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計画の微調整


 普段平和な村で、血で血を洗う激しい戦闘が四人とモンスターの間で繰り広げた。


 黒い服を着用して黒いマントで口元を隠している青年が、長剣で花を切るように狼型のモンスターの首を断ち切っていく。


 その直ぐ後ろで無駄が目立つが、その差を身体能力でカバーしたアトラスが力技で切り伏せ、アトラスのフォローを魔法でするゴスロリ美少女魔道師が、彼らのあいだに魔法を放ち狼のモンスターを燃やしていく。


 最後に長身の戦士タイプの大槍を持った男は、空気を切る音と共に狼を叩き切って殺す。


 子供でも分かるほどの重量感ある槍を片手で一回転させると、背後から襲い掛かってきた狼の額を目がけて頭蓋骨を粉砕しながら刃をめり込ませて殺した。


 四人が共同で敵を倒していくと、アトラス1人で戦っていた時が見違えるように短時間で片付けていく。


 三邪王のハイゼットを初め、ミラジーノとエッセにとって全く物足りない戦闘を演じ、最後の一体をアトラスがしとめた。


 アトラスも3人に続いて息の一つも切れていない。ついでに汗もかいていなかった。


 「それで終わりだな」


 周囲を見渡してハイゼットが呟く、長剣を強めに振ると脂や血が剣の刃からふるい落とされた。それを見たアトラスはハイゼットに頷き、見まねで剣から脂と血を落とすと剣を鞘に戻す。


 普通の剣ならそんな手入れで脂や血が落ちるはずはないが、剣を持った経験のないアトラスには普通に思えた。


 「加勢ありがとう、僕1人よりずっと短時間で終わったよ」


 感謝の言葉と共にハイゼットから渡された剣を彼に返そうと、差し出す。


 ハイゼットは無言で押し返して、不思議そうな顔をするアトラスに言った。


 「これはお前が持っておけ、モンスターが姿を現したならばこの村はもう安全ではない」

 「そんな」

 

 あっさりとハイゼットの言葉に騙されるアトラス、単純というか純粋というか。


 心の隅で「アトラスは人を疑う術を持っているのか?」と呟く。


 「所で君たちは?外から来た人だと思うけど」


 外からの交流が少ないアトラスの国、オッティに置いて旅人など天然記念物だ。一度村に入れば誰だろう?なんて声をかけちゃう。


 「私たち劇団にみえる?」


 お前は見えるかもな?ミラジーノ、アトラスからしたらアホな格好だと思うぞ?


 また心で呟いたはずなのに、わき腹筋肉の薄い場所を後ろ手に持った杖でミラジーノが突いた。


 その場に蹲る魔王ハイゼット。


 「え~と」


 ハイゼットとミラジーノのやり取りに戸惑うアトラス。これが外の世界のコミュニケーションなんだうか?なんて勝手に納得しておいた。


 「ともかく、我らをお前の家に連れて行ってくれんか?流石に疲れたので休みたいが…旅宿などあるか?」

 

 めったに外からの人がこないので宿屋がないのは認識済み。


 幼馴染2人のじゃれ合いを他所に、エッセがアトラスとの会話を第三者に邪魔されない場所を求める。


 モンスター騒ぎが終結したのを知った村の人たちが、ゾロゾロとモンスターに荒らされた場所を点検と修理のために戻ってきた。


 村人全員で歓迎を受けるよりも、アトラスを城へ行かせる誘導をしたいので、アトラスの家を希望すれば村を守るために加勢した3人を、宿のない村にほうって置くとはないと踏んだエッセ。


