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運命は信じないと感じません bvシビリアン




 白い仮面の男は静かに周囲を窺うと、王の隣に座る姫を見つけ笑みを深くする。


 誰もがこの男が、魔族に関係している者なのかと身を堅くした。


 仮面の男は礼儀正しく、姫の正面を向くと手を上げ、そのまま紳士的にお辞儀をする。


 「お待たせした姫君、この魔王……(名前どうしよう?)」


 ちょっと考えてなかったハイゼットに念話でエッセが。


 ≪ストーリアでいいだろう?≫


 ストーリアはハイゼットの先々々代の魔王の名前。つまりはハイゼットのひいお爺ちゃん。


 ≪サンキュー、もち採用!≫


 顔を上げて名乗る、即興の名前だと知られないように繕いながら。


 「ストーリア……今後ともよろしく」


 唯一見える口元が動いたのに気付きアトラスは、仮面の男へ走り近づいた。


 気配でアトラスは只者じゃないと分かり、何かをされる前に取り押さえようとしているのだろうが。


 仮面の男のこと、ハイゼットは内心アトラスにため息をこぼす。


 (戦法も戦術も無いな…猪か?)


 平和な暮らしをしていたアトラスに其れを求めるのは酷とわかっているが、もうちょっと対処の方法があってもいい。


 余裕があるときに戦いのいろはを教えねば、と考えつつも片手をアトラスの前に出す。


 時間が止まったようにアトラスの体は、不安定な体制で停止した。


 そしてハイゼットが軽く指でアトラスの方向を弾くと、アトラスは柱まで吹っ飛ぶ。


 受身がとれず、背中を柱に打つが本人はピンピンしてまた立ち上がろうとしている、それをハイゼットは再び手でアトラスを止める。


 一瞬だけハイゼットは幼馴染のエッセとミラジーノに視線を合わせた。


 ≪一応、建前でも襲い掛って返り討ちにあえ≫


 ハイゼットが念話で2人に伝えると、ミラジーノとエッセは小さく頷き。


 エッセは王と会うので武器は預けていたから、近くにいた呆然としている兵士の腰から剣を奪うとハイゼットに切りかかる。


 手加減をしなくても普通の武器なんて魔族に通じない、指で剣を挟んでエッセの剣を止めた。


 ハイゼットとエッセの顔が至近距離で目が合う、エッセは視線で「やれ」と合図し。


 エッセの体をハイゼットは魔力で吹っ飛ばす。派手に飛び、床に叩きつけられ体を滑らせてエッセの体が止まったが本人は痛みすらない。


 だが、周囲には大男を簡単に倒す凄い光景に映っただろう。


 ≪おつー≫


 吹っ飛んで起き上がらないエッセにハイゼットが念話で声をかけた。


 ≪ああ、終わるまで床で唸っている。ミラジーノも適当に倒されろ≫

 ≪え~ハイゼットにやられるのは何か癪ね≫


 ちょっと不満そうな声でミラジーノが答えたが。


 ≪だったら魔王役お前がやれ!この格好恥ずかしくて堪らんわ!!≫


 ハイゼットは2人の会話に割り込む、仕方なくミラジーノは見せ掛けだけの魔法を発動しようとする。


 ≪レディなんだから、優しく倒しなさいよ≫


 やれやれ、レディを強調するならば其れらしい振る舞いを普段からしてくれ。


 今なら心で呟いても彼女の杖が飛んでくる心配は無い、でもちょっと怖い殺気をミラジーノから感じたのは気のせいだと思いたい。

 

 ハイゼットがため息をこぼしたいのを我慢しながら、束縛魔法をミラジーノに手を向け、仮面の男の掌から出現した光りがミラジーノに注がれ。


 光りは輪になり鎖のようにミラジーノの体を拘束してミラジーノはその場に座りこんだ。


 さて、最後は自分の幻影だ。じゃハンサムな俺、豪快にやられてくれ。


 自分で作り出した幻影には実体がある、魔力で作られてもちゃんと触れる仕様だ。


 人間の魔道師ならば早々と出来ない芸当を、魔王であるハイゼットは簡単にやってしまうから面白ない男だ。


 体はうごかさないまま魔力を操り、本体に魔力の塊である自分の瓜二つの幻影が拳一つで立ち向かってきた。


 服についた埃を掃うごとく、手を動かすとハンサムな俺の姿をした偽ハイゼットがエッセと同様に床に転がる。


 よしよし、全員倒したな。でも魔王の俺に立ち向かってきただけでもマシだ、アトラスたちは。兵士たちは恐怖に足がすくんでいるので王様の評価は兵士たちよりは高いと思いたい。


 まっ兵士たちは実戦なんてやったことないだろうから、無理も無い。


 邪魔者は倒した仮面の男は笑みを含んだ声で言う。


 「昨晩の手紙通り姫はいただいていく」


 姫に向かって一歩踏み出したハイゼットは、足を動かした瞬間に直ぐ近くに人の気配を感じて咄嗟に魔力で弾いた。


 (やべっ!!)


