表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/67

36.似過ぎて腹立たしい

 ベルゼビュートの一報は、まず確認から始まる。なにぶん、そそっかしい性格をしていた。勘違いや思い込みで、何度無駄足を踏まされたことか。当初はすぐに動いたが、今は確認しなければ対応しない。


「わかりました。どこですか?」


「城のすぐ脇よ。こんなにでっかい亀裂ができたの! それで甲羅のある生き物がいたわ。動きが鈍くて手足の短いやつ」


「その生き物の大きさは?」


「お城くらいね」


「どこの城ですか」


「もう! この魔王城がすっぽり入る大きさよ!!」


 あたくしの話をちゃんと聞いてる?! キレ気味にベルゼビュートが地団駄を踏む。大きな胸が揺れた。


 服が引っ張られているので、仕方なく上着を着るよう促す。不思議そうにしながら、彼女は従った。こういうところ、ルシファー様に似ていますね。


「案内してください。確認します」


「……いいけど、また疑ってるんでしょ」


 言いたい言葉をぐっと呑み込んだ。疑う原因は、あなたの暴走でしょう。信じて動いたあの頃の自分を、横から殴ってやりたい。


「ではやめますか?」


「行くわよ!」


 売り言葉に買い言葉、この辺も彼女らしい。精霊は即物的で、感情豊かだ。体は小さく透き通っているが、実体はあった。精霊の頂点に立つベルゼビュートだけが、我々と同じ大きさの体を持つ。魔力量も大きかった。


 彼女も魔の森が作った魔王のテストケースの一つ。最悪の場合、彼女が魔王だった可能性も? 想像だけでぞっとした。


 転移で消える彼女の魔力を追って、飛び出した先……驚くべき光景が広がっていた。海と名付けた巨大な水溜まりまで、一直線に陸地が割れている。入り込んだ水を揺らすのは、大きな甲羅だ。


 これだけの大きさなら、確かに魔王城が敷地ごと入りそうだ。目を見開いて、ベルゼビュートを見れば……得意げに胸を反らした。こういうところも、ルシファー様にそっくりだ。すぐ調子に乗る。


「これは……単体ですか」


「そうみたい。精霊達に確認してもらったんだけど、足が五本と首があるんですって」


 上空から、ぐるりと生き物の周りを観察した。確かに単体の生き物で、複数の魔力は存在しない。魔力で確認した限り、甲羅からはみ出しているのは六本。うち一つは首で、伸ばして周囲を眺める。問題は……足の数え方だった。


「足が四本で、尻尾ではありませんか」


「うそっ、見てくるわ」


 自分の目で確認していないベルゼビュートは、半透明の羽を広げて飛んでいった。虫の羽に似た羽は、羽ばたくことがない。ひらりひらりと舞うように動く彼女が、大慌てで戻ってきた。


「真ん中のは尖ってるし、きっと尻尾だわ。二つ目の頭じゃないわよね?」


「目や口がないので、頭ではないと思います」


 断定しないのは、魔の森の新種だからだ。何があるかわからない。決めつけずに、発見した事柄だけを報告するのが一番だった。


「今回はお手柄でしたね」


「やだっ、いきなり褒めないで。怖いじゃないの」


 一度殴って教えた方がいいでしょうか。ルシファー様と違い、上司ではありませんし。


「不穏な気配を感じたわ」


 勘のいいベルゼビュートは、さっと距離を置いた。ご丁寧に結界を二重張りしている。こういうところも、よく似て……なぜ、私はルシファー様と彼女を重ねるのか。


 三度目になって、ようやく気付かされた。ベールも私も、まったく違うタイプです。ルシファー様に似ていることに、嫉妬した? 同じ性格や性質が欲しかった……?


 絶対にあの人の前で認めてなんて、やりませんけどね。もやもやした感情の原因に思い至り、重い溜め息を吐いた。


「あれ、どうするのよ。あたくしの領地の真ん中にいて、邪魔なの」


 排除したいと訴えるベルゼビュートに、待ては通用しますかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
巨大亀!!( *´艸`)!!小人達は亀によじ登ります。猫作者さんは亀の尻尾から飛び乗りました(^-^ゞ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