可愛いベイビー
第二神豊穣の女神アリストは微笑を顔に乗せて三人を歓迎してくれた。だたエッセと目が合うと苦笑いに変わる。彼女の旦那は現在エッセの城の庭で絶賛引きこもり中。
数えるのが馬鹿らしいほど自分の旦那が破壊神の庭に行っているのだけど少しの申し訳なさはある、エッセも同じく苦笑いをもらした。
「お邪魔するよ、あいついる?」
魔族であるハイゼットがアリストに近づき、馴れ馴れしい口調でアリストに話しかけるがアリストは全く気にしていない。
この三人は赤子の頃から知っているので人間にしたら遠くに住んでいる親戚感覚だ。特に魔神とその子供は最高神と仲がいい。
「ええ、主殿にいらっしゃるわ。それにしてもお久しぶり…皆さん」
女神アリストは三人に順番ずつ抱きしめて挨拶をした、慈悲深い眼差しに人間ならば膝をついて彼女に賛美歌のように称える言葉を心から贈るだろう。しかし、実態は旦那を蹴り飛ばして闘神をアルフィードから突き落とすようなお方。
貴方も女性は見ためで騙されないように。
アリストを先頭にして三人は中へ入っていく、魔界と違ってアルフィードは大地は存在せず雲の上に建つ巨大な城だ。
城の大きさが天界の全てなために大陸ほどの巨大なで尽きない城の中に湖も森も恐らく地球にあるもの全てが備わっている、それが天界。
空中に浮く橋の下は穢れのない雲海が広がる、たまに来ると幻想的な光景だけどやっぱりハイゼットは大地に足をつけている方が性に合っていると来る度に思い起こす。
所代わって今日アルフィードに第十五神として選ばれた人間がアルフィードを緊張しつつ廊下を歩いていく、外見は特に見栄があるわけでもない平凡な親しみやすい朗らかな男性だ。
第十五神は人間から選ばれる、信仰心が厚くそして何よりも善行を多く残した所謂いい人だ。その人たちは死後に人材を選択する神に選ばれて神の中でも最下位ではあるが迎え入れられる。
時間はいくらでもあるので才能さえあれば第十一神までは望めば位はあげられる、といってもここにくる人間に出世欲など無縁な話ではあるが。
道案内をする先輩の神に連れられて主殿の側にある召し上げられた人間を神に変転させる場所に連れられている途中だ、生前は老衰で亡くなったのだけどこのアルフィードでは最初に望んだ姿を選べる大体の人は若かった頃の姿を望み男性も老人から二十歳前後の姿を望んだ。
「緊張します、70年生きてきたのに…お恥ずかしいのですが」
先輩の神様はにこやかに笑う、この人も150年前に人間から神へ召し上げられた元人間だった。
「分かります、でもご安心を何も恐れることはございません」
神になる人間を案内するたび初々しさに心を和ませてしまう、自分もあんな感じだったから。
案内される男性の前に神々しくも美しい女性と……天界アルフィードには似合わない三人の若者が歩いていく。
女性はいいとして若者三人は角を生やした青年と尻尾を持つ少女に赤黒い羽を持つ男だ。どうみようとしても魔族。
「あっあの方々は?」
案内していた神が何でもない様に。
「魔界の魔王ハイゼット様と冥王ミラジーノ様と覇王エッセ様ですね珍しい、ハイゼット様は最高神に構われるので余りいらっしゃらないのに」
最高神が魔王に構うって何?それ以前にここは神聖な天界であって彼らは敵対する邪悪なる悪魔の総督ではなのだろうか?しかも女神と思われる方と仲良くお喋りをしている光景に唖然とするしかない。
そうしていると四人に1人の若い男性が近づいてき、ハイゼット魔王に抱きついた。
「久しぶりだね、何でもっとアルフィードに来ないの?まあ話はベットの上でしようか?」
「相変わらずのセクハラ野郎だな、お前に会いたくないからだ!」
男の外見年齢は二十歳後半で白い服に天然のフワッフワッの薄青色の髪の優男。見た目は美男子だが性格はとても残念はお方でもある。
そしてこの男こそ天界の最高神だった。
エッセ並みに背の高い最高神に抱きつかれると180センチの長身をもってして、頭一つ分違うハイゼットの頭をグリグリなでられる。
「冷たいな~俺はお前の父親なのに」
口を尖らせて顔だけしょんぼりとした表情をつくるが、ハイゼットが食って掛かる。
