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勇者の隣は、茨道。〜能力無しから、自分の力で望んだ未来を切り拓く〜  作者: とい


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一筋の光

(無属性魔術ーーー!? 魔術には属性なんてあったんだ!!)


 アベルは目を見開き、耳に入った情報を反芻する。


「知ってた?」


 B級冒険者、魔術師フィーア。

 彼女が優しく微笑みながら、尋ねてくる。


「ーーーし、知らないですっ!」


 アベルは身体を乗り出して、大声で返事した。

 ずっと知りたかった魔術の話に、前のめりになってしまう。


「あのっ、もっと魔術のこと知りたいです!!」


 アベルは、つい大きな声が出てしまう。魔術師のフィーアが、輝いて見える。


「僕はもっと強くなりたいんですっ‥‥‥魔術を教えてください!! お願いします!!」


 そして縋り付くように、彼女へ懇願した。

 この人なら、魔術を教えてくれるかもしれない。


(魔術を教わる事ができれば、もっと強くなれるっ‥‥‥!! 僕が1人で続けるよりも、ずっと!!)


 今の自分が更に強くなるには、この人しかいないと。アベルは彼女から目を離さず、必死に見つめ続ける。


「君が望むなら喜んで教えるわ。君なら、もっと強くなれる」


 すると、魔術師フィーアが優しく微笑む。彼女は、快く受け入れてくれた。


「っ‥‥‥!! 本当にありがとう、フィーアさん!」


 アベルは喜びで立ち上がり、勢いよく頭を下げる。

 フィーアも立ち上がり、笑顔のままアベルの頭を撫でる。


「ノール‥‥‥この子は未完の大器よ。正しい鍛錬を続ければ、とんでもない存在になるわ」


「フィーアに言われなくても分かってるさ。俺も最初からそのつもりだった」


 青年がアベルを見つめ、真剣な表情で口を開く。


「俺はノール。B級冒険者で、この2人と一緒に依頼をこなしている」


 彼は簡潔に自己紹介を済ませ、話を進める。


「アベル君。きみの家族と話がしたいんだけど、案内してくれないかな」


 そんな言葉に、アベルは一瞬息を呑み‥‥‥視線を下げた呟いた。


「‥‥‥家族は、今いません。僕は孤児院に残った最後の1人で、そこの管理者2人と暮らしてます」


「っ‥‥‥ごめん。辛いことを聞いてしまった」


 彼の言葉に、アベルは何も言わず首を振った。ただ事実を話しただけで、辛いことなど何も無いと。


「じゃあ後で、その孤児院に俺たちを案内してほしい。でもとりあえず、君には今聞こうと思う」


 一呼吸置いて、ノールが話す。


「まだ幼い君が、なんで魔物の討伐なんてしてるんだ」


「っ‥‥‥」


 アベルは息を呑む。ノールの話が続く。


「さっきの話を聞く限り、強くなりたいのは分かった。でも、はっきり言って君の行動力は、常軌を逸している」


 その言葉に、アベルは何も言えない。下手をすれば、さっきの狼に殺されていた。


「そこまで強さを求める、理由はなんだい?」


 ルークの表情は、真剣そのもの。決して、誤魔化す事はできない。


「‥‥‥強くなって、『アストリア王立学院おうりつがくいん』って所に入学したいんです」


 そして、アベルは正直に話した。自分が掲げる2つの道標を。


「ーーーアストリア王立学院に!?」


 そんな声を出したのは、フィーアだった。


「もしかしてっ、知ってるんですか!?」


 彼女の声に、アベルは過剰に反応する。フィーアの驚きぶりは、間違いなく何かを知っている口ぶりだった。


「‥‥‥そりゃあ、王国随一の教育機関だからね」


「きょういく、きかん‥‥‥アストリア王立学院は、教育‥‥‥」


 アベルは言葉を反芻する。何度も、何度も‥‥‥忘れないように呟く。


「え? 知らないのに、行きたいの?」


 彼女の疑問は当然のものだった。


「は、はいっ。どうしても行きたいんですっ‥‥‥!! おねがいしますっ、入学するには何をすればっ」


 アベルは必死に尋ねる。フィーアの質問に答える余裕が無いほど、アストリア王立学院の事を聞きたかった。


「‥‥‥ん〜。貴族以外が入学するなら、まず3年間の学費を払わないといけないわ」


「がくひ、って?」


「たぶん、金貨150枚は必要ね」


「ひゃ、150!?」


 アベルは大声を出して、顔が青ざめていく。



『ーーー1年の支援額が金貨14枚。1ヶ月にかかる2人の食費が、金貨1枚。もっと儲かればいいのにねぇ』



 孤児院の管理者の小言を聞いた事があった。それはいつ聞いたか覚えていない、お金に関する話。

 

