表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の隣は、茨道。〜能力無しから、自分の力で望んだ未来を切り拓く〜  作者: とい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

責任を

 ギルド長室。


「周囲の反応と証言から、どちらが悪いかは既に理解している。君たちのことは当然罰しない」


 椅子に座る、ギルド長ファーバ。彼はそう結論付けた。


「ノールさんっ」


 机を挟んで対面に座るアベルは、隣に座るノールを見つめて安堵する。


「君、確か名前はアベルだったね。ここへ呼び出したのは、君についてだ」


「え、あ、はい‥‥‥」


 アベルは声が上擦る。

 冒険者ギルドという、大きな建物を運営する相手に見つめられて。


「あれほど体格差があるにも関わらず、相手を蹴り飛ばしたという君の身体強化術‥‥‥正直言って驚いた。ノール君、この子は何歳だね」


「まだ9歳です。私も初めて会ったときは、本当に驚きました」


 ノールは1人称を私に変え、丁寧に返事をする。ギルド長のファーバへの礼儀だろう。


「9歳、か‥‥‥確かに君や仲間たちが、この子をを冒険者に推す気持ちも分かる」


 ファーバは両腕を組みながら、アベルをじっと見つめていた。


「しかしこの子は、あまりにも幼い。B級冒険者の君と共に任務へ向かうのは、無謀ではないかね」


 ファーバの言い分は最もだった。

 どれだけ力があったとしても、アベルは9歳の子供。背も当然低いし、身体も小さい。


「ギルド長のお気持ちは、もちろん分かります。ですが私たちがアベルを見つけた時、彼は1人で森にいました。それも武器も一切持たず、服もただの布」


 ノールは話を聞きながら、アベルはその時の光景を思い出していた。


(あの日、ノールさんたちと出会えて良かった‥‥‥)