「父親じゃなくて名付け親だ!!何度も言わせるな!しかも魔界で一番多い名前をわざと選びやがって!おかげで当時の役場が大混乱したぞ!」
そう、ハイゼットが生まれたときに魔神から名付け親の権利をもぎ取った最高神は魔界で一番流行った名前を確信もってつけた、ハイゼットという名前は先々代の魔神の名前で魔界の神になると個人名ではなく神とよばれるが王のうちは個人名を呼ばれる。先々代の魔王がハイゼットなので男の子につけたい人気のある名前だった。
そして最高神がハイゼットの名前を付けたことによりハイゼット以外の者には名乗る権利なく改名を迫られ魔界の役所は大混乱をきたした。
今も魔界の役所の方々はあの時は死ぬかと思ったと振り返って呟く。
「も~可愛いな~お前たちは」
今度はミラジーノまで腕を伸ばしハイゼットとミラジーノを抱きしめる、エッセはさり気なく距離をとって最高神から逃れるエッセを掴み損ねた手がプラプラとミラジーノの肩で揺れていた。
最高神にとっては三人の王など孫に等しい、魔神や破壊神や死神より年上なので魔界の神ですらわが子感覚だ。
「そ・れ・よ・り!!」
ハイゼットとミラジーノが抵抗して最高神の体を押し返しハイゼットが訴える。
「許可をくれ許可!もう知ってんだろう?魔石の封印に耐えられる人間が生まれたのを!!」
「嗚呼、やるのは構わんが掟はわかっているな?」
2人を離した最高神はふわりと笑う。それに三人は頷く。
「分かっている、我ら魔族と天界の掟。一つ人間は殺すな。二つサファリで魔獣化するな。三つ永久中立区域の住人を殺すな。四つ人間に恋をするな」
エッセが腕を組んで静かに言う、最高神は満足そうに頷く。
「お前たちのやることを天界は反対しない、そもそも今のサファリは異常だ。それを気にかけているのは天界も同じ……誰かが何かをしているのは確かだな、それはこっちで検証してみるからお前たちは自作自演の英雄を作るといい」
魔族がサファリに召喚される数が近年まれに見るほどの数に上がっている。そりゃ人間同士の戦争で魔族と契約して戦力を増やすのは昔からの常套手段だが戦争が起きる様子もない。
たまに誰かが魔界との繋がりを見つける術を発明する、そいつが魔族を召喚する行為を商売にしていたら簡単に魔力を欲しがる者どもはどんな金を払っても手に入れたいだろう。
そいつらを一々相手にしていたらキリが無いので元栓を締めるために人間が魔界ソニカとサファリの繋がりを封印してもらわないと困るのだ。
主に三人の魔界の王が。
「じゃあ許可の証をくださいな」
ミラジーノの手から魔界の三人が人間に関わるのを正式に許可をしたという承諾書をだそうとすると、最高神は。
「じゃあチューしてあげよう、それがあか…アガッ!!」
「全く最高神さまはご冗談がお好きなのですから」
女神アリストが最高神のわき腹で一番柔らかいところを殴った、妙なくの字になる最高神を笑いながらも冷ややかな視線を送っている。
いえーい!とアリストに喝采を送る三人を遠くから、まだ神になっていない新入りとその案内人の神が見ていた。
「……あのお方はもしかして…」
頼むから最高神なんていわないでくれと言わんばかりの顔の新入りにニッコリと案内人の神様は笑い。
「天界最高の神でいらっしゃいます、いつ拝見しても面白いお方ですね」
「は…はあ」
かつての自分もこうやって驚いたものだと案内をしていた神様は自分の初々しい姿を思い出しまた笑った。
***
痛みに呻く最高神から許可書の承諾を証明する書を手に入れた三人はまだかまいたい最高神と女神アリストに別れを告げて早速サファリに飛んだ。
ミラジーノが魔界ソニカと人間の住む世界サファリを隔離できる人間の住む場所に瞬間移動する。
三人がついた場所は木造で出来た小さな家の中、窓の外はのどかな田舎の風景。街ではなく村のようだ、その中でも特に裕福でもなくごく一般的な家の廊下に三人は現れた。
エッセが掌に魔力を貯めてフッと息をかける、魔力は粉のように家を漂った。それは目的の人物以外は眠る魔法だった。
「ここよ」
