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今会いに行きます

 



 ハイゼットは珍しく自分の公務室で上機嫌で書類を捌いていた。いつもの数倍のスピード…いやそれ以上の速さだ。ここ数日分どころか数ヶ月先の書類まで彼は不眠不休で可能な限り書類を片付けていく。


 確かに明日から長期の休息をとるとの事だったが、これほどまでに生き生きとしている彼を見るのは最近では17年前の前くらいだろうか?


 「随分と進んでいらっしゃいますね、私の主。ハイゼット様」

 「嫌味か?私の主はやめろ」


 私の主というのは遥か昔魔族の中でも物語として語られるほどのに名君の魔王がおり、その魔王は民のために身を削って働いた魔王の側近が敬愛を込めて「私の主」と呼んだことから働き者の主に対してそう呼ぶ。

 

 「いえいえ、そんなまさか。しかしここまで気持ち悪く…コホン、いつもならば死んだ魚のような目…ゲフンゲフン、で働かれるのにどういたしましたか?」


 わざとらしい咳にハイゼットの米神に血管が浮かぶ。


 「俺はお前が大好きだ、だから殴っていいかアトレー?」

 「お気持ちだけいただきます」


 アトレーと呼ばれたのはハイゼットと同じくらいの身長をもっている長身の男性で、短めの髪の長さに黒と間違えるほどの濃い青色をもち、白色の目をした品の漂う男だ。


 歳はハイゼットよりも上でハイゼットが生まれる前から仕える事を宿命付けられた男でありお目付け役と護衛を兼ねている。


 「まあいい、今日は気分がいいから無礼講で許してやろう」


 その言葉にアトレーはニッコリと笑い。

 

 「ありがとうございます、許しがでましたので調子に乗らせていただきましょう。普段からもっと馬車馬のように働きやがれです」

 「………」


 確かについさっきまで無礼を許したけどここまで許したつもりはなかったけど、なんか風向きが悪いので黙っていた。サボリ魔なのは確かにそうだから反論できないし。


 どうせニコニコした笑顔でも彼の本性は鬼畜なので反抗しても返り討ちにあうのがオチだ。


 最後の一枚を吟味してサインを書こうとした書類を取ろうとした瞬間、アトレーに取られる。


 「おい」


 ハイゼットは眉をひそめてアトレーを軽く睨む。今は時間が惜しい、明日からの長期休息はあの子に会いに行く予定なのだ。


 一刻はやくサファリに出かけたかった、其れを邪魔をするアトレーに少しイラつく。 


 あの子とは魔界ソニカと人間たちの住むサファリを隔離できる魂を持った人間の赤子、そして17年前に俺たちが力を授けた未来の勇者だ。


 この日のために何日も休みを返上して土台作りに奔放した、まずはモンスターとなるさ迷う魂の教育。人間を傷つけたり殺したりするのを徹底的にできないように指導してきた。


 次に架空の魔王の居住区の整備、中ボスが住む森や洞窟を整備したり人間の街や村に魔族やモンスターの噂を流したり色々がんばった。


 見てくれが怖いタイプのさ迷うと魂が入ったモンスターをわざと人間にチラ見させたり。


 適当な旅人を見つけて森の中で人狼タイプのモンスターと遭遇させて噂を広めてもらうためだ、しかしモンスターに合わせたときの旅人の顔は壮絶に笑えた、いや旅人には気の毒だったけど。


 壮大に噂を流してくれれば英雄としての功績に華を添えられる。


 そして忘れてはいけないのがエルフの娘の探索も続行中だ。


 結晶化した女を捜すのは砂漠に落とした金の一粒に等しく難しいが、あの子が無事旅を終わらせるにはその程度の疲労は承知の上と諦めて地道に探している。


 とにかく三人で立てた勇者育成のスケジュールが滞ることなくステージは整った、そして勇者である赤子の成長を見に行くのが17年後の誕生日と決めて様子を見に行く。


 赤子には相当な力を授けた、まだ完全に使いこなせていないが王宮騎士の少数部隊とタイマンしても余裕で勝てる実力はある。

 

 そんな彼を周囲の人はほっとかないだろう、与えた力で驕り裏家業など人の道を踏み外さぬように、ちゃんと監視役として村人の記憶を操作して1人だけあの村に置いた。


エッセの部下の女性を昔から住んでいる老婆に化けさせているので彼女から何も報告がないところいい子に育っているのだろう。


 実際見てないのでそうだと信じたい、でも見に行きたいが俺たちには俺たちだけにしか出来ない仕事がある。その責任から都合よく逃れられずにエフルの女の探索をやりつつも長期休暇をとるために先に仕事の書類を急ピッチで片付けた。


