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東方屍姫伝  作者: 芥
三章 その少女は幻想へと歩む
23/72

紅茶

二人で話がしたいーー


風見 幽香はそう言った。

そして私は言われるがままに黙って首を縦に振るしかなかった。

怖いから大人しく言う事を聞いた、という訳でなく、申し訳なさの大半で私は彼女の申し出に首を縦に振ったのだ。


と言っても罪悪感で身体が押しつぶされそうということではない。

申し訳なさはあるが、それは過去の事であり、私には遠い記憶のことだからか、言うほどまで罪悪感はない。


しかし……しかしだ。

風見 幽香にあれ程の殺気を出され、私の肩の関節が外れるくらいの握力を出すほどに、彼女はキレていたのだ。

なんというかそこまで怒るほどに、私に置き去りにされた事にキレられるとは思いもしなかった。

いや、普通は怒るほどの内容なのだが、今すぐ殺すみたいな殺気を出されたら萎縮してしまう。

例え、殺し合いになったとしても、私の方が圧倒的に悪いので、手を出しづらいのだ。


なので、とりあえず二人で話を、という言葉に首を縦に振ったのだ。



「はい、紅茶よ」



幽香がそう言いながら私の目の前に、赤色の液体が淹れられた白色のティーカップを置く。


私は現在、幽香に話をしようと言われ幽香の家に招待された。

向日葵に囲まれたあの赤い屋根の小屋がどうやら幽香の家だったらしい。

家と言っても小さな部屋が三つくらいしか無いこじんまりとしたものだが。


そして私は、と言うと幽香の家に招待され、現在、木で作られたテーブルにじっとうつむきながら座らされている。

怒った様子でお話をしようと言われたので、もっと物理的な何かによる"お話"だと思っていたが、紅茶を出された限り本当にただ話をするだけのようで拍子抜けだ。

実際にはこちらの方が私にはありがたいが……。


ちなみに妹紅は私は寝ると言い、幽香の家の外で雑魚寝している。

まあ、幽香が私と二人で話したいというので、仕方がなく妹紅は外で私の事を待ってくれているのだが。


「あ、有り難うございます……」


「敬語……やめてくれる?」


私に差し出された紅茶を飲もうとすると、幽香は私の目の前にお茶請け用であろうクッキーをドンと大きな音を立てて置き、そう言う。

そして私を見下す様に睨む。


「は、はいっ……じゃなくて、うんっ!」


私はその言葉にコクコクと勢いよく首を縦にふる。


もぉ、ちょう幽香さん怖い……。

美人さんなんだけどすごい怖い……。

あの目で睨まれたらもう怖くてたまらない。


私が幽香の態度を見てそう思っていると、幽香はテーブルを挟み私の正面に座った。

そして黙ってカップを持ち、紅茶を一口飲み、かちゃりと受け皿にカップを置いて口を開く。


「……雪、紅茶の味はどう?」


幽香は私の目を見ながら言う。


私はまだ一口も飲んでもいないので味を聞かれても困る。

なので私は幽香にそう言われ、一口もつけていない紅茶を慌てて飲んだ。


飲んでみた感想は、美味しいと思う。

といっても紅茶なんてそんなに飲んだこともないし、前世はおろかこの時代に紅茶なんてまだ普及していないので、幽香の物と他の紅茶の味を比べることができない。


「え、えーと、美味しい……かな」


「そう? お世辞はいいのよ」


ニコリと幽香は微笑んだが、先ほどの睨みつける様な目を思い出すと、美味しいと言えという脅されてる感がある。

まあ、不味くはなく、本当に美味しいので嘘は言ってはいない。

ただ言わせて貰えば私の口には合わないだけだ。


「い、いや本当に美味しいさ。外にあった花壇から採れたものかい?」


「……えぇ、そうよ」


幽香は一瞬だけキョトンとした顔をするが、すぐに私に向け笑みを浮かべ首を振った。


「貴女は飲める人なのね?」


幽香は私の言葉に肯定した後、ポツリとそういった。

私は言葉の意味が一瞬だけわからなかったが、すぐに紅茶のことだとわかった。


「ま、まあ……といってもそんなに飲まないが」


