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【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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65.女勇者ローゼリッタの善戦

 すぐに斬り伏せられて終わる。見物に訪れた魔族の代表は、そのように考えた。そうでなくてはならない、彼らは疑うことなく魔王の強さを信じる。


 空を舞うドラゴン、寝そべるように空中に伸びる神龍、吸血種の大型コウモリが飛ぶ。地上には魔獣やエルフ、巨大な蛇なども駆けつけた。彼らを守れと命じられ、ベルゼビュートはぷくっと頬を膨らませる。


 魔族は自己責任が主流だ。騒動に巻き込まれても、そこにいた人が悪い。そう考える種族だから、ルシファー様の「守れ」の命令は違和感があった。それだけ人族を信用しないなら、民の参加を拒めばいいものを……。


 呆れながらも結界を張るのは、集まった魔族に被害が出れば、ルシファー様が悲しむからだ。その考えはベルゼビュートやベールも同じだった。命じられた彼女はもちろん、ベールも民の保護に回る。代わりに、私が見届け担当となった。


 ルシファー様の振るう剣の動き一つ、角度、速さ、鋭さ……すべてを記憶する。圧倒的な強さで瞬殺を想像したが、あの人の悪い癖が出た。


 相手が魔法を使えば、自らも魔法で応じる。逆に剣や肉弾戦を望めば、それに応じて己の能力を制御した。今回も同じことを行ったのだ。魔族に対するのと同じ、その通りだが……人族はまだ魔族ではない。


 一気に魔法で距離を詰めて、突き刺しても誰も文句を言わなかった。それを相手に先手を譲った挙句、一撃を剣で受け流す。続いて繰り出された突きも、足払いも、楽しみながら応じた。一切手出しせず、まるで指導するように。


「ルシファー様」


 むっとして声をかける。遊んでいないで、さっさと終わらせてください。続けるはずだった言葉は、喉の奥に張り付いた。


「な……っ!」


「え? うそぉ!!」


「我が君!!」


 大きな剣を捨てたローゼリッタは、腰に下げたもう一本を抜いた。その剣は細く……するりとルシファー様の結界を抜ける。ぱりんと乾いた音を立てた結界が一枚砕け、右腕を翳したルシファー様が唇を引き結ぶ。


 まさかケガを? 相手に合わせ、結界を減らしたなら……数年単位の説教をしますよ!


「魔王、貴様もここまでだ! 食らえ!!」


 今までの動きが嘘のような速さで、尖った剣先が胸元に吸い込まれる。


「これは、予想外だな。見事だ」


 にやりと笑って褒めるルシファー様の姿に、してやられたと気づく。あの人は、人族の勇者に華を持たせ、その功績で人族の存命を成し遂げる気だ。舌打ちして介入しようとするが、魔王の結界に阻まれた。


 自分の結界を薄くして、こちらに結界を張るなんて。それも気配を悟られぬよう、魔力を高めて散らす陽動までしていた。


「覚えてなさい」


 このままで終わらせません。私の低い一言に、ルシファー様がびくりと肩を揺らした。恐る恐る振り返る姿に、満面の笑みを返す。目を逸らすなんて失礼ですね。


 後の世に、油断して負けたと吹聴してやりましょう。仕返しを思い浮かべ、溜飲を下げる。そうしなければ、この場で人族を皆殺しにしそうだった。


 突き刺したと同時、女勇者にルシファー様の剣が刺さっていた。全力を尽くした彼女が倒れ込み、自ら刺さった形になる。だが魔王と戦い、一矢報いたのは覆らない事実だった。


「どうしますか」


 ルシファー様の思惑に気づいたベールが、小声で確認する。非常に業腹ですが、ここまでされたら無視できない。主君が望むなら、己の望みを捨てて尽くすのが配下だ。


「仕方ないでしょう。歴史の改竄は必要ですが……あの人が望むなら生かしておくしかありません」


 定期的な間引きと管理は必要だ。ベールと確認し頷いた。


「ねえ、ルシファー様の勝ちよね?」


 状況が理解できない様子のベルゼビュートに、そうですよと告げて肩を竦めた。今回は人族を間引き損ねたようです。

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― 新着の感想 ―
小人勇者と小人魔王の劇にも注目を!!小人魔王が小人勇者に小人バスターを喰らわせてリングに沈めました。猫作者さんが小人バスターを喰らって指導してくれたおかげです。人間も小人バスターの餌食に!!
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