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東方屍姫伝  作者: 芥
二章 その骸は魂を狩り続ける
12/72

怨念

side雪

私は目を開けた。

そこは知らない天井で、何故ここにいるのかを目起きの冴えない頭で考える。


身体を起こして気付くが、自分は布団の上で寝かされており掛け布団はかけられているが、その下は全裸だった。

そう……ぜん……ら?


「……っ!!」


私は慌てて掛けられていた毛布をかぶり、自分のあられもない身体を隠す。

いな、右腕の骨の手を隠すための包帯と、首に鬼神につけられた鉄で出来た首輪をかけられていて何も身につけていないわけではない。

しかし、裸に包帯と首輪というものは何か逆に恥ずかしい……。


私はなぜこんなところに寝ていて、自分が全裸なのかを毛布に包まりながら思い出す。


確か昨日、鬼神に負けてペットになれと言われ、ここにいるのは思い出せる。

そして私の歓迎の宴会だ、と言われ鬼神の屋敷にある大部屋に連れられたのも思い出せる。

……その後は何があった?

どうにもそこからが思い出せない……。

なぜか頭が少し痛いし……。

自分の身体に巻いている毛布に頭をうずめながら昨日の事を思い出そうとするが、何一つ思い出せない。



「あ、雪ニャン起きました?」



私が必死になって昨日の事を思い出そうとしていると、部屋に大きな角を二本生やした女が入ってきた。

私はそいつの姿を見て思い出す。


そうだ、ここは鬼神の寝室だったはず。

私が昨日、名前や能力を聴き出されるだけに散々いびられて好きな様にされた部屋だ。

よし、何故ここにいるのかは思い出せた。

次に何故、自分が全裸なのか……



「死ねえぇぇぇっ! このクソ鬼がぁーっ!!」



私が何故、自分が全裸なのかを思い出そうとするとすぐに一つの考えが思いつき、思わず鬼神の顔めがけ跳び蹴りをする。

しかし、鬼神に呆気なく空中で足を掴まれ、私は鬼神の手により全裸で逆さ吊り状態になる。


「雪ニャンいきなり飛びついてきてどうしたんですか? もしかして私が居なくて寂しく思ってました?」


「ふ、ふざけるなっ!? お前私に何したんだっ!」


私は逆さ吊りに成った状態で鬼神に怒鳴る。

なにを、と鬼神は言われると首をかしげ、あぁと思いついた様に声を出す。


「もしかして首の鎖をつけられたのが気に食わないんですかー?」


「くさり……あっ」


私は自分の首を見て初めて気づく。

それは私の首につけられた首輪の後方にジャラジャラと繋がれ、鎖の反対側は部屋の壁に釘か何かで打ちつけられ外れない様になっている。

完璧に犬を鎖で繋ぎ逃げないようにするあれだ。

というか首輪に鎖で全裸とは中々マニアックな格好だ。



「は、外せっ! というか下ろせっ!? 」



私はそう言いながら逆さ吊りの状態で鬼神の顔めがけ足を振るうが、残念ながら短くて届かない。


「えー、だって外したら雪ニャン逃げちゃうじゃないですかー」


「当たり前だっ! こんなところにいたら……」


私はそう言いながら自分の今の格好に気づく。

そして慌てて自分の胸と股を両手で隠すが、なぜか涙が目から溢れ出てきた。


「な、何故泣くんですか!?」


「だ……だってこんな惨めな格好にさせられて……その上、無理やりされて……いつの間にか汚されて……茜としかするつもりはなかったのにぃ……」


私の目からどんどん涙が流れる。

そして私は心の中で謝る。

ごめん、茜。

私はどうやら貶されてしまった様だ。


「き……昨日はなにも変なことしてないから安心してください!」


鬼神は逆さ吊りにしていた私の身体を持ち上げ、優しく床に座らせ必死に弁解をする。


「ほんとか……?」


「ほんとですよ!? 昨日は雪ニャンが酔い潰れて起きそうになかったので、私の部屋に連れてきて着物がシワにならないように脱がしただけですよ!」