 そしてその通りにアトラスは笑顔で歓迎する。


 「勿論!僕の家においでよ、余り豪勢な歓迎はできないけどね」


 無垢な笑顔に3人はきゅ~んとなる、勘違いは止めて欲しいアトラスに気があるわけではない。ただ小さな赤子が立派になってくれた親心だ。


 最高神が聞いていたら「君たちが子供なのにね」と突っ込みを頂けるだろう。


 幸か不幸か聞く者も、突っ込みを入れる者もおらず、3人はアトラスの家に招待された。


***


 「へ~君たちはチームを組んだ冒険家なんだ」

 「ああ、途中賞金首を狩ったりしてな。気ままに旅をしている」


 少し懐かしい感覚になりながらもアトラスの家に3人は招待されて、長方形のテーブルに座らせてもらった。


 アトラスの両親は彼が幼少の頃に流行った高熱で他界したらしい、家に残ったのは宝玉に守られたアトラスと彼のお爺ちゃんとの二人暮らしとの事だ。


 普段は畑や家畜の世話をして暮らしている、特別裕福ではないが特別不自由な暮らしでもないのでアトラスは別に不満はなくのびのびと祖父の元で育った。


 簡単な自己紹介を交し合った後、アトラスがお茶を振舞ったので、それを飲みながらハイゼットは返答する。


アトラスはエッセの前にお茶を注ぐと置く。


 「どうぞ」

 「すまない」


 動きやすく、少しだけ鎧を脱いだエッセもお茶に手を伸ばした。


 「でも、外の世界じゃモンスターがうようよしているの?」


 自分のお茶も注ぐと、3人と向かい合うように反対側に座る。


 「ああ、ここ最近人の前に頻繁に姿を現す」


 真剣な眼差しのハイゼットにアトラスは息を呑んだ。


 まさか外の世界では緊迫した状況だったとは、彼にとって衝撃だった。どこもこの村、国のように平和だと思っていた。


 「噂によれば魔界の魔王がサファリへ手を伸ばしてきたとかね。自分を魔王って名乗るくらいだもん、きっと馬鹿よ」


 ニッコリ美少女のミラジーノは含みのある仮想の魔王の説明をする。


 それを米神ピクッと動かしてしまうハイゼット。まるで…いや完全に馬鹿にされている。


 でも手がだせねぇ…覚えていろよ。


 「そんなの…」

 

 俯いてアトラスは自分で注いだお茶を両手に握り締め、肩を震わせて呟いた。


 3人はここで「魔王なんて間違っている!人を不幸にするなんて許せない!僕が戦って討ちとってやる」


 くらいのリアクションを望んでいた。


 テーブルに向けていた顔を上げるアトラス、期待をする3人。


 さあアトラス、罪のない人々が苦しんでいる、その理不尽な怒りを行動に移せ。


 「魔王は間違っている!話し合いで解説しないなんて!僕が話してきてやる」


 ……は?


 …は?


 はい?


 ちょっとこの子…今何か言ったかしら?何か聞こえた気がするわ~。


 なんて近所の噂好きなおばはんじゃないだ、現実を受け止めろ。ちょっと待ってくれ情報を整理かつ今後の参考としよう。


 つまり…なんだ、底なしの平和主義者か?話し合いで、解決の道が恐怖の塊相手の魔王に通じると?人間で語られる魔王は血も涙もないぞ?それはアトラスも十分に知っているはず。


 「前から思っていたんだ!魔王は悪いことをするけどきっと話し合いで気持ちが通じ合えるって」

 

 だったら人間同士で戦争は起こってないよ?アトラス。


 どこまでも平和なのだろうか?それともアトラスが平和な頭をしているのだろうか?


 はい、念話ターイム。


 ≪どうする?≫


 ハイゼットが2人に問うてみた。


 ≪とりあえず…魔王に対抗意識を持ってくれただけでもいいじゃない?≫


 妥協してもいいんじゃないかとミラジーノは思うが。


 ≪敵意および殺意を持って貰うには姫を攫えばいいだろう≫


 エッセも今のアトラスが魔王に対して話し合いをして、解決できるなど思っていても姫を目の前で攫えば気が変わるだろう。


 そう思っていたかった。


 何となく出だしから不穏な感じから、アトラスの入れてくれたお茶をハイゼットは複雑な心境で啜る。


 「外の世界も大変なんだね、出来ることなら力になりたいけど僕に何が出来るんだろう」


 力なくアトラスは自分を見つめる、その一言に3人の気持ちは浮上した。


 他人を想う気持ちは自分たちの理想とする勇者の姿に相応しい、そうだアトラスはまだ勇者の卵だ。


 だから自分たちがしっかり誘導してやらないと勇者どころか村人Aで終わってしまう、旅にださせるまでは気が抜けないとハイゼットは持っていたコップを置く。


 その夜雑談をしていた3人に、アトラスの提案で彼の家に泊まることになった3人は両親が使っていた部屋を借りて、ベットに腰をかけたハイゼットがアトラスに聞かれないよう魔力を部屋を包むように防音をして話始めた。


