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王妃様による最高の離婚~あなた方がバカにした私が国を支えていたのですが、お気づきでした?~  作者: けい


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バルコニーでの再会

 正餐会はすっかり宴もたけなわといった様子で、ホールでは諸侯達は酒を片手に談笑に興じていた。おかげで誰も王妃が一人、バルコニーに出たことにすら気付いていなかった。はあ、とリナフィアは真っ暗な空へと息を流す。


「やっと、美味しい空気が吸えたわ」


 ファーストダンスでルーベントがマリアの手を取ってからというもの、皆、リナフィアを腫れ物のように扱った。


「マリアは勝ち誇ったような顔でこっちを見てたけれど、正直このくらい痛くも痒くもないのよね」


 前回のリナフィアだったら、きっと早くホールを去りたいのに、王妃という役目のせいでルーベントを置いて戻ることをよしとせず俯いて耐えていただろう。たとえ、目の前で夫がマリアを妻のように隣に置いて諸侯と談笑しようとも。


「前回の私とはもう違うのよ」


 二人が隣り合う姿を見ても、悲しみも怒りも沸かなかった自分に驚いたくらいだ。バルコニーへ出てきたのは、こちらを気遣う者たちを気遣うのが面倒だったからだ。ルーベントへの愛は、一度目の人生に置いてきた。ここにいるリナフィアという人間は、復讐するために蘇っただけの醜悪な王妃だ。


「それに、これで随分とはっきりと諸侯の動きが見えたわね」


 マリアが正聖女となったことで、貴族達は王妃派と正聖女派に分かれつつあると言ったが、それは表立ってのものではない。裏で密かに、というものだった。しかし今日の一件で、とうとう遠慮はいらないと判じられたらしい。


『すっかり陛下の隣は、マリア様の似合いの席となったものですなあ』


 わざとリナフィアの聞こえる場所で、嘲笑を含ませ言った男は『バルバリード公爵』だ。

 彼こそ正聖女派筆頭の貴族。

 そして、同時に――。


「私が死ぬ瞬間を笑って見ていたのよね……彼」


 金装飾の悪趣味で仰々しい紫のフロックコート姿はよく覚えている。


「きっと私が追い出された後、王妃派が一掃された王宮で権勢を振るっていたんでしょうね」


 他にもチラホラと、()()()で見た貴族の顔があった。


「結局、またこうなるのね……」


 多少前回と変わってきているが、やはり変わらないものもある。


「ルーベントはマリアを愛するし、私は死に近づいていくのね。だったら……なんのために、ミスラ神は私に聖女の力をお与えになったのよ」


 七歳の時、リナフィア・アイハラントは教会より聖女であるとの認定を受けた。





 大陸には大小様々な国があるが、その中でもとりわけ大きく権勢を振るっているのは、ここ南のサウザード王国と、北のノーディレイ王国である。

 しかし、聖女はサウザードでしか生まれない。

 それは何故か。


 聖女の血を引くのが、サウザードの民だからである。

 かつて、大陸には今よりも多くの国々がせめぎ合って存在していた。無秩序が当然と横たわり、領土拡大による争いは、隣人への挨拶よりも頻繁に行われていた、そんな時代。


 癒やしの力を持った最初の聖女が顕現した。

 各国は当然彼女をほしがり、聖女を巡っての争いが勃発する。その中で最後まで争っていたのが、サウザード王国とノーディレイ王国である。二国はこの争いで急速に領土を拡大し、五分の力で戦線を拮抗させていたが、結果、聖女を手に入れたのはサウザード王国であった。


 サウザード王国は、聖女を奉るために最初の聖女の名をとって、ミスラ神教という宗教を立ち上げる。当初は、神の声も全て聖女が受けて伝えていたのだが、聖女の血を引く者が増えるにつれ、中には神の声を聞ける特異者も現れ、教会運営はそのような者たちに一任されて今の形に落ち着いた。以後、聖女の力がよそへと漏れないよう、聖女の力が発露した者は王妃として王家に迎え入れることで、身柄を拘束してきた。


 聖女の力を独り占めするサウザードを、ノーディレイや他の国は良くは思っておらず、過去幾度となく干戈を交えてきた。事実、つい三十年前も二国は争っていたのだから。勝敗が決しなかったため、停戦条約を結び終結となったはずなのだが、未だに国境付近では小競り合いが続いている。




 

「七歳で聖女、八歳でルーベントの許嫁になって……おかげで、それからはずっと誰かのための人生だったわ」


 夜風が頬を撫でていく心地よさを目を閉じて堪能すれば、瞼の裏には走馬灯のようにルーベントとの記憶が流れてくる。

 ルーベントと出会った当初は、仲が悪いということはなかった。どちらかと言えば、手を繋いで散歩したり、一緒に庭でお茶をしたりと仲が良かったと思う。


 記憶の中の彼は笑っていたし、自分を訪ねてくるひとつ年上のお兄さんにリナフィアが恋心を抱くのに、時間は掛からなかった。


「なのに……っ」


『俺は君のことを――』


「――っ!」


 ズキッと頭が痛む。

 彼からのその台詞は、今回は()()言われていない。


「前回の記憶があるのは助かるけれど、嫌なことまで覚えているのは考えものよね」


 手すりに置いたリナフィアの手は、きつく拳を握っていた。


「お風邪を召しますよ」

「――っどなた!?」


 不意に背後から聞こえた男の声に、リナフィアは疾風の如く振り返り、警戒の声を上げた。


「あ……なたは……」


 が、そこにあった顔を見ると、身体からするっと力が抜ける。



ブクマして読み続けていただけると幸いです

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