「うっ……私は寝てるところを……」


どうやら酔い潰れたところを持ち帰られ、寝てるところを良いようにされたらしい。

女同士だから子供ができるってことはないが、いつの間にか私は良いようにされ汚されて……。

う……吐き気が……。


「だから、何にもしてませんよ!? ちょーと胸を触っただけで本番まで入ってません!雪ニャンの身体は清いままです」


鬼神は必死に声をあげ、私より大きな胸を張ってそう言う。


「……本当に少し触っただけで他はなにもしてないんだな」


「はいっ、鬼は嘘つきません!」


私はそう言われると自分の目から流れる涙を拭き、私が寝ていたところにある毛布を掴んで身体に巻く。


確かに布団がいろんなモノで汚れているとか、自分の身体に違和感はないので一様は信じる。

少し倦怠感があるのも二日酔いということにしておいてやろう。


しかし、最近の私は本当に涙脆い。

いや、妖怪になった当初からよく涙を流す。

前世や人間だった頃はそんなに泣かなかったのに……。



「それより今日は雪ニャンに合わせたい人がいるんですよー」



私がまだ湿っている自分の目を擦っていると、鬼神は部屋の外の方にむけて手招きをする。


鬼神が手招きをすると部屋の外から紫っぽい髪の色をし、胸元に目ん玉っぽいネックレス? をかけている小さな少女が入ってきた。

入ってきた少女は半眼なのか目を薄めたまま私の方を見る。


そして少女と私の視線があうと、少女はすぐに私の視線から目を逸らした。

恥ずかしがり屋さんなのだろうか。


「……古明地……さとりです。白鷺……雪さんですよね?」


少女は私から目を逸らしながらそう言う。

どうやら本当に恥ずかしがり屋さんのようだ。

そしてどうやら私の名前は事前に鬼神に聞いていたようだ。

どうして鬼神はこんな少女を私に会わせたいと?


「そうだが?」


「とりあえず……服を着たらどうですか?」


「あっ……」


古明地に指摘されて気づく。

そういえば未だに私は全裸で、毛布だけしか羽織っていない状態だ。


なるほど、古明地は私のこの状態を見て目を逸らしたのか。

意外に紳士な性格だ。

別に女の子同士だから見ても良いのだが。


「えー、着せちゃうんですか? 雪ニャンには今日はそのまま過ごしてもらうつもりだったんですがー?」


こいつはマジで自重しろ……。


「いいからとっとと着る物を寄越せ」


「もう着ちゃうんですかー。もっと恥じらう雪ニャンを見たかったんですがー」


鬼神はそう言いながら、部屋の隅に置いてある箪笥の前に行き、私が以前来ていたのと同じような白装束を取り出して私に投げ捨てる。

そして私は言う。



「……おい、なぜこれを着せて寝かせなかった」


「だってー、雪ニャンの綺麗な肌に直に抱きつきながら寝たくてー」



鬼神がブーブー言いながら文句を垂れるが、私はそれを無視して貰った白装束を着る。

そして帯をしっかりと締めて、立ち上がる。


「け……お前が私から目を離せばどうとにもなって逃げられるのにな」


私はそう言いながら首に繋がれる鎖を手刀で断ち切る。


人間だった頃を考えれば、鉄の鎖を手刀で切るなんて行動は驚きものだろうが、妖怪となった今ではただの鎖ならなんとでもなる。

首輪の方も本当は切り取りたいが、サイズが丁度で首輪も切ろうとしたら間違えて自分の首ごとやってしまいそうだ。

まあ再生するから別にいいが、そんなことをしようとしても鬼神に無理やり止められるに決まっている。

とりあえず首輪は鬼神から逃げ切ったあとにどうにかするとしよう。


「で、なんでその子を私に会わせたかったんだ?」


私がそう言いながら古明地に視線を向けると、古明地はまたしても私から視線をそらす。

どうやら私の裸姿を見て照れていたのではなく、ただの人見知りちゃんだったようだ。

もしかして私の目つきの悪さが気に入らないのか?