 それはミラジーノもエッセも同様、それも全てソニカとサファリの平和のために。


 俺ってつくづく名君だよな…。


 半分以上は自分の仕事を減らすための処置なのだが結果オーライで二つの世界に与える影響もいい意味で多い。


 この計画を実行するためには長期に渡って魔界を空けなければならない、その為に夏休みに宿題を前の日にやる意気込みで取り組んでいるのだ。


 「早く書類を返せ」

  

 奪われた最後の書類を取り戻そうと手を伸ばすがアトレーは黙った。


 「おい?アトレー?」


 無表情のままこちらを見つめるアトレーにハイゼットは不思議に思う。意味もなく行動する男ではないのに。


 「何か企んでいませんか?」


 ギクリと内心つめた~い汗が流れた、実は鬼畜秘書…いや俺の優秀な臣には内緒にしていたのだ。


 何故ならば絶対ついてくるもん、嫌だよ保護者つれていくのは。


 だからミラジーノとエッセで遊びに行くといっているだけだった、嘘は言ってない。ただ俺を不信がっているちょくちょく少しの暇をみつけてはサファリの世界を覗くので疑問に思っているのだろう。勿論エフルの女の探索の為に覗いているのだが。


 「別に早く遊びに行きたいだけだ、返せ」


 じと~とにらまれる一歩手前の目で内臓をサーチするように見られた、まるで蛇に睨まれたカエル状態。


 「いいでしょう。今のところは信じます」


 ハイゼットの前に戻される書類、後はサインを記入すれば開放されてミラジーノとエッセたちが終わり次第にサファリへ行ける。


 意気揚々とサインを書き終えるとアトレーに差し出した。


 「さ~て、終わった終わった」

 「ご苦労様です」


 さっそく公務室から出て行こうとするハイゼットの後ろ姿をアトレーに振り返り。


 「じゃっ、留守よろしく」


 手をヒラヒラ動かし、アトレーの返事を待たずに走り廊下へ消える。


 そんなハイゼットを見つめていたアトレーは一つため息をこぼして、自分の髪に毛を一本だけ指でつまみ抜く。


 抜いた髪の毛を口の前まで持っていって、息を吹きかけるとたった一本の髪の毛が見る見る小さな小鳥の姿になった。


 「私の主を監視せよ」


 小さく呟くと指先に停まっていた小鳥は姿を消した、その様子を見届けたアトレーはいつまでたっても子供のままのハイゼットにため息をつく。

 

 (さて、今度はなんの隠し事をしているのやら)


 ハイゼットの名誉にかけて彼を馬鹿にしている訳ではない、ただ魔族全体の年齢層から見て彼はまだ大人になる年齢ではないだけだ。まあアトレーが赤ん坊の頃から世話をしているので多少の過保護はあるだろうが。


 そんな事を露も知らずにハイゼットは瞬間移動でミラジーノの居住している城へ飛ぶ。


 ミラジーノの公務室の扉の前にハイゼットの姿が現われ、巨大な金銀財宝で飾られた扉にノックをする。


 「は~い、入って頂戴!」


 ミラジーノの声がドアの向こう側から聞こえた。実際に声が部屋から聞こえているわけでなく魔力を使って扉の向こう側に届けただけだ。


 本人が出られない状況を察するとまだミラジーノの公務は終わっていないらしい。


 扉を開けて中に入る。彼女の趣味を反映した実にファンシーな公務室だ、いつ来てもこの部屋で仕事をする気にはなれない。


 自分には公務室にピンクや赤など明るい装飾をした机はいならい、そしてところ狭しと並べているヌイグルミも。


 小さい頃から父親である死神にファンシーなプレゼントを贈られ続けたので現在にいたるまで彼女のゴスロリを初め様々な可愛いもの大好きな趣味は作り上げられたとハイゼットは確信している。