ミラジーノが指をさして一つの部屋に三人は進む、ドアを開くと直ぐにベビーベットが見えた。側には母親がエッセの魔法で眠っている。
「ちょっとゴメンね」
ハイゼットがベビーベットの横のイスに座って眠る母親を抱き上る、母親の膝には編みかけの赤ちゃんサイズの靴下が落ち母親を慎重に長イスに運び、近くにあった膝掛けをそっとかけてから編みかけの靴下をテーブルに置いた。
「見ろ、ハイゼットあどけない顔をしているぞ」
ミラジーノとエッセはベビーベットに顔を向けて夢中で見ていたのでハイゼットもベットに近づいた。
ベットには世界中から祝福されたかのような生まれて間もない可愛いエンジェルが其処にいた。
「赤ん坊だ!うわ~俺初めて赤ちゃん見た~ちっちゃいんだな」
魔界は寿命も生態系からして強い種族のために出産率はそんなに高くない、例え生まれてもあっという間に赤子から幼児へ成長するし愛情深い両親が外へ出すのも嫌うのもあり親戚の多い者意外は肉眼で赤子を拝めるのはそう多くない。
特にハイゼットのような魔王では出産祝いなどに恐れ多く呼ばれるはずもなかった。
桃色のほっぺを緩ませて笑いかける赤ん坊に三人の保護欲は簡単に刺激された。
赤子は緑色の産毛に、こぼれそうなほど大きい金色の目は可愛いという単語しか許さない。
ミラジーノが赤ん坊に顔を近づけ、赤ん坊の魂を探る。
「間違いないわ、この子が封印に耐えうる魂の持ち主よ」
顔を上げたミラジーノにハイゼットとエッセが頷く。
「では我らの魔力の一端を赤子に注ぐぞ?」
エッセが指を赤子の額に乗せると赤子は不思議そうに自分の額に乗った指を見上げた。
「永遠に尽きない魔力を授ける、我の魔力はどんな人間の魔法をも吸収し魔力によって滅びることを禁止する」
エッセが呟きソッと指をのけると赤黒い小さな宝石が赤子の額に丸い形でついていた、満足そうに頷くと今度はミラジーノがエッセと同じように額に指を乗せ。
「永久に毒されない肉体を授ける、私の魔力はどのような病も毒も呪いも体に受けつけずそれによって滅びることを禁止する」
エッセと同じようにミラジーノも指をのけるとエッセのつけた石の隣にちょこんと黄色い宝石がついている。
「最後は俺だな」
ハイゼットも2人に続き、赤子の額に指を乗せた。赤子は「あ?」と声を上げたが笑って言う。
「無類なき力を授ける、俺の魔力は何があろうと強くあり続けいかな災難であろうとも敗北を禁止する」
指をのけると紫色の宝石が二つの宝石の上にチョコンとつく、ハイゼットはゆっくり指を赤子から離そうと動かすと赤子がハイゼットの指を掴んだ。
柔らかく微笑む赤子に三人はキュ~ンとなった、今なら自分たちを子供のように可愛がる親や最高神の気持ちが分からなくもない。
「また17年後に会おうな?」
名残惜しいがまだ用意する準備がある、人間の17年は長いかもしれないが自分たちには瞬きでしかない。
ちなみに赤子に魔力を注ぐのは魔族との契約ではないので死後この子が地獄に落ちる心配は無い。一般の契約は魂と魔族の魔力が一体化するがこの子には宝石から魔力が流れるので魂は魔族の魔力によって汚れない。
そして三人には赤子の未来を自分たちで操作する罪悪感はもちろんあった、でも英雄として惜しみない栄誉と功績をこの子に捧げる。その為なら最高神にだって殴って言うこと聞かすから協力して欲しい。
魔界を隔離するのは善良な人間に対しても利益にもなる人間にとっては魔族との契約など災害だ。
こればかりは君に縋るしかないので許して欲しい。
ゴメンと呟きハイゼットは瞬間移動の魔法で赤子の指を掴まれたまま姿を消した、赤子は掴んでいた指が消えたのを不思議そうな顔をして自分の掌を見つめる。
ミラジーノたちもハイゼットに続き姿を消す。
暫くして赤子の母親が目を覚ます、いつの間に寝たのだろうと長椅子から体を起こし上機嫌に笑う赤子の声にベビーベットを覗く。
「あらあらご機嫌ね?……これは何かしら?」
母親が小さな宝石のようなのが額に三つついているのをなぞると、赤子は嬉しそうに声を上げて笑った。
チートの力を授け後は成長をまつ三人です、でも世の中上手くは行かないので困りますね




