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ブレイブ・ギャンガー ―星屑の盗賊団と機械の巨兵―  作者: 藤白あさひ
第2章 さらばアルデバラン
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エピローグ

アルデバラン 師団本部 団長執務室


「そうですか……皆さんはお帰りになられたんですね?」

「はい。各師団の出立は確認済みです。あと、スピカのローサ団長から、一言お託を賜っています」

「何て?」

「『自分を信じろ』――と」


 じんわりと広がる涙腺の痛みに、マノロはグッとこらえた。


「……あの方らしいですね。ありがとう、今日はもう大丈夫です。休んでください」

「ありがたきお言葉……では、これで」


 騎士は粛々とした様子で、執務室を後にした。


 一人になった部屋で、マノロは誰の目にも隠してきた疲労の面持ちで、椅子にもたれかかった。


 明日は何をするのか、言われるのか――副団長としてのキャリアも長い訳ではなかっただけに、人を導く辛さに心を病みそうであった。


 支えがいてくれればどんなに楽か――


「ケント……」


 ――どうして、来てくれなかったの。


 彼女はふと、右手の甲に視線を落とした。


 今さら悔やんだところで仕方ないとわかっていても、やるせないものである。自分の命令のせいで、彼は今も虫の息の状態で、逃げ回っているのではないか。


 そう思うと、胸が苦しい。


 罪悪感が、自分を殺そうとする。


 ――だから、お前はバカだ。


「――!?」


 ――死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね――


「やめて! いやっ……ああっ……!?」


 眩暈と幻聴に、マノロは真っ青な顔で椅子から転がり落ちた。必死に右手で杖を取ろうとするが、真っ暗な視界に光り輝く七芒星――盲目の自分に見えないはずの光に彼女は見る見る生気をなくす。


 ――ダメだ、ダメだ、ダメだッ!!


 激しい頭痛と動悸苛まれながら、彼女はその忌まわしき光を隠すように、自分の右手を抱え込んだ。抱え込んで、そう言い聞かせた。


「ダメよ……いやなの……私は……天装は……天装だけは……!」


 その後も、悪魔の声はしばらくの間、脳内で彼女に罵声を浴びせていた。これが、自分の声であるとわかっていても、精神的に耐えきれるものではない。


 状態が落ち着くと、マノロはケントの事を考えないようにして執務に没頭した。





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