第1章-2 理由
私事ですが、4月から大学生になりました!
課題やプライベートで忙しいですが、合間に書いていければと!!何卒何卒…!
「……久しい。しばらくぶりだな、調子はどうだ」
突然説明もなく所長室に連れてきて、数年ぶりに会う娘への一言がそれか。
「…特に何も」
寡黙で堅い人柄の父に最低限の口数で答える。
そうか、とあちらもその一言をもって実に3年越しになる父娘のプロローグは終わった。
…………はぁ
昔からこうだ。
父は私が幼い頃から口数が少なく、必要なこと以外の会話はしてこなかった。
牢獄に入る前、私は城下町で教会のシスターや身寄りのない子どもたちの生活や仕事の手伝いをしていた。
子どもは親に捨てられたり、諸事情で子どもの下を離れて、ついには迎えにこないまま行方がわからなくなったりと、とにかく経緯は様々だ。
そんな彼らをシスターは自身の教会へ導き居場所を与えている。それでも独りになった子どもの不安は完全に拭えない。
けれど確実に街を独りで彷徨っていた頃よりは良くなっているように見えた。
少しずつだが笑顔も増えて子どもたちは進んでシスターの仕事を手助けし始めたのだ。
親のいない子どもにとって親。
シスターもより頑張らなくては、と気合いを入れて働く。
ある日、父親と同じ空間にいるのが息苦しくなり外へ飛び出した折、偶然その姿を見て自分にも何かできることはないかと申し出た。
いま思えば自分と父親との間にはないものを感じて求めていたのかもしれない。
彼ら"親子"の笑顔が脳裏に蘇る。
大変な日々だったけど、あれこそがあるべき親子の姿ではないのか。
……だというのに、この男は。
「今日お前を呼び出したのは、お前に依頼したい調査があるからだ」
ゆっくりと椅子から立ち上がり窓際まで歩を進め、こちらに目線をやらずに言う。
「依頼したい調査…?」
「そう。とても重要な内容だ」
あぁ……
まーたどうせ国の上層部宛てに手紙を持って行けとか、その類の話かと私は思った。
あまり人を信用しないような父親だし、周りの刑務官にまかせるよりも小さいときから頼まれては必ず大事な手紙を届けていた私の方がまだ信頼できるってことか。
本当に人間不信で、そんな人物がどうやって母さんと出会って関係を深められたのか、永遠の謎だ。
父親曰く、母さんは私を産んですぐに出産時のショックで亡くなったらしく、もう話を直接聞くことはできないけど、
いったいこの父のどこに母さんは惹かれたのだろう……
話題の趣旨から逸れ始めた考えを止めて
私はため息をついた。
そして、
「呼び出した理由はわかった」
「けど、いつもの手紙の運搬のためにわざわざ私を――」
「今後訪れる異変に対する調査だ」
――――なんて?
異変の、調査?……何の??
思考が一瞬止まり押し黙る私を察してか父親は続ける。
「これは女王陛下から下されたもの」
そして自分も察する。
女王陛下。
それは私たち人間の頂点で、私たちが暮らす人世界の統括者の名称だ。
彼女の素性は多くが謎とされている。
もちろん上層部の一部には認知している者がいるだろうが、私を含む大半の国民は知るところがない。
――『未来予知』の力を除いては。
公言された訳でもなく、あくまで噂の域を出ないが、
何でも女王陛下は未来を観測する力を持っているらしい。
それにより人に降りかかる脅威から私たちを守っていると。
今回の調査依頼もその未来予知によるもの…?
だとすれば、、、
「異変って何の異変なの。あと調査の具体内容は…??いや、違う……!!」
言ってすぐにふるふると頭を振る。
「そもそも、何で私が…!???」
「フェイト」
混乱する私を抑えるように父が私の名を呼ぶ。
「お前も陛下のお力については聞いたことがあるだろう?先を見通す力…」
「……未来予知」
私はぽつりと呟き、父は頷く。
「調査を依頼するにあたり異変、そして調査内容についてはお前に当然共有する。――が、その前にお前には一つ伝えておくことがある」
まだ頭の中が整理できていないのに今度は何を…
「女王陛下。あの方の力は―――」
「――本物だ」
次回は異変、調査内容について語られます!