「んー、雪ニャンにお友達でもつくってあげようと連れてきました。ほら、雪ニャンってお友達いなさそうですし」


「誰が友達いないだ……。そんなのはいらん」


「もー、またまたそう言ってー」


本当はほしいくせにー、と言いながら鬼神は私の脇をつついてくる。

うぜぇ……。


「本当にいらん。てか、早く私を解放しろ」


「解放はできませんね。そんなことしたら黒羽ちゃんに怒られちゃいます。それに私は雪ニャンの飼い主ですから」


どうやらマジでこの女は私を飼うつもりらしい。

まあ、隙を見つけて絶対に逃げるが。


「斬乂さん……私はこの人と友達は……」


古明地が鬼神の着物の袖を引っ張りながらそう言う。

大人しそうな顔をして、意外に言うんだね……。


「もー、さとりんも好き嫌いはいけません」


おい、私は野菜か……。



「いえ本当に……本当にこの人は無理です」



古明地はそう言いながら私から目を背け、気持ち悪そうに口に手を添える。

その姿を見て私はイラっとした。


「……はっ、なんだ? 生理的に受け付けないか。まあ、私はそこの鬼神の愛玩動物だもんな」


「ち、違います……。そう言うつもりで言ったのでは……」


「じゃあ、目ぇみて言えって」


「そ、それは……」


古明地はそろっと視線を私に向けようとするが、すぐに顔が青ざめ視線をそらす。

どうやら本格的に無理な様子だ。


「ざ、斬乂さん……少しいいですか……」


古明地はそう言いながら部屋を出て行こうとする。


「え、どうしたんですかさとりん? というか顔色……」


「……大丈夫です。それよりちょっと廊下で」


「え、えぇ……」


斬乂はそう言いながら古明地に手を引かれ、部屋の外に出ようとする。

そして私は一人部屋の外に残される。



「…………あれ、チャンスじゃね?」



私は一人になったことで思わず呟く。


斬乂の目はなく、今なら逃げ放題だ。

私には数年前にとある妖怪から奪い取った【影を操る程度の能力】がある。

それを使って影による転移術でここを逃げ出せば私は晴れて自由の身だ。

私は逃げられ、あのレズ鬼の性奴隷にならなくて済む、つまり万々歳だ。


「ふふふ……抜かったな鬼め」


私はそう言いながら床に手を置き、影の能力を発動させようとする。

しかし、幾ら力を込めても妖力を込めても自分の影には入り込めない。

私は能力が発動できないことに首を傾げて疑問に思う。


「あ、雪ニャン。言い忘れてましたが私の能力は【禁止する程度の能力】ですので逃げようとしても、今は私が雪ニャンが逃げることを"禁止"しているので逃げれませんよー」


私が能力の発動ができないことに疑問を感じていると、思い出したかの様に鬼神が部屋の戸を開け、顔だけを覗かせてそう言ってきた。


「ちなみに能力で"禁止"していることをしようと考えればピリって感じて、すぐに私にわかりますからねー」


鬼神が自分の頭を指で押さえながら言う。

つまり、私が能力を使おうが足を使って逃げようが、すぐにその行動がわかるというわけか。


「あ、それと今度からは逃げようと少しでも考えれば夜のお楽しみが一つ増える、と考えてくださいねー」


鬼神は一言そう言い残すと部屋の戸をピシャリと閉め、再び部屋に静寂が戻った。


なるほど、今までも何度か逃げようとしたがその度にすぐに捕まっていたのは鬼神の反射神経がすごいのでなく、鬼神の能力のせいだったからか。

どうやら私は鬼神が居ようが居まいが逃げられない様だ。

…………。



「…………ガッデムっ!!」



私は虚しくそう叫び膝をついた……。





❇︎❇︎❇︎


side斬乂


私は雪ニャンに向かって逃亡防止のため、一つ警告をした。