 全てを理解する前に行動してしまって、普通の一般兵なら骨まで残らない威力の反撃に内心ハイゼットは冷や汗をかいた。


 演技をしているエッセとミラジーノでは確実に違う。だったら相手は人間だ。


 やばいじゃ済まされない、人間を殺すのは魔界と天界との誓いの掟によって許されていないので完全なる此方の過失。


 大問題に発展しかねない行動に、誰だったのかと顔を向けるとアトラスだった。


 (嘘だろう…たいした束縛魔法でなかったにしても……俺の術を脱出したのか?)


 手加減できなかった魔法をくらっても、アトラスは石に躓いて転んだ程度のダメージしか受けていないのにホッとする。


 流石は俺たちの愛し子、素敵過ぎる。


 弾かれてまた隅に投げ出されたアトラスは再び起き上がった。


 (思っていた以上にアトラスの体は俺たちの魔力が適応している)

 

 アトラスが赤子の頃に与えた宝玉が、まだ戦いの基礎すら知らないアトラスに順応している。それはつまり本来のアトラスが持っていた才能であり素質だった。 


 ただ単に封印に耐えうる魂という理由だけで選んだが、なかなか凄い人間に三邪王は力を授けてしまったのかも。


 仮面で見えにくい眼を細めて、ハイゼットは少しだけアトラスに畏怖を感じた。


 これからどんどん経験を積んで、強くなるアトラスにいくら魔王の自分でも油断はできなくなるな…と、心でハイゼットは呟き。


 先ほどの配慮も考えて一段上の束縛魔法をかけ、今度こそ動けないように床に縫いとめた。


 表面的には余裕のある姿を晒しつつ、ハイゼットは姫を見る。


 アトラスがはっと姫のほうを向くと、姫は竜巻のような風の螺旋に抱き上げられて、イスに座っていた姫の体が浮き上がっていた。


 パチンとハイゼットが指を鳴らすと竜巻と姫は消え、ハイゼットの腕の中に出現。


 これが本当のお姫様抱っこ、お姫様を抱っこしているのだから正真正銘だ。


 なんてシリアス展開を演じているハイゼットが言えるはずもなく、床に縫いとめられているアトラスに軽蔑を込めた声で。


 「惨めだな…この程度の力を持った者が国王の縋る救世主か?私はヴァーサにいる、姫を取り返したかったらくるがいい」


 う~ん、使い古した台詞。なぜこの辺で悪者は自分の住処を白状するのかな?っていつも思う。


 でも言わなきゃ、アトラスが来てくれないからワザとらしくても前フリだけは怠らずにお姫様を抱き上げた。


 因みにヴァーサはエッセが落札した城がある本拠地、アトラスが暮らす国とは世界を半周するほどの距離がある。


 それまで色々なトラブル、葛藤、決断をして封印に耐えうる魂を鍛えてくれ。


 その為ならば俺はお前に憎まれても、そ知らぬ顔で笑っていられるから。


 ちょっと悲しくなったが最後まで悪党らしく、お姫様を抱えたまま、ハイゼットは瞬間移動をして姿を消す。


 ちゃんと魔王っぽい高笑いも忘れずに。


 突然現れた魔王と名乗る男に、姫を攫われ逃げられてしまった謁見の間は静まり返る。


 消えた姫の事実が残された者たちに重くのしかかった。


 しかも、なんの抵抗もできまいまま。


 アトラスにとっては人生ではじめての力をぶつけて負けた。体はもう自由になるが起きずに、口の中で何度も魔王ストーリアの名前を繰り返し呼び、拳に力を入れた。


***


 一方、ハイゼットがお姫様を抱えたままヴァーサの穢れた島にある、城の一番綺麗で可愛い部屋に瞬間移動して近くにあったベットにお姫様をゆっくり丁寧に下ろす。


 大きなベットだお姫様が後3人いても余裕があるほど。


 そこにお姫様を残してベットから降り、背を向けハイゼットは手を掲げた。


 お姫様が行動する可能性がある場所には瘴気を祓わなくてはならない。


 ここは普通に瘴気が漂っているので、長く暮らしていると人には害になるので浄化をした。


 (うん、これで普通の人間であるお姫様も暮らしていける)


 でも、どうしようかな?お姫様の暇つぶしは…アトラスがこの島にたどり着くのは一年くらいかかるだろうし。


 流行のファッションはミラジーノに任せて、お姫様が気持ちよく暮らしていくには可愛い従者でもつけるか?そんでちゃんと勉強をみてくれる家庭教師に、お姫様の国オッティには無い本を揃えて…。


 指折り数え、今後の予定を頭に思い描く。


 アトラス自身の強さは心配しなくても、移動手段が馬か船が一般的なサファリでは其れくらいの時間はかかる。


 野菜を作るのが趣味な王様だから、落ち着くように庭を増築するかな…と考えながら、震えているであろうお姫様を安心させようと振り返ると。


 ベットのお姫様は自分の服を脱いでいるではないか。


 上半身を支える背中の紐を解き、手で押さえないとお姫様の高貴なお胸が見えてしまう。


 「ちょ……っなにしてんの!!?」


 ベットに上がり、急いでお姫様を取り押さえる。


 どうした?怖さの余りの奇行か?