「ふふっ、ほんのたまに私の家に客が来るのだけど、そいつったらマズイからいらないとかいうのよ」


幽香はクスクスと笑いながら紅茶を飲む。

その客はなんて図太いやつなんだ。

出された飲み物くらい、私の様に黙って飲めってんだ。


「それも私が焼いた物なの、食べてみて」


次に幽香は私に勧めるように、テーブルの真ん中に置かれた、こんがり焼かれたクッキーを一口食べ、そういった。


形は丸でとてもシンプルなクッキー。

私はそれを一つ掴み、口に運んだ。


「あ……おいしい」


さっきの紅茶とは違い、クッキーは私の口に合い、とても美味しい。

私がそう言うと、幽香は満足そうによかったわ、と言い微笑んだ。


私はあまりの美味しさにもう一つ掴んで食べた。

まあ、美味しいのもあるだろうが、何気に甘い物なんて久しぶりだし、転生してからの今の人生の中では初めて食べるから余計に美味しく感じる。


てか、紅茶もそうだが幽香って何気に女子力が高いな。

私のいる部屋も鉢に植えられた花が幾つか置いてあるし、掃除もしっかりしてあるようで清潔感がある。

どうやら幽香は家庭的な女性らしい。

まあ、先ほどの殺気さえなければ本当に、素直にそう思えるのだが……。


「ふふ……紅茶とは違って美味しそうに食べるのね」


私が二つ目を口に運び、三つ目のクッキーをを口に運ぼうとしている様子を見て、幽香はクスリと笑う。


「あー……、ちゃんと紅茶も美味しかったぞ?」


「いいのよお世辞は、紅茶なんて飲み慣れてからが美味しいのだから」


幽香はそう言いながら紅茶を飲む。


なんかこの幽香を見ていると拍子抜けだ。

数分前の殺気だだ漏れの幽香とは考えられないほど、今の幽香は落ち着いており、優雅に紅茶なんかを飲んでいる。

ひょっとしたら昔の事をもう気にしていないのでは、と思うくらい落ち着いている。

といっても実際には先ほどマジで殺気を発してキレていたので、どう接すればいいのかいまいち距離感がわからないが。


「そう言えば、外にあった花はどう思ったかしら?」


幽香はふと思い出したように部屋から見える、窓の外に咲く黄色い花を見ながらそう言う。


もしかしてあれも幽香が育てたというのだろうか。

一見すればかなり広大な花畑で、東京ドーム何十個分と言われても信じちゃうほどのものだ。

それを一人で育てるとなると相当なものだ。

あの時、妹紅が本当に燃やしていたと思うと正直、ゾッとするね。


「あぁ、本当に凄いな。よく咲いてるし、とても綺麗だ」


「でしょう? あの花は私も結構気に入ってるものなの。西の商人に幾つか貰ったものを育ててみたの」


西と言えば西洋だろうか?

しかし、この時代からそっち方面の国と関わってはいなかった筈だから、おそらく中国とか朝鮮あたりから流れてきたものだろうか。

けど、紅茶とかクッキーとか幽香の住んでる家とかの洋風っぽい物を見たら、本当はこの時代でも西洋の国と関わりがあったのかもしれないな。

まあ、実際には聞かない事には確かでは無いが。


てか、マジであの量の向日葵を一人で育てたのか……。

昔に花が好きとか言ってた気がするが、まさかのココまで筋金入りとは……。


「あそこまでのモノを一人で育てるのは大変だろう?」


「えぇ、結構育てるのに苦労したかしら」


幽香はカラカラと笑いながらそう言った。


私は無邪気に笑う彼女を見て、こうして話してみると実際には良い人でなのでは? と思った。

幽香の浮かべるその笑顔は、先ほどの足が竦むほどにキレていた彼女からでは考えられない表情だ。

いや、実際にはキレていたのだろう。

しかし、よく考えてみればその怒っていた内容は怒っても仕方がないものだった。

彼女の怒りは正当なものなのだ。


後でしっかり謝なければ、私はそう思いながら幽香との会話に花を咲かせた。





❇︎❇︎❇︎





その後も幽香とは色々な話をした。


部屋に置かれている花の話や、互いが旅の最中であったおもしろ話、時には幽香によって再び幽香が置いてかれた話をぶり返されたりもしていたが笑い話になり、盛り上がっていた。