そして私は部屋の戸を締め、未だに顔を真っ青にするさとりんに視線を向ける。


「さとりん、あの言い方は私も流石にどうかと……ってさとりん!?」


私がさとりんの方に視線を向けると、さとりんは膝をついて、今にも吐きそうな顔をして口元を押さえていた。


「どうしたんですかさとりんっ!? 顔色が……」


「だ、大丈夫です……、少し頭痛がしただけなので」


さとりんは壁に手をつきながら、フラフラと立ち上がる。

しかし今も口元を手で押さえ、明らかに異常な様子であった。



「ざ、斬乂さん……なんですかあの妖怪は……」



ぜぇぜぇ、と言いながら私にそう聞く。

私はその様子を見て、何か尋常ではないものを見たとしか考えられなかった。


今日は私の友人の一人であり、同じく妖怪の山にひっそりと暮らしている古明地 さとりを連れ、私は雪ニャンに合わせてあげようとしていた。

言ったように友達として、という意味もあるが本心は雪ニャンの心の中が知りたかった。


さとりんの能力である【心を読む程度の能力】で、私は雪ニャンの心が知りたかったのだ。

雪ニャンが私にペットと呼ばれどう思っているのか、本当はどうしたいのか、本心では本当に茜ちゃんを生き返らせられると信じているのか……。

私はそれが知りたくてズルいかもしれないが、友人のさとりんの力に頼った。

さとりんも人の心を読むとは良しとせず、最初は断られたが私が必死? に頼んだからか渋々と受けてくれた。

そしてついでに一人でいることが多いさとりんと、人を拒絶する雪ニャンには友達になって欲しかった。

まあこれは本当についでで、友達になろうがならまいがどちらでも良かったし、強要する気もなかった。


しかし、どうしてこうなった。

さとりんは雪ニャンを見た途端に顔を背け、顔を青くし、吐き気を訴える。

これでは雪ニャンの心を読むどころではない。


「な、なにってなんですか?」


「私……あんなに悍ましいと思う心を、見たことがありません」


何気に酷いことを言うさとりん。

しかし、さとりんの顔を見ても嘘や冗談を言っているわけではなさそうだ。


「……いったい何を見たんですか?」


「……怨念……です。それも一人や二人分なんてものではなく、幾千……いえ幾万の死んだものの怨霊が彼女そのものと言ってもおかしくありません」


さとりんはそう言いながら雪ニャンの今いる部屋を見つめる。

怨念やら怨霊、私は彼女が何を言っているのかが理解できなかった。



「彼女は……白鷺 雪は、ただの妖怪ではありません」



さとりんは語る。

曰く、彼女の心には様々な無念を持つ怨霊が宿り、彼女の心を直視して心を読むことができない。

彼女は幾百幾千の無念を持つ怨霊が集まって存在している。

心を読もうとしてもそうした怨霊の声しか聞こえてこず、彼女の声を聞くどころではない、と。


私にはさとりんが難しい事を言っていて、全く理解できなかった。

しかしわかったといえば、さとりんが雪ニャンの心を読むことができないということだけだ。


「妖怪は基本、人の心に芽生える恐怖心などの負の感情から生まれます……。しかし、彼女は違います……。彼女は……そんな生易しいものなんかじゃありません」


「えーと、私には今のさとりんの話がわからなかったんですが?」


私がそう言うと、さとりんが馬鹿を見るような目で私を見てきた。

そして咳払いを一つして語りだす。


「……彼女はただの器です。その器の中に話で聞いた彼女の能力である【魂を狩り盗る程度の能力】の所為なのか、尋常ではない量の魂……つまり人の霊を無意識の内に己の中に吸収しているのです。それも地縛霊から恨み辛みのある怨霊まで様々な負の霊をおそらく彼女は能力で吸収しているのです」