「60日の食費っ、それを150回だから‥‥‥9000回分!? そんな食費くらい、お金が必要なの!?」


 アベルは思った事を大声に出してしまった。

 アストリア王立学院の学費が、自分にとって途方も無い事を痛感させられる。



「その計算はよく分からないけど‥‥‥確かに大金が必要よ。だから基本、貴族しか入学しないわ」


 フィーアが眉を下げて、慎重に話す。


「そんなっ‥‥‥」


 アベルは顔を歪ませ、視線を下げて俯く。

 あまりにも困難な条件に、突破する方法が思い付かない。


「ーーーいや、方法はあるよ」


 そんな声に、アベルの息が止まる。無意識に顔を上げると、視線が合ったのは‥‥‥ノールだった。

 彼が微笑み、手を差し出す。


「俺たちのパーティーに入らないか? 強くなりたくて稼ぎたい君にとって、冒険者は天職かもしれない」


 それはアベルにとって‥‥‥まさに一筋の光。

 自分1人で、金貨150枚を貯めるなんて不可能だった。


「ぼう、けんしゃ‥‥‥?」


「依頼をこなして、お金を貰う。難しい依頼なら、貰えるお金も多い。君はまだ10歳くらいだし、5年もあれば‥‥‥学費を稼ぐ事も、決して夢じゃない」


「っ‥‥‥なりたいっ、冒険者になりたいっ!!」


 彼の言葉に、アベルは目を見開く。呼吸を忘れ、縋り付くように彼の手を握る。


「ーーーおい、待てよノール。9歳の子どもが、冒険者になった事例は聞いた事ねえぞ」


 すると殆ど会話に参加していない坊主頭の大男が、ノールに待ったをかける。


「っ‥‥‥」


 アベルは思わず息を詰まらせ、彼を見つめる。

 だが、ノールは止まらなかった。


「前例が無いなら、この子が叩き出せばいい。それにウェアウルフを1人で倒す子を、放っておくのも勿体無いだろ?」


 はっきりと、自分の意見を述べる。その口ぶりから、彼の意思は十分に伝わったのだろう。


「‥‥‥まあ、それもそうだな。お前がそこまで言うなら、もう止めねえよ」


「ありがとう、バンギネス」


 バンギネスと呼ばれた大男。

 彼は背中を向け、息を吐きながら両腕を組む。

 坊主頭が印象的で、目付きが鋭い。背は190を軽く超えている。まさに、力自慢の冒険者といった風貌。


「改まって感謝することもねえよ」


 そして彼が手を軽く上げて反応すると、ノールは再び‥‥‥アベルの方を向く。


「どうかな、アベル君。冒険者にならないか?」


 彼の差し出した右手は‥‥‥アベルにとっての、大きな転換点となる。


「はいっ、冒険者になりたいですッ!!!」


 そして、アベルは即座に返事する。



 ・15歳になる時、アストリア王立学院に入学する



 今まで不明瞭だった道標が形を成し、はるかに遠い道筋を示してくる。

 だが、それは必死に駆け抜ければ‥‥‥届くかもしれない距離。


(待っててくれ、セリカっ‥‥‥!!)


 アベルは迷わず決心した。

 冒険者こそが、今の自分にとって最良の道だと。


「それじゃあ、君が暮らしてる孤児院に案内してくれ。俺たちが話をする」


「この狼を倒す間に、現在地が分からなくなりました‥‥‥」


「‥‥‥じゃあ、とりあえず外に出よっか」


 自分の茨道いばらみちを‥‥‥大きく変えることになるとも知らずに。

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― 新着の感想 ―
希望が見えましたね! 彼らがいい人ならアベルを育ててくれるけど、狡いやつなら利用だけなのかも、と若干心配になります
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