自作自演魔王ハイゼット登場
初老には若く、中年には歳をとった印象のあるオッティの国王は、今しがた報告されたモンスターが現れて、村を襲撃の報告を受けていた。
国王は報告を一字一句逃さず、渋い顔をして聞いている。
そりゃ、そうだ。楽園の様な国、いや長い歴史で戦乱や混乱が無かった国に近年まれに見る壮大な被害があったのだから。
現国王もまさか自分の代でモンスターが村を襲撃する事件に遭遇する、なんて思っていなかった。
国王が質素ながら上座の玉座に座りいる、謁見の間は家臣数十名集め、重い雰囲気だ。
誰もが今後の対策と被害の検討に頭を痛めている、平和ボケした国でも人々の長に立つ者たちだ。一度の襲撃で全てが終わるなんて、能天気な事を考えている者は1人もいなかった。
「国王、兵士を集め、軍力を高めるのが最優先かと…」
玉座に続く一本のカーペットに並び立つ、1人の家臣が考え込む国王に進言する。
それでも国王は眉を深くして思案にくれるのだ、この国はドがつくほど田舎。正直のところは兵士になる若者より老人の数が多い。
「困ったのう」
大きなため息をつき将来を憂う国王の前が、歪んだ。正確には目の前の空間が歪み、そこから黒い大きなものが飛び出してきた。
謁見の間にいた全員が硬直する、自分の常識を超えた現象が起こっているのだから無理は無い。
大きな蹄の音を立てて、巨大な馬と人骨で出来た死神のような白骨が国王の前に降り立つ。
国王を守る兵士が動こうとすると、巨大な馬が血走った目で睨みを効かせて兵士たちをすくみ上げさせた。
【…あいっっっ!!!】
上ずった声で、人の白骨が手にしていた何かを国王に投げ、馬は国王に向かって嘶くと、また何も無い空間に向かって走りだした。
嵐のような異形の来客に家臣と国王は硬直して、人の形をしたガイコツと馬と呼ぶには禍々しい動物にされるがままだ。
国王の玉座に一列に並んでいた家臣たちは慌てて、転がるように道を空けると馬は間を高速で走り、消えた。
ガイコツが消えると先ほどの光景が、夢見たいに静かになる。
「ご無事ですか!!」
いち早く我を取り戻した兵士が国王に近づく、国王も始めてみるモンスターに身を震わせているが、投げつけられた何かを思い出し手にとってみた。
キッチリ封を閉められている一枚の封筒、開けても大丈夫だろうかと思い戸惑うが、1人の忠義ある家臣の自分が開くと申し出て緊張した手であけて読み上げた。
家臣が読み終えた直後、国王は大きな声で村のモンスターを退治した青年と旅人を呼び寄せよ、と叫んでいる姿をエッセが作り出した水鏡で見ていたハイゼットを初め、ミラジーノとエッセは計画が上手くいったので三人で同時にハイタッチをして喜びを分かち合った。
次の日の朝には案の定、疾風の馬に乗った騎士がアトラスと旅のものへと、城への招待状を持って参上した。
表向きにはモンスター討伐の栄誉を称えたご招待だが、城にモンスター数体と互角に戦える強い者を招きたい下心つきなのをハイゼットは口元を隠しながら笑った。
騎士は早く城に招きたいので玄関で待機して、アトラスは不思議そうな顔で招待状を読む。
彼自身はあの程度の戦闘など、苦労には含まれない。とりあえず王様の命令なので無視をするのは、流石にまずいのは分かる。
アトラスは朝食のパンを焼き終えて、旅人のハイゼットたちの分までテーブルに並べ、テーブルに先に席ついた祖父を見る。
まだハイゼットたちは部屋から出てきていない、食事の準備が終わるまでそっとしておくつもりなのでアトラスは三人が何をしているのかは全く知らない。
「どうしたらいいと思う?爺ちゃん」
年老いた祖父は余り昔ほど食事を取らない、大抵はお茶と多くない食事で済ませるだけだ。最近特に年老いて食が進まないのをアトラスは心配している。
本人に直接そんな事を言ったら怒られるが、本心としてはもう代わりに働くので家でのんびりとして欲しい、しかし祖父は今日も家畜の世話や畑の手入れをしにいく。
そんな祖父を置いて、遠くへ行くのはアトラスにとって重大な決断だった。
「こんな誉れ高いこと早々ないぞ?一人だとお前だと心配だが、あの旅の方も一緒なら大丈夫じゃな…行っておいで」
年老いても尚まだ強い眼差しの祖父に、アトラスは頷いた。
この村には別に不満が無いが、遠くへ行くのは実は無い。だって毎日の仕事で忙しく、行く理由が無いと城まで行く機会はない。
これもいい体験だと祖父に背中を押されて、アトラスは城への招待の手紙をもったまま昨日出会い泊めた三人の旅人がいる部屋に向かって歩き出した。
旅人に変装している3邪王の皆様は、その頃アトラスから借りた部屋に魔力で防音をして騒いでいた。
「だからこっちのほうがいいでしょう!!!」
主にミラジーノ声が響く、そして。
「絶対嫌だ!!なんでそんなもん着なきゃならんのだ!!」