「ほぇー、無口なさとりんがよくそんな長文を話せますね」


私がそう茶化すとさとりんが睨んできた。

流石に悪いと思ったので私は一言謝る。


「こほんっ……で、問題なのはここからです。彼女の能力には私の心を読む能力と同じ様にオンオフの切り替えはできないと思われます」


なぜなら無意識の内に霊を身体の中に宿しているのだから、とさとりんは言う。


「それで長い年月を掛け彼女の心の中に多くの怨霊が溜まっていきます。そして吸収され続けるだけされ、怨霊らは彼女に囚われ成仏どころか浄化もしない……私は彼女の心を見て思いました……なぜ耐えられると」



私はさとりんの最後の言葉に疑問を感じる。

どういうことか、と。



「彼女は今でもそうした怨霊の声を聞いてるはずです……」



さとりんが私の心を読んだのか、私の疑問に答えるかの様に言う。

いや、実際に読まれたのだろう。


「私は彼女の心を見た途端に地獄の光景を見ている様に思えました……。様々な怨霊が恨み辛みを唱えていました。私は少しの間だけしか見てないですが相当な苦痛がありました。怨霊らからは常に死への怨み、生への執着が感じられました」


さとりんは思い出したかの様に口元に手をやり、気持ち悪そうにしている。

私はそうしたさとりんを心配するのと同時に納得する。

だから、さとりんは雪ニャンと友達になれないと言ったのか。

心を常に読める彼女にとっては、雪ニャンの心は地獄にしか見えないのだから。


「彼女は常にあの悍ましい声を聞き続けているはずです……、なのに何故彼女はあんな平気そうな顔をしているのです……」


さとりんが誰に尋ねるわけもなくそう言う。


そして私は今までさとりんが説明した事で一つの答えに思いつく。



「……友を生き返らせるためですか」



私が思いついた事を言う前に、さとりんはそう言う。

どうやらまた心を読まれた様だ。

さとりんと友達になったのは最近だからか、私にはこの感覚はまだ慣れない。


「……ふむふむ、彼女は友を生き返らせるために妖怪を殺し続け……。なるほど、そう言うことですか」


さとりんは私の心を読んだからなのか、自分一人で納得し、ぶつぶつと呟いている。


「あのー、さとりん。勝手に心を読んで自己完結しないでください」


「……すみません、クセで」


さとりんはコテンと頭を下げ少しションボリとしている。

その様子は少し可愛いと私は思えてしまった。

しかし、私の守備範囲にはさとりんの見た目は幼すぎて入らない。

私の守備範囲は熟すか熟さないか位の少女だ。

ちょうど雪ニャンあたりがジャストミートだ。

まあ可愛い女の子なら私は誰でもウェルカムだが……。


「……斬乂さんの今思っていることにはツッコミませんよ」


「あ、読んでました?」


私が聞くとさとりんは首を縦に降る。

これは失態。


さとりんは私のその様子を見て、ため息をつき私に背を向け歩き出す。


「あれ? 帰るんですかー?」


「ええ。とりあえず私は彼女とは仲良くなれそうにありませんし、心も読めません」


「まあ、そう言うの抜きにして私は仲良くして欲しかったのですが……」


無理ですね、とさとりんは言い残し帰ろうとする。

しかし、何かを思い出した様に私の方に振り返る。



「その……友人として忠告します。彼女は危険です、殺せないのならせめてこの山から追い出すのが賢明です。では……」



さとりんは友人、という言葉を恥ずかしそうに言い、忠告とやらを言い残すと再び前を向き、帰ってしまった。

今のさとりんを見ると出会った当時の友達とか要らないと言っていた頃のさとりんを思い出し、ずいぶん彼女も変わったものだと思う。

しかも私の身を案じる様に心配までしてくれている。

本当に私はいい友人を持ったものだ。

しかし、さとりん……。



「ごめんなさいね……」



私にはその忠告を素直に受け取ることはできない。

だって私は"彼女"を放っておく事などできないのだから。


私はそう思い覚悟を決めて、未だに項垂れている雪ニャンのいる部屋へと入っていく。




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