話をするにどうやら幽香はもう私に置いてかれた事を怒ってはいないらしい。

むしろ、幽香はその事には怒ってないと言っていたので少しホッとしている。


しかし、なぜ怒っていたのかを聞こうとしたら、笑って誤魔化された。

なぜだろう、と思いはしたも考えるのは今のこの楽しい時間には無粋だと考え、首を振って忘れた。

それで、その後も幽香との楽しい話し合いは続いて行った。



そして時間が経ち、それは夕暮れ頃に起こったことだった……。




「おい雪っ! どんなけ話し込んでんだよ!!」


私が幽香と楽しくお喋りをしていると、急に妹紅が部屋の扉をバタンと勢いよく開け、入り込んできた。

私と幽香は、そのいきなり入ってきた妹紅に視線を向けた。


「いきなりなんだ妹紅?」


「なんだじゃねぇよ!? 家ん中連れ込まれて何やられてるか心配になって聞き耳立ててたら、キャハハウフフと仲良さ気に話しだすわで、完璧に私の事忘れてただろ!!」


妹紅が地団駄を踏み、怒鳴りながらそう言った。

そういや、妹紅の事を完璧に忘れていた。

幽香との会話が弾みすぎて、外で待たせている事をすっかり忘れていた。


「あー……、ごめん忘れてたわ」


「おまっ……マジで忘れてたのかよ……」


私の言葉に妹紅はため息を吐いた。


「はは、マジでごめん」


「はぁ……まあ、お前がそんなんなのはもう知ってるから別に良いよ……、というより早くここを出発しようぜ」


妹紅はもう一度ため息をついた後、窓から見える外の景色を見ながらそう言う。


外は既に日が沈みかけており、早く寝床や食料を調達せねば。

というか、食料とかはもう用意するにも遅いから今夜は抜きだろう。


「あら、雪。どこか行くの?」


私が今夜の寝床と食料の心配をしていると、幽香が私にそう尋ねてきた。

そう言えば幽香にはまだ話していなかったか。


「あぁ、私と妹紅は幻想郷ってとこに行こうとしてるんだ」


私が妹紅の方に指をさしながら幽香にいった。

しかし、私の言葉を聞き、幽香は一瞬惚けた顔をするが、すぐに大声で笑いだした。


「あはははっ、そ、そう。幻想郷に向かうの?」


「おい、何がおかしい!?」


幽香の大笑いに、妹紅が声をあげて反応した。

幽香はごめんごめんと言いながら笑うのを止め、呼吸を整えた。



「雪、よかったわね。ここが貴女の目指した場所よ」



私はおろか妹紅も幽香のその言葉に首を傾げた。

幽香が何を言っているのかが私には理解できなかったが、幽香の次の言葉で理解する。


「いや、正確には幻想郷の一部かしら」


幻想郷。

彼女は確かにそう言った。

つまり……



「もしかして……ここが幻想郷?」



私の言葉に幽香はニコリと頷いた。

となると……、ここは既に妖怪の山の付近で……斬乂がすぐ近くに……



「と言っても幻想郷は広いわ。ここからしばらく歩けば人里もあるし、大きな湖もあるから1日で歩き回るのはキツイのではないかしら」


「おぉ、人里もあるのか! やったな、雪」


幽香の言葉に妹紅がバシバシと嬉しそうに私の背中を叩く。

どうやら人里があったことに嬉しいようだ。

噂では人間でない者もそこでは受け入れてくれるところらしいし、人里が無いという噂もあったので妹紅にはそれが嬉しいのだろう。

まあ、噂通りの場所ならば、私達の白髪を見てもキミ悪がらないかもしれないので個人的にも楽しみだ。


「よっしゃ、そうと決まれば行くぞ!」


妹紅がそう言いながら私の腕を掴み、この場から連れ出そうとした。

が、私の身体は妹紅に引っ張られ前に進むことは無かった。

私が止まったことに不審に思ったのか、妹紅は私の方に顔を向け首を傾げた。


「おい、行かないのか?」


「いや……幽香が」


首を傾ける妹紅に、私は妹紅が掴む方とは逆の腕を見ながら呟く。

私が目を向けた先には幽香の手があり、その手は私の腕を引き止める様に掴んでいた。

私はなぜ、掴まれているのかという疑問を持つと同時に、お別れと昔の事についての謝罪をする事を忘れていた事に思い出した。


「その幽香……、今日はありがとう。あと、本当に昔の事はごめんね」


「……えぇ、別に良いのよ?」


幽香は私の腕を掴みながら、私の方に視線を向けそう答える。

私はその言葉にホッとした。

そして、掴まれた腕を見ながら放してもらう様に頼み込む。


「それでさ……、私達もう行くから放してくれないかな?」


「ふふ……何を言ってるのかしら雪は?」


私がお願いすると、幽香は不気味な笑い声を出して私の腕を掴む力をさらに強める。


私はその笑い声を聞き、今日の昼間にあった事を思い出す。


黒桜 刃に膝を触られ、頬を舐められた時と同じ様な……ジャンルは違うが、何か身の危険というかなんと言うか……そう、あれだ。

斬乂に初めて会った時に……感じ……た……。


「雪は今日からここで暮らすのよ? 毎日私と寝食を共にして、一緒に花の世話をするの。きっと楽しいわ。それに雪は可愛いもの、毎晩毎晩私が可愛がってあげるわ。わたし、喘いでる雪の姿を想像するとすごいムラムラするわ。いえ、泣き顔で許しをこう雪の姿を想像するともっとね。本当に私は今日、雪の姿を見て嬉しかったのよ? あぁ、あの時の子だって。私ね、昔にあなたを見た時に思ったの。強そうで儚そうな子だって、あの夜に貴女が涙を流した所を見て私きちゃったのよ。一目惚れだったわ。あぁ、私のモノにしたいって思ったわ。もっと雪の泣き顔が見たいって思ったの。なのに雪ったらあの日、私の事を置いてちゃって、どれだけ私が寂しい思いをしたか……。けど、今日また会えて嬉しかったわ。でも、雪ったら私の事忘れちゃってて……私少しカチンときたけどもう良いわ。あとでちゃんんとお仕置きはするけどね。でも、安心して。痛い思いはさせるつもりはないわ。可愛い雪の身体に傷をつけるなんて考えれないもの。まあ、お仕置きだから雪の嫌がる事はするけど、慣れたらきっと心地良いものになるから大丈夫よ。あぁ、雪の泣き顔を想像すると今すぐイっちゃいそう……。ねぇ、雪? 私はあなたの事が好きなの、これからはずっと一緒にいましょ?」