 魔物初討伐の達成感と、ノールたちとの出会い。アベルは穏やかに微笑みながら、ノールを見つめる。


「魔力の身体強化だけで、C級相当のウェアウルフを討伐していたのです」


「ウェアウルフを? この子がたった1人で‥‥‥なんということだ」


「そして、アベル自身もまだ満足していないんです。彼はフィーアに言っていました。『強くなりたいから魔術を教えてください』と」


 ノールの声は真剣そのものだった。その態度と口調から、一切の邪念が感じられない。


「ノールさん‥‥‥」


 アベルは、本当に嬉しかった。自分のために、ここまでしてくれている事に。


「‥‥‥なあ、アベル君。既に9歳の域を超えている君が、まだ強さを求める理由は何だね。並外れた理由じゃないはすだ」


 ファーバが前のめりに座り直して、両手を重ねて握り締める。ギルド長である彼の圧は、ノールですら冷や汗をかくほどだった。


「‥‥‥それは、言えません。言いたくありません」


 その圧は当然アベルも感じていたが、深呼吸をして言葉を返す。

 強くなる事と、王立学院への入学が脳裏をよぎる。



     『セリカと、もう一度会いたい』



 そしてこの誓いを、初めて会った相手に知られたくなかった。


「でも、僕はもっと強くなって、自分でお金を稼げるようになりたい。願いを叶えるためには、止まっていられません」


「それは虫が良すぎではないかね? もし君が力の使い道を誤ったり、暴虐の限りを尽くすようになったりしたら?」


 またしても、ファーバの言い分は最もだった。

 性根が分からない子どもに、力を貸す義理は無いと。


「‥‥‥ギルド長。ここにアベルを連れてきたのは、俺です」


 するとノールが声を出し、2人の話に割り込む。

 ファーバが何も言わず見つめていたため、ノールは心置きなく続きを話す。


「アベルの人柄、境遇、強さ‥‥‥それらを知った上で、俺はここに連れてきた。だから彼の責任は‥‥‥全て俺の責任です」


「ノールさんっ‥‥‥!!」


 アベルは思わず名前を呼ぶが、彼の話は終わらない。


「俺が、責任を持って育てます。もしアベルが道を踏み外したら‥‥‥俺が全て背負います」


 ノールは堂々と宣言した。


「ノールさんっ‥‥‥」


 アベルは嬉しさのあまり、涙が溢れていた。

 自分を信じてくれる事が、ここまで嬉しいとは思ってなかった。


「そうか‥‥‥覚悟は分かった。じゃあ、なぜこの子をここまで信じられる」


「それは‥‥‥昔の自分を思い出したからです。力だけで這いあがろうとした自分を‥‥‥まあ、ここまで極端では無かったですけどね」


 ファーバの質問に対し、ノールは苦笑いを浮かべて声を漏らした。アベルは彼の言葉を強く噛み締め、下を向いた。


「‥‥‥そうか」


 ファーバはどこか嬉しそうに笑うと、机の引き出しから書類を取り出す。


「この子が‥‥‥君のような大人へと、成長してくれることを祈る」


 アベルの前に置かれたそれは‥‥‥冒険者認定試験の要項だった。アベルとノールは、互いの顔を見つめる。


「やったなアベル!!」


「うんっ!!」


 アベルは両手を出して、ノールと叩き合う。

 そんな2人に対し、ファーバが水を差すように咳をした。


「‥‥‥まだ決まったわけじゃないぞ。試験に合格して、ちゃんと周囲に認められるんだ」


「ーーーはいっ!!」


 アベルは、今日一番の笑顔で返事したのだった。




 それから数日後。

 ギルド本部で開催された、冒険者認定試験。


「なにこの成績‥‥‥極端だわ」


 B級冒険者フィーアが、声を漏らしながら試験の結果を眺める。



       受験者アベル‥‥‥合格。

         そして、詳細。



「知識はまあ、詰め込んだだけだから仕方ねえだろ。でも9歳で、この点数は普通取れねえぜ。魔力の身体強化の所なんて、ほぼ満点だしな」


 C級冒険者バンギネスが、両手を組みながら話す。


「色々話したい事はあるだろうけど、最初に言うことがあるだろ。アベル‥‥‥試験合格おめでとう!」


 そしてB級冒険者ノールがニカッと笑い、嬉しそうに言い放った。


「アベル、おめでと!!」


「‥‥‥認めるしかねえな」


 フィーアとバンギネスも、それぞれ別々に言葉を贈る。3人の視線は、認定試験に合格した金髪少年へ集まっている。


「みんな‥‥‥本当に、ありがとう!」


 アベルは涙を流すも、満面の笑みを見せる。

 誰かに褒められた事が久々で、慣れない嬉しさが込み上げる。


「まだF級で駆け出し冒険者だけど、これからもよろしくおねがいしますっ!」


 こうしてアベルは‥‥‥冒険者ギルド『エルトリンデ』史上、最年少冒険者となった。



 ◆◇◆◇



 アストリア城。


「お前と同じ年で、しかも最年少。ふっ、よかったじゃないか似たような奴がいて。なあ?」


 第二王子、ジーク・アストリア。

 彼がわざとらしい声を出す。


「‥‥‥私には関係ない事です。そんな記事、心底どうでもいい」

 

 そして‥‥‥素っ気なく言葉を返して、外へ出ていく少女。


「何が勇者よ‥‥‥」


 彼女は鏡に映った自分を睨んだ後、窓の外を眺めて目を細めた。


「‥‥‥」


 そして懐には‥‥‥青薔薇の栞が入っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
朝凪です!先ほどは感想ありがとうございました!! せ、切ない!!アベルくん頑張って!お姉さんは応援してるぞ! でも、大切な女の子に激重感情を抱いてる男の子って尊いんですよね〜!!
ノールさんいい人だった! いいパーティに巡り会えておめでとう! アベルくん、これからの5年間が勝負ですね。 そして、無感動なセリカちゃん。2人の心はまだつながってるのかしら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