 露出した肩の部分のドレスを引っ張り何とか隠そうとする。お姫さまのドレスを引っ張っているのだ、近距離でお姫様と目が合う。


 ハイゼットはお姫様の目を見て怯んだ。


 その目は…ちょっといけない色を含んでいる気がするのは男としての邪まな本能か?違う、本当に顔は赤く染まり目は潤んでいる。


 ああ、あれか…身を捧げるので命ばかりは…的な?


 「魔王さま…」


 か細い声でお姫様の口から言葉が漏れた。


 オーケー大丈夫、君に危害を一切加える気は無い…。


 って?何で俺、抱きしめられているの?待って展開が読めない、分からない。さらに胸が当たる、柔らかい。


 「どうぞ、私のたった一つの操を捧げます!!」

 「落ち着こう!まずは話し合いから始めましょう!!」


 俺とお姫様はほぼ同時に叫んだ。


 「これ見て、ほら!!」


 仮面と自分の長い髪を覆い隠していた白い羽根のベールを取る、お暇様はそこには謁見の間に居た男の1人に驚く。


 「謁見の間で俺と会ったでしょ?実はね…」


 素顔を見せれば驚き止ってくれると思っていた、騙したのか!?なんて怒るのが普通の人の反応なのだけど。


 「ああ…素敵、魔王さまがあの剣士さまだったんですね。素敵な男性だと思っていましたわ」


 どうやらハイゼットはお姫様のストライクゾーンだったみたい、エッセもいい男だがちょっと初対面には大きな体格なので人間には敬遠されるかもね。ゴメンねーモテて?


 じゃなくて!!


 「お姫さまぁ!ちょっと落ち着こうか!?誘拐してなんだけど、俺「が」さっぱり状況が把握できないの」

 「シビリアンです、私の名前はシビリアンと呼んでください魔王さま」


 うっとりと見つめられても、ここで人間ならば据え膳は男の恥な、欲望を抱くだろうがハイゼットは魔王。


 魔族でも特殊に1人で子供を作れつがいを必要としない王であり未来の神、そもそも性欲というのが長命な魔族には薄い。


 ハイゼットの三大欲望である「性欲」「食欲」「睡眠欲」の優先順位は「睡眠欲」5割「食欲」4割だから残りの1割がやっと「性欲」がくる。


 第一お姫様…シビリアンにその感情を抱く以前の問題で。恋愛感情などの感情があまりないハイゼットとしてはカモーンな女性は引く。


 「魔王さまぁぁぁ!!」


 摩訶不思議な一連の行動に混乱したハイゼットが硬直しているだけなのだが、シビリアンには黙って自分を見つめているにしか見えなくて、ハイゼットの首に腕を回して後ろのベットに倒れた。


 ベットに共倒れになる2人、ぞわッと鼻をくすぐる女の香り。


 まずい、何かがまずい!


 魔王なのに本気で狼狽していると。


 「なにやってんの?あんたら」


 地を這う声がハイゼットの背に投げかけられる、ゆっくり首を動かし後ろを振り向く。

 

 黒いオーラを背負い、ザ・冥王の顔をしたミラジーノが立っていた。


 そして少し後ろには呆れ顔のエッセ。


 「何やってんのか聞いているのよ!!私は!!」


 いえ、違います。これはどう見ても俺がお姫様を押し倒しているにしか見えませんが。


 「話を聞いてくれ!!」


 弁解しようと努力はしてみる、でも今のミラジーノの顔を見ていると心が折れそうな形相だ。


 「この不潔!!」


 自分から問うたクセに、掌に手加減の無い魔力をためてハイゼットに向かって投げた。逃げたらシビリアンに当たるので逃げれない。


 南無…


 エッセが心で呟くと、轟音が鳴り響いた。


 お城を警備していたさ迷う魂が入ったモンスターたちが、地震だっと騒ぎ立てるほどの揺れが城を襲う。


急展開なお姫様です。

次の回ではシビリアンが何を思ってハイゼットを押し倒したのかの、説明をさせてもらいます。

仕事で時間が無いと書きたくても書けないので、頭に流れるストーリーとかけ離れていくのは気のせいでしょうか?いや、私の未熟の責ですね、分かっております。

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