「……っは!?」


幽香の突然の言葉に私は一瞬、フリーズしていた。

私の腕を掴む妹紅の手も力が入っておらず、妹紅自身もポカーンと口を開け惚けている。

私も突然の言葉に惚け、幽香の言葉の意味を考えていた。


しかし、幽香の次の言葉によって私は意識を取り戻した。


「ねぇ、雪? なんで何も言ってくれないのかしら?」


「え……あ、そ、それは告白でおうけー?」


私がそう尋ねると、幽香は恥じらいもなく真面目な顔で首を縦に振った。

私はその清々しささえ感じる答えに顔を一気に真っ赤にした。


茜の告白を一回目とすると人生二回目の告白だ。

というか所々にムラムラとかお仕置きとかのなんかヤバイ単語が聞こえたのだが……、それも私の貞操がヤバイという意で。


「ねぇ、雪。今まで色々な所を放浪していたらしいけど、そろそろ腰を据えない? 私の家に住んでくれるなら衣食住には困らせないわ。雪は私の側に居てくれるだけでいいの」


ねぇ、どう? と幽香は首を傾げ私にそう尋ねてきた。


私はその幽香の言葉を聞き、なんて困る質問だと思えた。

つまり、幽香は私に一緒に居ようと言っているのだ。

しかし、先ほどの告白っぽいものの内容を踏まえ考えると、絶対にその誘いは断るべきだ。

昼間にあった黒桜 刃に比べればまだマシだが、幽香も相当ヤバそうな人だ、主に私の貞操的に。

そんな人物の家に住む様になれば毎日ナニされるかわからない。


答えはもちろん決まっている。


「あ、そ、そのー、私は妹紅と旅がしたいんだ。だから……ごめん」


私は幽香に腕を掴まれたまま、恋人の様に妹紅の腕に抱きつき、顔を少し赤らめ幽香の方を見る。

そして私は妹紅のモノだという主張をする様に、妹紅の腕に力強く抱きついた。


おそらく幽香の様な強引に物事を進めるタイプの人間は、最もらしい理由でない限り無理やり実行する。

ならばここは最もらしい理由を作り、既に私には想い人が居るという虚言で、幽香の告白を断るしかない。

名付けて私と妹紅はデキている作戦だ。


「なっ……お前、なに私を巻き込もうとしているんだよ……」


どうやら妹紅は私のしたい事に勘付いたようで、幽香に聞こえない程度に私の耳元でボソボソと話しかけてきた。


「頼む妹紅、今だけで良いから……。あとでおっぱい触らしてあげるから……」


「いや……お前のちっさいの触っても得なんてないから……」


冗談で言った事をそんなマジに言わなくても……。

あとそんな小さくないもん。

揉めるくらいはあるもん。


私が心の中で文句を言いながら唇を尖らせていると、妹紅がやれやれと小さくため息をつく。

そして、妹紅は諦めた様に私と肩を組み、自分のモノだと主張する様にふんぞり返った。


「悪いな幽香とやら。雪に先に唾をつけたのは私なんだ、諦めな」


妹紅はそう言いながら、私の首の後ろから私の胸に手を回し、無いに等しい私の胸をモニュモニュと揉み始めた。

私はマジで揉む奴があるか後で覚えてろよ、と心の中で呟きながら、気持ち良くはないが頬を紅潮させ小さく、んっと喘いで口を開いた。


「ごめん、幽香……。私はもう妹紅がいないとダメなんだ……だから……」


実際には思っていなく、もちろん虚言だ。

