきなりのことで信じろという方が無理だろうと思いながら、自称神様に向け言葉なのか念話なのかよくわからない現象で語りかけた。


ーーお前は私に何を求める?


「おや!! 神様が不幸な仔羊に救いの手を差し伸べることの何が悪い!! 」


ーーその救いとは?


「仔羊が次なる世界にて求めるもののことさ!! 前世ではなし得なかったことを!! 次の生では叶えたいとは思わないかい?」


ーー次なる世界?


「おっと? 説明していなかったね!!」


次なる世界。

私は自称神様が言ったワードの中で気になる言葉を呟くと、うっかりしてたと言いたげな様子で自身のアタマをコツリと叩いた。


「そう!! 君は転生するのさ!!」


ーー転生?


「聞いたことはない哉? 異世界転生!!」


ーー知らん。


「おっと!? 最近の若者の癖に知らないとは!!」


失礼な……。

最近の若者が万に通じていると思うなよ。

私はそのイセカイテンセイ? なるものよりも可愛い可愛い幼馴染と遊んでいる方が楽しいのだ。

……そういえば。



ーー自称神様よ。


「なにかな?」


ーー私がトラックに轢かれて死んだのなら……。



私の隣に歩いていた"幼馴染"はどうなった?

私は自称神にそう問いかけた。


そして、その問いかけを自称神様が聞くと、神はクスリと笑い、何かを誤魔化すように呟いた。


「神のみぞ知る、ってところかな? 」


ーーそれは知っていると?


「さあ? 想像に任せるよ」


先ほどまでのように笑って誤魔化すのではなく、白々しくその自称神様は私の問いに答えた。

そして、その様子を見て答える気がないのも私にはわかった。


ーーなら、私の願いは……


「先に言うけど、『幼馴染は無事か?』とかそういうつまらないのはなしだよ! 私は一つだけ叶えるとは言っても、なんでも叶えるとは言ってないからね!!」


生き返らせろと言われても困るしね。

自称神様はくつくつと笑いながら私の先手を打って来る。

私はそんな自称神様の様子を見て、けちん坊と思いながら心の中で自称神様に向かって唾を吐きかけた。


「どうやら言葉足らずだったよう哉? 私の叶える"望み"とは次の生……来世でどうなりたいかさ!! 金が欲しい、名誉が欲しい、女が欲しいエトセトラエトセトラ!! 次の人生で生まれた時から持つ幸せなアドバンテージを!! いまここで!! この神自らが【聞き】届けてあげようということさ!!」


その自称神様の力説に私は理解した。

つまり、私の望むものとは来世で自身が有利になる自称神様からの"プレゼント"を決めろということだ。


もし、本当にそんなことができるのならこいつは自称神様ではなく本当に神様なのだろう。


本当に、できるならだがな。

まだ、本当に自分が死んだのかも定かではないしな。

だが、まあーー、本当に願いが叶うなら……。


私は内心でため息をつきながら、ぼそりと呟くように自称神様に言った。






ーーなら、私の願いは【ーーーーーーー】







己の、願いを……。

"神"に願ったーー。



そして、私が願いを言い終わるとその"道化"は高らかに笑った。





「あぁ!! ああ!! 了解した!!了解した!!」






「良き哉!! 良き哉!! その"願い"は大変良き哉!!」





「その自己中心的な願望!! 欲望!! まさしく傲慢!!」






「凡人が【聞いた】ら【聞く】に耐えない"その"願い!! 私が確かに【聞き】届けた!!」





「さあ!! 【聞かせて】おくれよ仔羊よ!!」





「その傲慢がどこまで【聞く】に耐えるか!!」












「その傲慢が!! どこまで叶えられるかを!!」













その"道化"の高笑いとともに、私の意識は薄れて言ったーー。



そして、最初に言っておこう。

これは私の、【桜井さくらい みこと】の傲慢を語り【聞かせる】物語だ。


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