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【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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31.居城へ侵入した獲物がいる

 この頃、ようやく即位記念祭の回数が減らされた。十年に一度、ルシファー様が認めた回数だ。少ないか、多いか。民の間で意見が交わされたものの……さすがに今までの毎年は多過ぎた。


 種族により寿命は異なるが、短命な魔獣であっても数百年生きる。人生の間に数十回行われれば、一度くらいは参加できるだろう。それが基準となった。場合によっては、送迎してもいいぞ。と転移の使える魔王が言い出したことで、ほとんどの民は折れた。


 さすがに魔王を呼び出し、祭の送迎に使おうとする命知らずはいない。もし現れたら、ベルゼビュートが切り刻むだろう。私は見物するつもりだが、あまりに失礼なら教育してもいい。そう笑ったところ、暗黒の微笑み呼ばわりされた。民の間で噂になったと聞き、眉根を寄せたのはつい先日だ。


「アスタロト、見ろ! すごいのを拾ったぞ」


 またですか? 窓から飛び込んだルシファー様は、何かの卵を抱えている。どこで見つけてくるやら。また呼ばれたとでも言うのか。


「窓からの出入りは禁じておりましたが?」


 私の目の前でいい度胸です。言葉にしなかったベールの怒りが、じわじわと押し寄せる。顔を引き攣らせ、ルシファー様は言い訳を始めた。


「いや、これは緊急事態だし……ほら、この卵すごいだろ?」


 何がすごいのか、まったく伝わらない。魔力量は多いようで、サイズもひと抱えあった。色が時折り変化するのも、珍しい特徴だ。だが、すごいか問われると……首を傾げてしまう。


「卵はともかく、窓から出入りする気なら、反省()していただきます」


 おやおや、本気で怒らせましたね。わかっているのに反論して墓穴を掘るのは、この人の癖……習性でしょう。大人しく謝れば、説教も一過性なのに。


 反省して、と表現すれば半日程度。反省はして、と言い出したら数日規模だ。過去の実例から推測し、お気の毒にと口を動かした。だが頬が緩んで、笑顔になるのは止まらなかった。


「くっ、じゃあ卵をアスタロトに預ける」


「嫌です」


「命令だ!」


 横暴な魔王の命令で、卵を押し付けられた。これも何十回と経験しているため、いい加減慣れた。鳥の卵からリザードマン、虹蛇、魔獣の子。数えきれない命を拾っては、困って頼ってくる。この人にとって、すでに日常なのだ。


 無視して放り投げることも可能ですが……まあいいでしょう。恩を着せて、何かのタイミングで返してもらう。その繰り返しが悪くないと思い始めたところですよ。


「きちんと恩は返していただきます」


「……いつも返してるだろ」


 むすっとした口調で告げたところで、ベールに拘束されて椅子に座らされた。これ以上の抵抗を試みれば、実力行使される。その際の被害を熟知する魔王は、大人しく従った。


 言い換えれば、それだけ抵抗して失敗したのですが。肩を竦め、私はさっさと退室する。今日は仕事もできませんし、何か変わりがないか城を確認しよう。同族の様子も……。


 ふらっと姿を消し、城の前に現れる。漆黒城だの、暗黒城だの。心当たりはないのに、暗い名称を付けられた城を見上げた。黒曜石で作ったのがまずいのか。考えながら城に入る。いつもと何ら変わらぬ風景、空気、城内、なのに違っていた。


「……荒らされましたか」


 張った結界が緩んでいる。同族以外の侵入があったことに舌打ちし、足早に地下室へ向かった。その途中、滞留していた霧のような冷たい何かを吸い込み、咳き込む。この身を傷つけるなら、相当に強い存在だ。


 預けられた卵を床に下ろして、同族を呼ぶ。甲高く、耳のいい魔獣であっても聞き取れない高さで、呼び出しをかけた。現れた吸血種は、コウモリ姿だ。そのまま卵を預かり、逃げるように離れた。


 これでルシファー様に文句を言われずに済みます。侵入者を排除しましょうか。久々に本気で戦えそうな獲物の気配に、自然と笑みが浮かんだ。

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― 新着の感想 ―
アスタロト様激怒の展開!!小人達はコウモリさんと共に卵を暖めます。猫作者さんは猫は液体なのでモフモフ絨毯となって卵の毛布代わりです。
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