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【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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16.あっさり自白しました

 だいぶ肌寒くなった季節、即位記念祭の準備に忙殺される私は処理した書類を転送する。ようやく一段落した。お茶でも飲みますか。立ち上がったところへ、魔王城に大声が響き渡った。


「絶対に嫌だ! なんで、建て直すんだよ!!」


「ではなぜ嫌なのですか」


「っ、いろいろ……その、思い出があるし」


 魔王城の再建計画を持ち込んだベールに対し、ルシファー様が無駄な抵抗をしている。どうせ負けるのに、必ず立ち向かうところは立派だった。魔力量や戦闘能力となれば、明らかに魔王の独壇場になる。しかし、政務に関することや説得はルシファー様の苦手とする分野だ。


 やり込められるのだろう。聞き耳を立てながら、お茶を淹れる。薫り高いお茶は、領地内で同族の摘んだ薬草から作られる。他の種族なら毒だが、吸血種には薬のような扱いだった。吸血衝動を抑えてくれる上、舌へ走るピリッとした刺激も好ましい。


 鮮血のごとき真紅のお茶を一口、ルシファー様の言葉の裏を考える。おそらく、城内に何か隠していますね。物なら収納して終わりですから、生き物でしょう。命ある存在を亜空間へ入れれば、息の根が止まる。だからしまえなくて、どこかに匿っているのだ。


「思い出、ですか?」


 わざと言葉を区切ったベールは気付いたらしい。眉根が寄って、折角の美貌が台無しだった。幸いにしてルシファー様だけでなく、大公三人も顔は整っている。お互いの美貌に惑わされることなく、手加減なしで殺し合った間柄だ。少しくらい顔を歪めても気にならなかった。


「ルシファー様、裏庭の……ですか?」


「いや、そっちじゃなくて。地下室の……っ!」


 鎌をかければ、すぐに引っ掛かった。こういった駆け引きは、生まれながらの適性があるのか。千年経っても上手にならない魔王だ。慌てて口を噤むも、時すでに遅し。ベールが詰め寄った。


「地下室? 何を隠したのです」


「……ああ、その……だな、あれだ。ほら……」


 なんとか誤魔化そうとするも、ベールは手慣れた様子で追い詰める。


「ご返答がなければ、地下室を消します。嘘をつけば地下室を亜空間へ……」


「ごめん、拾った子がいる。大きな甲羅のある生き物で、手足がじたばたと可愛くて……魔狼に襲われて可哀想だったから、奥で匿った」


 息をするレベルで、通りすがりに生き物を拾ってくる。ほとんどが新種であり、見たことがない魔族や魔物だった。どちらか不明だが、魔力を持たない動物である可能性は低いだろう。魔力を感知して拾ってくるのが定番だった。


「……見せてください」


 ベールとしても、叱りつけたいのを堪えて低い声で要請した。もし新種の魔族なら、保護対象となる。相応しい環境を見つけて、生活を援助する必要があった。


「これ、ですか?」


 転送した動物を、床の上に置く。執務机よりやや大きいか。手足を引っ込めた亀は、鼻先だけを覗かせた。尻尾がやたら長く、蛇にそっくりだ。その上、頭も牙があった。手足の爪も確認した限りでは鋭い。


「魔狼がひっくり返して齧ろうとしたのでな。回収したんだ。見たことない亀だし……」


 ルシファー様の言い分もわかる。問題があるとすれば、新種が多すぎることだ。分類方法も確立していないのに、新しい魔族が増えていく。この亀も魔力があるため、あとは意思疎通の確認のみ。


「会話は出来ますか?」


「いや。だが、何か話してるような音を出す……これだ」


 ぐるると唸るような低音が、振動を伴って響く。同族らしき反応も返った。どうやら仲間同士で意思疎通はできているようだ。これなら、魔族判定できる。


「魔族ですね。分類はルシファー様にお願いします」


 何を嫌そうな顔しているんですか。書類を半分も引き受けたのですから、そのくらいは仕事しなさい!

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