 まっ、よそ様の事情はともかくとして机を見ると隣にエッセが立っていた、どうやらエッセは一番公務を早く終えたらしい。


 「早いなエッセ」

 「ようやくだからな。はやる気持ちは我にもある」


 機嫌が良さそうに笑うエッセ、そういう俺も上機嫌だ。ミラジーノの方を見ると忙しそうに羽根ペンをすばやく動かしていく。


 彼女の仕事は大変だ、俺の仕事も責任の重さとしては軽くはないが彼女は多種族を裁かねばならない。こちらに都合があるからといって相手の死に都合などない。


 「まだ終わらないのか?」

 「もう少し……あと数枚だから」


 一度もハイゼットの顔を見ず判子をポンポン押していく、この調子ならもう直ぐで終わらせられそうだ。


 「貴方は火あぶり二千年…こっちの貴女は餓鬼地獄に二百年の次は暗黒地獄に移項して……と」


 随分物騒な事をブツブツ言いながらミラジーノは最後の書類に判を押した。


 「終わった!!きゃ~凄いミラジーノちゃんやれば出来る!!」


 最後の書類を捌き終えたミラジーノは机から飛び跳ねて喜んだ。


 「おいおい、大げさじゃねーか?」


 余りの喜びようにハイゼットはミラジーノに呟く。それを聞いてエッセが顔を左右に振る。


 「そうでもないぞ。父君である死神がミラジーノのサファリへ行くのを阻止しようとして、部屋から溢れんばかりの仕事を持ってきたそうだ」


 うわ~ここまで娘馬鹿を持つとミラジーノも苦労するな。心なしか扉の向こう側から死神の魔力を使って覗き込む気配が感じられた。今頃ハンカチを噛みしめているだろう。


 うっすらとミラジーノの目には隈が浮かんでいた、彼女の根性にも感服しちゃう。


 うーんと固まった体を背伸びをしてほぐし、すぐ側に立っているハイゼットとエッセを始めてみる。


 「お待たせ」

 「おう」

 

 お疲れさんの意味を込めて返事を返したハイゼットは笑う、ミラジーノも笑い返して早速サファリに向かおうと……。


 「いけない!早くメイクとお外用の服に着替えないと!!」


 ちょっと……エッセが手を伸ばしとめようとするがミラジーノは扉に消えた、お外用って彼女の着る服はいつだって室内でリラックスするにはゴテゴテに飾っていてどれがお外用なのか?この男2人には見抜けない。


 とにかく彼女の身支度は遅い。残された二人は同時にため息をつく。


***


「お前がモタモタするから遅くなったじゃないか!」  

 

 予想の時間よりも大分遅れてサファリの大地を踏みしめた三人は赤子が暮らしている村から少し離れた場所に現われた。


 「煩いわね、女の子は色々大変なのよ!それよりアンタのその格好は何よ?」


 ハイゼットの服を摘んでミラジーノは言った。


 「おかしいか?普段の服だ」


 ミラジーノは爬虫類に似た尻尾をブンっと振って不満を表現する。


 「おかしいってアンタお葬式でもするの?髪も黒っぽいんだから黒い服ばっかり着ると夜中に暗殺しに来たアサシンみたいだから止めなさいって言ったじゃない?」

 「ほっとけ」


 黒を好むハイゼットは鼻を鳴らして顔を背けた。


 「そんなことより行くぞ」


 エッセは後ろでじゃれる2人を置いて歩き始める、魔力で自分の背中にある赤黒い羽を消した。


 今更ここでミラジーノと口論する気は無いんでハイゼットも角を魔力で角を消し、ミラジーノも自分の尻尾を隠した。


 こうすればただの人間に彼らは見られるだろう、魔力の源である大切な場所を隠しても問題ではないので大丈夫だ。


 「それはそうと、どんな子に成長しているだろうな?」


 ハイゼットは何度赤子が大きくなってどんな人間になっているかと想像してきたが、最初の赤子のイメージが強くてイマイチ想像しきれない。


 「きっとモテモテね、隣の巨大な王国で戦争をしているから…もう英雄になっているかも」


 ミラジーノも楽しそうに手を頬にあてて喜ぶ、平和が一番だがそれがサファリの事情なら仕方がない。でも赤子が戦死なんてしないと魔力を与えた者として絶対の自信があっての発言だ。


 「ああ、恐らくは人々の憧れとして存在しているだろう」


 エッセも誇らしげに語る、あれこれ三人が言っているうちに赤子のいる村についた。


 あっちは自分たちを知らないので直接会うには問題が起きる、ここは田舎の村だよそ者がくれば直ぐに分かる。物陰に隠れ遠くから赤子であった17歳の子供を捜すと、それらしい青年が1人いた。


