少年の正体
館に戻ってきた私は、馬鹿伯爵にあの妙な少年についてわかったこと聞きに
行った。
「ば~か伯爵~き~たよ~。」
「おぉ!ハヤセじゃないか!どうしたんだ、私に会いに来るなんて珍しいじ
ゃないか。そうか、わかったぞ。ついに私と結婚することを決めたのだな。
式はいつ執り行おうか?」
「そんな話をしに来たわけではない、あの少年について聞きたいんだけど。」
「少年?あぁ、そうか、騎士たちを翻弄した少年のことか。だが、あの少年
はかなりおかしいんだ。」
「おかしいって、少年は今何をしているの?」
「実は、意味が分からないことをしゃべっているんだ。」
「例えば?」
「ここがゲームの世界だとか何とか言ったりしているんだ。」
私はその言葉で確信した。
「その子と合わせてくれない?」
「別にかまわないが、大丈夫か?」
「大丈夫だって、それより、どこにいるの?」
「今は、地下室にいるはずだ。」
「分かった。」
私は急いで地下室に向かった。
と~ちゃく~
「よっ、衛兵さん。」
「これはこれは、ハヤセ殿ではありませんか。いったいどうしたんですか?」
「実は少年に会いに来たんだよ。」
「そうですか。しかし、伯爵様から誰も通すなと言われているので…」
「許可なら取った。ということで入らせてもらうよ。」
私は、衛兵から、鍵を奪い地下室に入っていった。地下室の中は暗く、少年
の声だけが響いていた。
「何であんなことをしちゃつたんだろう。はぁ、ゲームの中だからいいやと
思ってやったんだけど、これはゲームじゃないんだね。はぁ………」
「そこの意気消沈している君!すこ~し、お話があるんだけどいいかな?」
「あなたは?」
「私の名前は隼瀬、」
私は少年の耳元に近づき、小声で、
「君と同じ転生者だ。」
少年は驚いたように、
「ほ、本当ですか!?」
「本当だよ。その前に君に質問があるんだけどいいかな?」
「な、なんですか?」
「君はいったいどうやってここに来たのかな?」
「ここっていうと、この世界にですか?」
「その通り。」
「この世界に来たのはゲームを起動させたら、森の中で倒れていました。」
「なるほど、私と同じというわけだね。………ねぇ、君、私と一緒に旅をし
ないかい?」
「え?」
「ちょうど、話し相手がほしかったところなんだよね。だからさ、ね、一緒
に来ないかい?」
「い、いいんですか!?」
「いいよ。というわけで、君は私の仲間だ。ほら、早く立って、ここから出
るよ。」
私は少年の手を取り、部屋から出て行った。




