第1章-1 釈放
初投稿です。
自分の物語の表現方法として随時更新していきます。
どうぞ、よしなに~~
「囚人番号721番。命令だ、出ろ」
かちゃかちゃ、と牢の鍵を解錠する音が牢獄に響いた。
そして扉を開けた刑務官はそう呟く。
私は頭を軽く傾げた。
鎖と金具で壁に固定された木の板、簡易ベッドから腰を上げ扉の外へ出る。
"付いてこい"とばかりに目配せした刑務官は先を進む。
私はそのあとをゆっくりと歩いて付いていった。
足は裸足。履き物もない中、石造りの冷たい床を歩く。
―――妙だ。
歩を進める刹那、不意に思った。
基本的に収監された人間が呼び出されるのは刑期を満了した場合か、もしくは死刑執行の時だけ。
しかし自分は課せられた仮釈放なしの実刑判決10年の満期まであと7年を残している。
だから途中で声がかかることはない。
もちろん食事や運動で声をかけられることは日常だが、こんなイレギュラーなタイミングで詳細も説明されず出ろだなんて言われるはずがないのだ。
状況がよくわからない。
けど、これを命令しているのが所長である自分の父親であることは間違いない。
いったい父さんは何を…
「着いたぞ」
気づけば刑務所の所長室前まで来ていた。
私が目線を上げて扉を見るのと同時に刑務官はその扉を軽く二度叩いた。
「入れ」
その一言が扉の奥から聞こえた。
数年ぶりに聞いた聞き覚えしかない声。
扉を開けて刑務官が入室する。
自分もそのあとに続いて入室し刑務官が扉を閉め、目の前の机で書類作業をする厳格な容姿の人物に向き直る。
「失礼いたします。囚人番号721番、"フェイト・アーシア"をお連れいたしました」
ペンを持つ手を止め、作業中の人物はこちらに視線を移し、
「お前は下がれ。二人で話がしたい」
と刑務官に向けて言う。
「御意」とばかりに軽くお辞儀して刑務官は扉の外へ退出し、二人だけの空間――
――即ち、約3年ぶりとなる父親との対面を私は果たした。
次回は3年ぶりに対面した父親から呼び出し理由が語られます!