 「で?どうする」


 主語もなく訊ねるハイゼットにエッセは眉を顰める、そうやって主語を抜かすのは彼の悪い癖だ。言いたい事は分かるが。


 「主語を飛ばすな、確実にアトラスを城へ呼ぶには脅迫状をおくりつけるべきだな」


 最初はアトラスがモンスター退治をすれば国王が呼ぶと想像していたが、段々と不安になってくる。


 どうせ姫をアトラスの目の前で攫う予定だ、ならばもっと派手に演出しても罰はあたるまい。


 「魔王がお姫様攫いますので、ヨロシクね。後生贄なんかに使っちゃうかもしれないので怒らないでねん。って内容にしちゃいなさいよ」


 楽しそうにして言いのけるミラジーノは結構Sだとハイゼットは思う。でも脅迫状で危機感を持ってもらい戦闘の功績を残したアトラスを呼ぶのは確立的に高い。


 それが駄目なら次の手を考えるが、今は脅迫状を贈りつけてやろう。当然不気味なモンスターが脅迫状を持っていったら抜群の相乗効果をもたらしてくれる。


 「んじゃ、俺が脅迫状つくるわ。ミラジーノは魔王の配下っぽいの出してくれ」

 「了解」


 ミラジーノはモンスター担当なので手を翳し、気味の悪いモンスターを選んで呼ぶ。


 その間にハイゼットがエッセと共同で脅迫状を作成、デザインはどうするかな?


 「恐怖の中に気品さを出さないとな、どれ漆黒の紙に血に似たインクで文字を書き…封には髑髏でもつければいいだろう」


 エッセが魔力を具現化するとエッセの思い描いた紙が、彼の手の中で作りだされた。


 それをハイゼットに渡す、空中で停止をしている黒い紙を前に、愛用の羽ペンを出すとサラサラと流れるように書いていく。


 ハイゼットはこういう文書を作るのが得意、伊達に魔界の政治を担当していない。ハイゼットのペンが紙に書かれる音をバックミュージックにミラジーノが魔方陣を床から浮き上がらせると、ボロボロの黒いフードを被った人体が白骨しているアンデット系のモンスターが現われた。


 う~ん魔王の配下としては十分な不気味さ、しかし白羽の矢が立った当人は全身が骨のクセに内股で震えている。


 「おい?どうした?」


 愛する国王に脅迫状というなのラブレターを書いていたハイゼットが、白骨したモンスターの挙動不審さに顔を上げた。


 【あの、わたくし、極度のあがり症でして…その…恥ずかしい!!】

 「ソイ!!」


 ミラジーノがガイコツの後ろ首、いや頸椎けいついに脛でとび蹴りをしかけた。


 ガイコツは【アウチ!!】と悲鳴を上げて倒れる。


 「もうこれ以上の面倒は冗談じゃないわよ!行って国王に渡せばいいじゃない!?それだけでしょ!!」


 結構当時の予定から大分脱線してきている今の状況にちょっとイラついているのに、さらに面倒なガイコツにミラジーノちゃんはご立腹のようだ。


 ガイコツは床に倒れたまま、痛くないはずなのに後ろ首を押さえる。


 【でっですが、あの、国王の前ともなりますと、たくさんの人がいますよね?】

 「当然じゃない?こんな平和ボケした国王じゃ真夜中に渡してみなさいよ?夢で片付けられちゃうわ」

 【だからいやなんですぅぅ!!】



 有りうる…ミラジーノの話を他人事のように聞いていたエッセは指で顎を触ると、自分のペットをサファリへ召喚しようと手を床に向ける。


 すると突然床から、お前の骨ごと噛み潰してやろうか?とか聞こえそうな牙を持った灰色の馬が現われた。


 しかもたてがみは炎で燃えて、目は血走っている。墓場でこの馬と出会うと高確率で死亡グラフがこんにちはの出で立ちだ。

 

