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王妃様による最高の離婚〜夫と愛人聖女に飼われるくらいなら離婚させていただきます。あ、慰謝料はもらいますけどね~  作者: けい


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北部の王・ベルハイク伯爵④

「伯爵の領地を若干削るようなものですが、しかし元々農地でもない場所でしたから、税収には響かないかと」

「それはそうですが……しかし、それでは両手を広げてごろつきを迎え入れるも同じかと」

「伯爵は、顔なじみの店や女が居る場を、あえて踏み荒らそうと思いますか?」


 伯爵は唸った。確かに、と言っているのは表情から見て分かる。


「戦時になれば、このような甘い策は通じないのかもしれません。しかし、決して民を傷つけないという彼らは、元々高い矜持をもった者たちなのかもしれません。そこを信じても良いような気がしただけです」

「お待ちください! 妃殿下は、見ず知らずの隣国の者を信じるというのですか」


 声を上げたのは、伯爵ではなくレイスだった。

 眉を波打たせ、信じられないものを見るような目でリナフィアを見つめている。


「見ず知らずの我が国の民を害さないでいてくれた彼らですから」


 同じ言葉で返せば、レイスは言葉を詰まらせていた。


「――と、これが昨夜の伯爵の問いに対する回答ですが、何かお役に立てましたでしょうか」


 リナフィアはレイスから伯爵へと向き直り、控えめに肩をすくめてみせる。


「役に立つなどと、滅相もありません。目から鱗で……しかし、妃殿下は一体どこからこのような着想を……」


 前回、領地を追放されて貧民街に身を寄せていた中、悪いことをする者でも、自らのルールを持ち合わせていることを知った。彼らは決してそれを侵さない。それが獣と人間の違いだと彼らはどこか誇らしそうですらあった。


(自国民に裏切られた私が、他国民を信じるだなんて皮肉なものね)


「伯爵が細やかな報告書を送ってくださっていたおかげですわ」


 リナフィアは控えめな笑みで流し、「さあ、視察をしましょう」と丘を下りた。





 それからリナフィアは怪我した兵がいたら神力で治療を施し、またこれから数日の間は特に防備を固めるようにと伝えて回った。


(前回通りなら、おそらく明日)


 その場にいなかったから詳しい状況や時間までは分からないが、伯爵夫人は命を落とす怪我を負うはずだ。


(なんとしてでも、夫人の死は回避しないと。伯爵をこちらに引き入れるためにも)


 もう怪我人はいないかと駐屯地内を適当に歩いていれば、視線を感じた。


「レイス、卿……?」


 遠かったし勘違いかもしれなかったが、リナフィアが目を向けると同時に顔を逸らされたため、やはり見られていたのかもしれない。不意に背に蘇る温かさ。


「……誰かの温もりを背中に感じたのなんて、いつぶりかしら……」


 両親が亡くなってから、リナフィアの背中はいつも寒々しいもので、久しぶりの温もりを『また』と願ってしまったのは、仕方が無かったのかもしれない。



        ◆



「お帰りなさいませ、妃殿下」

「ただいま、ミレーネ」


 駐屯地であれやこれやと騎士の世話を焼いたり、興味にまかせ様々なものを尋ねていれば、屋敷に帰り着いた頃にはすっかり日は傾き始めていた。


「妃殿下、顔色が随分と悪いようですが、具合でも?」

「具合というより気分ね」


 疲れたようにソファに深く腰を下ろしたリナフィアに、ミレーネは、ああと表情を曇らせる。自分の主の機嫌が誰によって損なわれたのか瞬時に察した。


「戻りは別々の馬車を用意してもらうんだったわ」


 レイスや近衛兵の幾分かは、駐屯地の兵に剣の指導を請われ、そのまま数日泊まることになった。そのため、リナフィアの岐路は、ルーベントと一緒の馬車に乗ることになったのだが。


「思い出しただけで震えるほど腹立つ」


       ◆

 

 渋々と馬車に乗ったリナフィアは、目の前の偉そうに足を組んだ男とは関わりたくないと、固く瞼と口を閉じ全身で拒絶を示した。

 だというのに――。


『あれは、俺への当てつけか?』


(は? あれって何かしら……って無視よ無視)


『俺が君ではなくマリアに構うもんだから、嫉妬してほしくて当てつけに男の馬に乗ったのだろう?』


(何を言っているのかしら、この花畑馬鹿男は)


 固く結んだ口が思わず引きつった。

 それをめざとく見つけたルーベントは、『やはりな』とどこか満足げに鼻で笑う。


(っこの勘違い男……!)


『あれは馬に慣れるためですよ、陛下。自分一人で乗れたらと思い練習しようかと』

『ハッ! 王妃が馬に乗れたとしてなんの役に立つ。言い訳がましいな』


 手が出なかったことを誰か褒めてほしい。


『本当は、あの近衛兵とねんごろな仲なのではないか?』

『何を……』


 腰を上げて、迫るようにしてリナフィアの顔の横に手をついたルーベント。


『どこまで許した? ……頬か』


 ルーベントの人差し指がリナフィアの頬を撫で、親指が唇に触れる。


『唇か』


 手はそのままの形で下っていく。


『首筋か、それとも……』

『――痛っ!』


 次の瞬間、胸元で結んでいたタイを手荒く引っ張られた。

 ほどけたタイは床に落ち、閉じていた襟は大きく開いて、リナフィアの白い胸元が露わになる。


()()までもか?』


 首筋からそのまま下りた手が、露わになったリナフィアの膨らみに爪を立てた。目の前でニタリといやらしく片口を上げるルーベント。

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