 「あれ!」

 「大きい声をだすな気付かれる」

 「うわ~大きくなったな」


 最初に見つけたのがミラジーノ、注意をしたのがエッセ、最後にシミジミと見つめているのがハイゼット。


 赤子は立派に成長していた、赤子の時から変わらず新芽のような緑色の長めのセミロングの髪にキラキラ大きな金色の瞳。


 肢体はのびのびと成長して均等の取れた体格、足も長く田舎くさくない爽やかな青少年になっていた。


 顔立ちだって優しそうで誠実そうな顔をしており、大国の街に暮らす貴族の格好をさせても見劣りはしない。


 好感度が持てる美青年になっていた、この小さな村ではもったいない輝きを持つ。


 額には自分たちが与えた宝玉、その三つが太陽に反射して光っている。赤子を思って人間に対して宝玉を気に留めないように細工をしたので宝玉がついているからといって奇妙がられないようにした。


 物陰から隠れている自分たちの前を青年が歩いていく。


 想像以上に立派に育った赤子に三人は驚いた、そして其れと同じくらい……牛を一頭担いで歩く青年の姿にも驚く。


 「なんで…牛を担いでいるんだ?」


 ハイゼットがエッセに聞いてみる。


 「知るか、それ以前に何故こんなにも平和なのだ?」

 「私だって知らないわよ」


 おかしい、と三人ははてなマークを沢山浮かべた。確か隣の大国は戦争中、その影響が必ずくるはずだ。そしてモンスターの噂もあるので街や村は警戒しているのが当たり前なのだが。


 それだけの努力はしていきたのに…この村には警備兵どころか柵一つ建っていない。


 もう一度力を与えた青年を三人は観察を続ける。


 「アトラス!」


 村の人に呼ばれた青年は牛を抱えたまま振り返った。どうやら名前はアトラスらしい。


 「やあ、おじさん。はぐれた牛見つけてきたよ」


 よっとなんて言って軽がる動作で牛を地面に降ろした。


 「いつもすまないね、アトラス」

 「別にお安い御用さ」


 ニッコリと笑って返したアトラスは後ろから近づく違う村の人に振り返った。


 「アトラス!手伝ってくれないかい?」


 次にアトラスに話しかけたのは年配のおばちゃん、それをアトラスは嫌な顔一つせずに訊ねた。


 「なに?何か困ったことになった?」

 「そうなんだ、村の外れにタオの花が咲いてね。困っているんだよ」


 タオの花は猛毒は持っていないが雄しべの花粉に触れると痺れをもたらすから重装備をしないと駆除はできないが、どんな猛毒も効かないアトラスにはただの花だ。


 「それは大変だ、僕が除去するよ」

 「ありがとうアトラス」


 正しい青少年の鏡のような子に育った。


 「あっそうだ、コレ」

 「なんだい?」


 おばちゃんにアトラスは子袋を差し出す。


 「森で生えていた薬草だよ、ジョウの実だから腰によく効くから」

 「本当にいつも有難う」


 受け取った年配の女性は心からの感謝にアトラスは照れくさそうに笑う。


 ジョウの実は少しだけ魔力があるので近づくと耐久性のない者に幻覚を見せて身を守る珍しい草だった。エッセが与えた魔力に屈しない力のおかげでアトラスは危険なく貴重な薬草を手に入れられた。


 でも違う、こんなの違う。


 遠くで三人はアトラスを観察していて愕然とした。


 牛を捕まえるために「何者にも負けない力」を与えたわけじゃない、ついでに「毒されない体」にして雑草を排除する為でもない。クスリの調合のために「尽きない魔力」を授けた覚えもない。


 俺たちの想像では王の筆頭騎士とまでは望んでいなかったが、村一番の剣士とか!


 その辺りを期待していた、これではただの力自慢の村人Aじゃないか!?いえいえ平和は大いに結構、でもちょっと…。


 何か違う!!


 「もぐりこませた我の部下に話を聞こう」


 エッセの提案に2人は頷いた、そうしようもしかしたら偶々かもしれないと微かな希望を残して。


やっつけ仕事になってしまいました。次はもっと内容のある小説を書きたいです(泣)

とにかくやっとこれから本来のストーリーが進められそうです。

青年の名前はアトラスにしました、これもちょっと知っている方なら何処から取ったのか直ぐに分かるでしょうね。

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