 この馬は魔界の動物だ、特別気が荒い馬を自分の所有物として保護しているエッセがその中の一体を呼んだ。


 見かけは凶暴だが賢いので不安ではない、多少暴れようともちゃんと加減してくれるだろう。そう自分が躾けた。


 ガイコツとペアで現われたら、あがり症なガイコツでも迫力満点に見えるだろう。


 「さあ、書いたぞ」


 ハイゼットが我ながら上出来な出来に、満面な笑顔で封をすると床におねえぇ座りのまま震えているガイコツに渡す。


 それを顔の筋肉がないのに、不安感満載なガイコツは両手で受け取った。


 【あのう、やっぱり、わたしじゃなくて…】

 「早く行きなさい」

 【はい】


 指をさして国王のいる方角を指差すミラジーノにすべての意味で負けたガイコツは、恐る恐る馬に近づくと馬は「なんだ?てめぇ食われたいのか?」


 という顔をしてきたので。


 【ひえええええ!!】


 実際死んでいるし、どうみても死の概念がなさそうな外見でガイコツの体を揺らして怯えた。


 3人は中々進まない展開に、一度視線を合わせ同時に頷く。


 1 ハイゼットがガイコツの服を掴み、馬の上に放り投げる。


 2 ミラジーノが国王の城までの亜空間を開く。


 3 馬にしがみついているガイコツを確認するとエッセが馬の尻を叩く。


 見事なチームワークで、馬は嘶き興奮した顔で最初からクライマックスのように走り出した。亜空間に消えるガイコツと馬。


 ガイコツから乙女を連想させる悲鳴が聞こえたが、生前は商店街のレストランの男主人だ。

 

 亜空間を消して、ハイゼットの隣にミラジーノが座った。


 その顔は一段落終わった、見たい顔をしているが。そんなミラジーノにエッセは。


 「まだ終わってはいないぞ?次は姫を攫う魔王を誰がやるかだ」

 「「は?」」


 ハイゼットとミラジーノは同時に頭が悪そうな声をだした、案の定な2人にエッセはため息をつく。


 「どうゆこと?」


 分かっていないらしいハイゼットはエッセに聞く。


 「当然だろう、適当なモンスターに任せてみろ?アトラスに瞬殺されるだけだ」

 「あ~なるほど」


 ミラジーノは感心した声をだす。


 つまりは、モンスターを魔王に仕立て上げると、姫を攫うために現われた瞬間に、その場でアトラスに倒されて、ジ・エンド。旅の他の字も始まっていない内に世界は救われるであろう。


 そんなん認められるかい!!


 アトラス以上の実力を持つのは神か自分たちしかいない、だからこの3人の中から魔王の役をする者必要なのだ。


 「ハイゼットあんたやれば?魔王だし」

 

 真横にいるハイゼットを見てミラジーノが提案。


 「やだよ、それに誰かが魔王をやるのは馬鹿だって言わなかったか?体格がいいエッセがすればいい」


 すかさずミラジーノの提案を却下したハイゼットはエッセに押し付けようとする。


 「我とてゴメンだ、アトラスに憎まれる役など」


 そう、これが三人の嫌がる理由。大きくなれどアトラスは3人の中では待ちわびた赤子であることには変わりない。できるなら嫌われたくないのだ。


 「じゃあ、いつものアレだ」


 ハイゼットが利き手をだす、ミラジーノとエッセは頷き自分の利き手を出す。


 「1、2、3!ジャンケンポン!!」


 さて勝利の女神は誰を見捨てるのだろう、数秒後に両手に床をつき悔しがるハイゼットがいた。


こんにちは、GWが終わって更新がまた遅くないりました。

しかもスランプ気味ですので文章がペロペロな具合ですみません。

次は恥ずかしいハイゼットの魔王コスをしたいです、ハイゼットはやれば出来る子なので頑張ります!(何が?)

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