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愛とは

やっとミチコの拘束具を外して、泣いてボロボロになったミチコを置いてステファンと白人の女は出て行った。

ミチコが辛くて途中で外に逃げ出さないように拘束していたのだろう。

寝る場所はこのベッドしかないけど、もう寝る自信が無い。

ここでさっきまでステファンと女は散々絡み付いて喘いでいたのだ。

もうステファンがミチコに触れなくなって、他の男とばかり…1年が過ぎた。

「私はなんの為にここで生きているの?

私はダマサれているだけなの?」

もう、どこか遠くへ消えてしまいたい!

ステファンは何がしたいのか?

ステファンを慕うミチコになぜこんな仕打ちばかりするのか?


マダム・エラが珍しく部屋に来た。

「やっとあのゲスども帰ってくれたみたいね。

どうする?日本陸軍の将校さん来てるけど?

今日は帰ってもらう?」あの鬼のマダム・エラとは思えない発言に驚く。

「…大丈夫です。日本語使わないとドンドン忘れるから勉強になるし。」涙を拭きながら笑った。

許嫁の話をする将校は、とても優しい顔をする。

それを見てると心が和む。

ミチコの想像して憧れていた愛がそこにはある。

ステファンの愛は…分からない。

愛と言ってるけど、愛だと感じられない。

ミチコの涙を楽しむその表情に一瞥の愛も感じられない…心がどんどん冷えていく。

マダム・エラから話を聞いたのか?

将校は何もせずミチコを抱きしめて、なぜか涙を流していた。

「僕なら耐えられないよ。許嫁が…もし日本に残した彼女が他の男なんて!」

かなりムリな話なんだが。

その将校はミチコと寝るために娼館に来ているんだが…

「フフッ」笑いが込み上げて笑ってしまった。

「アナタは?」ミチコが口づけると将校が目を伏せた。

「ほら…男は生理だから?」とモジモジと遥か遠い日本へ言い訳するように話す。

『どうせ、このベッドにこのまま寝れないし!』

ミチコは将校を押し倒す。

「どうか、私がこのベッドで安らかに寝れるように清めて下さい。」そう頼んだ。


夕暮れになると将校は帰っていった。

「出来れば早くココを離れなさい。もうすぐとんでもない事が起こるから…」そう言い残して去って行った。

ここはフランス租界と中国街の境目。

1年暮らしてミチコにも分かってきた。

来た時のドレスは剥ぎ取られたので、もう1年この建物から外に出た事はない。出れないのだ。服がない。

窓の外には日本陸軍の兵舎建築で仕事をしてきたストリートキッズの声が響く。

今日の賃金を貰ってはしゃいでいるようだ。

窓際に寄るとまたあの少年が立っていた。

他の仲間はもう通り過ぎたのに。

早く手を振らないと。

ミチコが手を振ると少年が袋をこちらに掲げた。

意味が分からなくて首をかしげる。

が、そのまま少年は走り去って行った。

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