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お正月だい好き

作者: 柊らし
掲載日:2026/04/13

お正月へのラブレター。

まじでだい好きはやく来て。

お正月、好き。

お正月、だい好き。


お正月、冬の朝に踏む霜柱より好き。


お正月、森の中を歩いているとき茂みの奥からカサと音がして気がつく生き物の気配と同じかそれ以上に好き。


お正月、夜中の路線バスの、乗客が自分しかいない車内で赤く輝く「とまります」の文字たちよりも好き。


お正月、目覚めた瞬間なにもかも忘れてしまって内容はぜんぜん思い出せないけど、いい夢だったことだけは確かな夢よりも好き。


たとえお正月に嫌われても、お正月のことが好き。


年賀状や新年の挨拶や初詣や初売りやおせちやお雑煮や凧揚げや鏡餅や新春特別番組はそんなに好きじゃないけど、お正月のことが好き。


お正月、知らない町を歩いているとき不意に出会ったいい感じの路地よりも好き。その道に小さな川が流れていて、きらきら光る水面に水鳥が泳いでいても、お正月のほうがたぶん好き。


お正月が近づくと、本当はぜんぶ続いているのに、いったんなにかが終わったような気分になるところが好き。


お正月を迎えると、ぜんぜんなにも始まってなくても、なにかが始まったような気分になるところが好き。


でも誤解しないでほしい。たとえお正月が1月1日の座を追われ、6月28日とかになっても、きっとお正月のことが好き。


お正月という字の並びも好き。「お」の次に「正」が来るのはアクロバティックだし、その次に「月」があるのはミステリアスな余韻を感じられていい。


「お正月が来る」って言うけど、本当はお正月はいつも同じ場所にいて、人間のほうが勝手に離れたりまた戻ってきたりしてるんだって知っている。そんな人の身勝手を黙って受け入れてくれるお正月のことが好き。


飼い猫から抜けた髭がカーペットの上とかにピン!と突き刺さっているのを見つけるのは、お正月と同じくらいかそれ以上に好きかもしれない。でも、それがお正月の出来事だったらさらに最高なので、やっぱりお正月のことが好き。


お正月のことが好き。お正月にお年玉をあげ、お正月をこたつに入れて、お正月にお酒をおごって眠たくなったら好きなだけ寝かせてあげたい。


お正月のことが好き。わたしが死んだ後も、ずっとお正月が続いてくれたら嬉しい。


お正月のことが好き。人類が滅んだ後も、お正月はずっとお正月のままでいてほしい。


ときどき思う。お正月なんて本当はどこにも存在しなくて、それを欲する人びとが勝手に空想してありがたがってるだけの幻なんじゃないかって。それでも、お正月のことが好き。


だめだ。どんなに言葉を尽くしても、お正月への気持ちをかたち取ることはできそうにない。むしろ言葉を尽くすほど、本質はぼやけ霧散してしまう。こんなにも、お正月のことが好きなのに。


あなたはお正月のことが好き? 返事はいらない。わたしは、お正月のことが好き。


お正月のことが好き。もしもわたしがこの世界の主だったら、1年365日のうち364日をお正月にしたい。そして大晦日にはお正月と一緒に年越しそばを食べ、お正月と一緒にお正月を迎えるのだ。


ああ、やっぱりお正月のことが好き!

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