むしろ私が今、キモい事を言っていることに自覚して若干の吐き気があるくらいだ。

確実にこれは黒歴史決定ものだ。

しかし、後腐れなく幽香の好意を卑下するにはこれしか無い。

この手の人間は下手に断れば、多少強引にでも我を通す。

下手すれば既成事実とか言って襲われかねない。

だから、妹紅相手にこんな事を言うのは実に遺憾で嫌なのだが、私の貞操の為には仕方が無いのだ……。


私は内心に後悔を持ちながら恥ずかしげに呟き、幽香の方をチラリと見る。

すると幽香は顔色を変えずに口を開いた。


「そう。なら、私がその野蛮そうな女の代わりになるわ」


幽香は嫉妬のしの字も、落胆のらの字も無くサラリとそう答えた。

それが何か問題でも? って感じで幽香は私に向かって言った。

私はおろか妹紅までも、は?と首をかしげる。


「雪が別の……それもそんなお猿みたいな女の毒牙にかけられていたのはショックだけど、私好みに調きょ……監禁するから問題無いわ」


「おい誰が猿だっ!?」


いや、妹紅よ……ツッコむところはそこじゃ無いはずだ。

なんか調教とか監禁って言葉が聞こえて、更に私の貞操に危機を覚えたのだが……。


「ふふふ……だから、そんなお猿は放っておいてこっちにいらっしゃい、雪。私以外に靡く悪い子にはお仕置きしてあげるわ……」


幽香がそう不気味な声をあげ、どこから取り出したのかわからない縄を取り出し、ビシリと引っ張って私をその縄で縛ろうと近づいてきた。


「も、妹紅……にげ……」


何やら不穏な空気を感じ、妹紅と一緒にこの場を逃げようと、妹紅の腕を掴もうとするが私の手は空をきった。

というか既に妹紅は私の隣にはいない。

てか、既に私の視界からいなくなっていた……。

一体どこに……。



「あばよ雪ーっ、お前の事は忘れない!!」



私が居なくなった妹紅を探す為、首を動かして探していると妹紅のその様な声が外から聞こえてきた。


どうやら妹紅はいつの間にか外に居たらしい。

というか外にいつの間にか逃げていたらしい。

…………………………………………まじか。



「もこーっ!!!! 貴様ぁぁぁぁっ!!!!!」



「悪いなー、怨むんならお前の女運でも恨め!」



妹紅はそう言い残し、遥か遠くへ走り去ったのか、完全に妹紅の気配が消えた。


確かに昼間の黒桜 刃に続いて、幽香にまで迫られ女運は悪いかもしれないが、そんな事で私を見捨てるなよ。

私達、親友だろ?

心の友だろ?

お前のものは私のもので、私のものも私のものだろ?

ん、なんか少し違う。


「ふふ……、使えない護衛ね。でも、安心して雪。これからは私が貴女を守ってあげるから、ね?」


「……っひ!?」


私が妹紅にキレている間に、幽香は私の目の前に近づいており、私の頬を包む様に手で触れ撫でてきた。

その距離は今からキスでもされるくらいに顔が近かった。

というかどんどん唇が近づいてきて……。



「……ひっ、ひぃぃっ!!」



幽香の唇が私の唇に届く前に、私は幽香の肩を押し返して幽香を遠ざける。

そして私は能力で自分の影に入り込み、逃げる様にその場から姿を消したーー




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