ニ〇アクリーム①
静まりかえる室内。そこには10人の男女の姿があった。
家主の妻と二人の息子、メイドと家主の弟とその妻、刑事らしき男2人、そして、探偵風の男とその助手らしき少年。
「皆さんに集まってもらったのには訳があるんです。瀬尾アイジさんが階段から転落して亡くなった今回の事件…これは事故に見せかけた殺人です!そして、犯人はこの中にいる!」
皆に動揺と緊張が走る。
「家主のアイジさんを殺した犯人は…奥さん!あなたですね!」
探偵風の男が言う。妻は驚愕を隠すかのように鼻先で笑った。
「な、なぜ私が夫を!大体、今警察の方が夫は事故死だと言ったばかりじゃないですか!」
「いいえ、これは事故死などではありません。れっきとした計画犯罪です。そうですよね?」
「…そこまで言うのなら、証拠を見せてもらおうじゃありませんか!私が犯人だという証拠があるんですか?!それに動機も!」
鼻息荒い妻に、探偵風の男は微笑をも浮かべて続ける。
「残念ながら、証拠も動機もあります。奥さん!あなたの手です!幾らメイドさんがいるからと言って、その手のすべすべさ、明らかにおかしい!あなたはニ〇アクリームを使っていますね!?奥さん、あなたはそれを階段を昇りきった所に塗りたくっておいたのです!!旦那さんがいつも一段飛ばしなダッシュで昇ることを知っていたから!それに、動機はこうです。いつも酒癖が悪くて泣き上戸でいびきもゲップも態度も大きい旦那さんに、以前から殺意を持っていたのですね?申し訳ありませんが、あなたのブログを発見して、読ませて頂きました」
妻ががっくりと項垂れる。
「そうです、私が夫…瀬尾アイジを殺しました」
ざわ、と驚きと戸惑いの室内。
「全てあなたのおっしゃる通りです。私はずっと夫の泣き上戸が、いびきが、ゲップが…夫が憎かったんです」
「悲しい事件だったな」
「そうですね」
~青柳私立探偵助手、草加祐樹の手記より~