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【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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25.貴族を制度として導入します

 日々、拡大する魔の森は把握が難しかった。各地に住居を構える魔族に通達を出す。褒美と引き換えに、城へ情報を持ち寄るように、と。


 即位記念祭で、各種族の代表が顔を揃えていたのも助かった。仕事を与えるにあたり、貴族として優遇すると伝える。纏め役として、一時的に役立てばいいと考えての采配だが、思ったより効力があった。


 貴族の肩書きを名誉と認識する者が多く、同族以外へも鷹揚に振る舞うようになる。貴族だから義務として助ける、貴族なので細かな失敗に目くじらを立てない。など、予想外の方向へ効果を発揮した。そのため貴族制度の導入を真剣に検討する。


「公爵、侯爵、伯爵、男爵……」


「男爵の上に子爵を入れましょう」


「五つもあるの? でも男爵って一人じゃないんでしょ?」


 ベールと検討する横で、ベルゼビュートが「覚えられるかしら」とぼやく。何を見ても聞いても忘れない私にしたら、なぜ覚える必要があるのか疑問だった。何もしなくても、記憶に刻まれるはずだが?


 ベールはそういった能力はないものの、物覚えは良かった。書類なども、内容をきちんと把握している。あのピンクの頭の中は、空っぽなのかもしれない。疑うくらいには、ベルゼビュートの物覚えは悪かった。なぜか数字関連は、ずば抜けて計算が早く忘れにくい。


「あなたが覚えないなら、ルシファー様の側近から降りていただくことになりますが……」


「覚える! できるはずよ」


 厳しい条件を提示すれば、やる気が出たらしい。見守っていたベールは「操り方の参考になります」と口元を緩めた。感情が希薄なベールだが、表現が苦手なだけだ。本当の意味で感情が薄いのは、私の方だろう。


 表面を取り繕い、同族や他の個体の反応を見て対応している。大量に蓄積された過去のデータを分析し、こういった場面ではどう振る舞うか。決められた通りになぞるだけだった。今のところ、気づいているのはルシファー様だけのようだ。


「アスタロト、疲れているなら明日にしましょうか」


「いえ、問題ありません」


 考え事に没頭し、うっかり聞き漏らしたらしい。頭の中で検索するように探れば、耳に入った音を見つけた。


「貴族を世襲制にするかどうか、でしたね」


「ある程度は認めてもいいですが、長く続けば弊害の方が大きいでしょう」


 聞いていたように振る舞う私に、ベールは淡々と返事を寄越した。その視線はじっと私を捉えたままだ。逸らす理由もないので見つめ返すと、意味ありげに口角が持ち上がった。まるで「知っているぞ」と知らせるように。


「ねえ! もう帰っていい? 今日はお酒を飲む約束をしたのよ」


「おや、賭け事でしょうに」


 バレていますよ、と笑顔で指摘する。しどろもどろに言い訳するベルゼビュートは、このまま留めても役に立たないだろう。帰っていいと許可を出し、彼女を意識の外へ追い出した。


「ベール、こちらの案を掘り下げましょう」


「……問題が起きた場合に、把握しやすい方が助かります」


 魔族はまだまだ種族が増える。森が広がるにつれ、種類と数が増えた。魔の森に住む者は誰もが、教えられずとも知っている。魔の森こそ、魔族の母なのだ。発展途上にある世界を、魔の森が生み育んだ。


 魔王とは、最強の魔族の称号であり、同時に魔の森に愛された愛し子なのかもしれません。ざわりと森の木々が揺れ、そうだと肯定する。


「伝達は森が助けるでしょうし、増える魔族に住む場所を割り当てなければ……その際、民の意見を吸い上げる貴族が役立つはず」


「先まで見通しての采配とあれば、反対する理由はありません」


 ベールとの間で結論が出た。あとはルシファー様の裁可を得るのみ……。民の間をふらふらと移動する強大な魔力を感じ取り、二人同時に溜め息を吐いた。

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― 新着の感想 ―
小人族も種類が増えてます。猫作者さんと小人は、魔獣小人の背中に乗って森を走ります。ふむふむ、小人仲間のメモと、意志疎通は問題なし……と。魔のお母さん、これ小人と猫作者さんが作った猫作者さんのぬいぐるみ…
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