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【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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21.即位記念祭は騒がしい

 騒動があったことを公表し、即位記念祭は七日ほど遅れて開催した。竜族、神龍族、精霊、吸血種、魔獣が一堂に集う。そのほかに新しく加わった幻獣や妖精、鳳凰と名付け分類された火の鳥が顔を見せた。


「毎回同じセリフで悪いが、オレが魔王である限り、このルールだけは守ってほしい。弱肉強食が世の常だが、自分より弱い者を見捨てるな。生きるため、食べるために殺すのは仕方ないが、無駄に命を散らすな。行いを認めれば褒美を、罪を犯せば罰を与える。くれぐれも、忘れないでくれ」


 穏やかな表現で告げるが、ドラゴン達は神妙な顔で頷いた。神龍も脛に傷を持つ身だった。両種族とも、強者に分類される。魔王ルシファー様に刃向かい、殺された同族の話は覚えているだろう。


 純白の長い髪を結い、幼いが美しい顔で微笑む少年が、その全身に血を浴びて笑いながら敵を引き裂く姿は壮絶だった。あの美しさと残酷さ、それでいて苦しみを長引かせない優しさに惹かれる。


 私がベールやベルゼビュートと共謀して戦っても、互角かそれ以下。全力を振り絞っても届かない高みで、ルシファー様は助けの手を差し伸べるのだ。あの余裕は、我々にない部分だった。


 集まった魔族は総勢一万前後。全員で逆らっても勝てない、圧倒的な魔力を秘めた魔王は彼らの歓声に笑顔で応えた。


 本能的に強者を崇め従う魔族にとって、ルシファー様はわかりやすい象徴だ。誰より強く美しく、薄い色を纏う人。


「アスタロト、あれでいいか?」


「ええ、ご立派でした」


 褒められ、へらりと笑う姿に威厳はない。普段から仰々しい話し方を教え、民の前で使うよう伝えてきた。オレという一人称も、いずれ変更した方がよさそうだ。何かいい表現がないか、ベールと相談するべきだろう。


「あっちで皆と飯を食いたい」


「やり直し!」


「えっと、オレは民と交流したい……?」


 最後が疑問系でなければ満点ですが、この人らしいかもしれません。及第点だと伝えながら、許可を出した。祭と銘打った以上、飲んで食べて楽しむ場だ。吸血種の一族も、捕らえた獲物の血を楽しんでいる頃だ。血抜きが終わった獲物は、魔獣達が受け取る手筈だった。


 無駄なく酒も料理も行き渡るよう手配した。歩き出せば、しゃらんと髪飾りが鳴る。領地とした魔王城の北、我が城がある丘で赤黒い鉱石が出た。見た目の色から柘榴石と名付け、一族の飾り物を作らせる。


 同じものを身につけたがるのが、吸血種の特徴だった。強者である王と同じ宝石や装飾品を身につけることで、その力を得て眷属となる。信仰に似た考えが彼らの中に存在した。私にとって利用しやすいので、今回の柘榴石も分け与えている。


 得意げに飾りを揺らす同族の丁寧な挨拶を受け、魔王城前の草原を見渡した。城がボロボロになったため、中庭より外へ会場を移している。木陰に陣取る者もいれば、燦々と陽の光を浴びる種族もいた。思い思いに宴会が始まっている。


 さまざまな種族の交流会も兼ねているため、同種だけで固まるのは御法度だった。通達に従い、魔獣の隣にドラゴンが寝そべり、人型を取った年配の神龍がまだ若い精霊と語り合う。


「鳳凰達も問題ないようですし……」


 確認しながら、ふと足を止めた。鱗のある巨大トカゲに似た種族が、すくっと両足で立つ姿に驚く。今までは四つ足だったが、ついに立ったのか。世代交代する間に骨格に変化が出たと聞いた。


「おめでとうございます。こうしてみると体格も立派です」


「ありがとうございます! 先日進化したばかりで」


 まだ長くは立っていられない。そんな雑談を交わし、リザードマンと別れた。広場のあちらこちらに、許可された屋台が出ている。その一角で、わっと声が上がった。


 魔王ルシファーに喧嘩をふっかけ、その地位を簒奪しようとする若者が現れる。どうせ叩きのめされるのに……。見慣れた光景だった。私達にも勝てない者が、あの人を負かせるはずがない。


「即位記念祭のたびに起きるなら、いっそ恒例行事として組み込んでもよさそうですね」


 眉根を寄せて呟いた。これもベールと相談しておきましょう。

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― 新着の感想 ―
小人と猫作者さんは、小人族達と宴会をします。ドラゴンがやって来たので取り敢えず小人印の針で作ったペンダントをプレゼントしました。魔王陛下には勿論、針の髪飾りを献上しました(*゜∀゜)ゞ
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