ハイゼットがミラジーノに反論するのをイスに座って眺めているエッセ。
ミラジーノの手には純白のロングコート風な軍服に似て、尚且つ金の刺繍が施されている服をハイゼットに突きつけていた。
これは自作自演で演じる魔王コスの衣装だ。勿論ミラジーノ作、最初はハイゼットが自身の服を持ってきて見せた所にミラジーノが猛反発した。
理由は簡単彼女のセンスに添わなかったから、そして黒を好むハイゼットの今の服と魔王コスの衣装が、そうも変わらないに関してだ。
ハイゼットとしては、ヴィジュアル系のような衣装など絶対にお断り、しかも全身白を基調としているのでハイゼットの趣味には最初から気に入らない。
2人は子供のように言い合う、エッセは面倒そうに眺めてたが足音が廊下からするので2人を制して、ドアを開けた。
扉の向こうには、思いつめた様子のアトラス。今魔王コス(予定)の服を見られるのは歓迎しないから後ろの2人は慌てて服を片付けていく。
片付けたのを確認したらエッセは扉を大きく開き、アトラスを招いた。
「おはよう、ご飯の用意ができたよ?」
「ああ、すまない」
ハイゼットが多少ベットの下に片手を突っ込んで物を隠しています、の状態でもアトラスは気にかけず笑って挨拶をする。
それはそれで、助かったが複雑な心境で返事をエッセは返すのだった。(不信感が無いのか?この子は)
「それと昨日のモンスター退治で王様から君たちにも手紙が来ているんだ」
はいっと近くにいたエッセに国王の紋章が入った封をアトラスは、渡した。
内容を知っているエッセは笑みを深くして、受け取る。
「さて、なんだろうか?読ませてもらう」
でも内容を知らないフリをして、わざとらしく封を切り内容をサッと読む。
手紙の内容をハイゼットとミラジーノに向かって簡単説明をした後、エッセはアトラスを見て言う。
「お前も城へ招待されているのか?」
「うん、王様のご招待だから行くつもり。でも君たちはどうする?」
アトラスはここの民なので、行く義務があるがハイゼットたちは表向き旅人、そこまでの強制力はないとアトラスは思っている。
「お前たちの意見は?」
後ろにいるハイゼットとミラジーノに意見を聞いてい来るが、答えは決まっている。
「異議なし」
「勿論行くわ!」
嬉しそうに答える2人に、アトラスはちょっとホッとした。1人で堅苦しい場所に行くよりは皆と一緒に行けたほうが心強い。
想像しかできないが、沢山の人に囲まれるよりは昨日のモンスターを相手にしていた方がずっと気がらくだ。
アトラスは嬉しそうに朝食に3人を招き、朝食を取るとアトラスは簡単に遠出の準備をして、律儀に外で待っている騎士が用意した馬車に四人で乗ると、城のある城下街へ向かって馬は歩き出す。
それを見つけた近所のおばちゃんたちが手を振って見送る、近所の人々にアトラスは手を振って返した。
城のある城下街までアトラスの村からでは、そう遠くない。馬の調子から考えてお昼にはつくだろう。
ハイゼットはこれから一芝居打つために、ミラジーノが容易した衣装を思い出して気が重くなる。
すっごい恥ずかしい、でもアトラスの栄光の道の為、自分たちは魔界との隔離のために仕方が無い。
腹を括れ、気高き魔神の子にして魔王ハイゼット、行け行けハイゼット。明日にはいいことあるさ。
など自分を励ましてみたが思ったより効果はなかった。
ハイゼットのへこみとは裏腹にアトラスは見慣れない風景に、興奮気味。ミラジーノは明るい顔で外を眺めてアトラスと会話しているし、エッセは安物の馬車は居心地悪いという顔をしていた。
ハイゼットは俯いていた顔を少しだけ上にあげて、はしゃぐアトラスを見ると笑う。
やっぱり平和な村とは言えど、退屈はしているみたいだ。こうやっていろんな物を見せて体験させるのはアトラスにとってもいい事なのかもしれない。
そう考えると、無理やり勇者として旅たたせる事もちょっとくらいは気持ちが軽くなった。
「あっ見えてきた」
ミラジーノはアトラスの前なのでいつもよりも可愛い声で、指をさす。
三邪王からしたら決して大きくない、田舎風な石で出来た城が馬車の窓から覗く。楽しそうにお喋りをするアトラスとミラジーノの顔を見つめ隣に座っていたエッセがハイゼットの肩に手を乗せて、無言で慰めてくれた。
馬は軽快な蹄の音を鳴らしながら、城下街を通り抜けて城へとつく。
出迎えなど、高い身分の待遇をもって王様とお后様と一人娘の年頃(アトラスのお嫁さん候補)が待つ謁見の間に、そそくさと連れて行かれた。
アトラスはこういう待遇に慣れていないから不思議には思わないが、城内を知っているハイゼットは心で笑った。
普通王族と会うのに、正式な礼服さえ着ずに会うなんて、まず無い。
案の定、急ぎ足で案内された謁見の間にいる王様は余裕の無いお顔であられる。
そりゃ大事な一人娘を攫うよ?魔王より。
なんて手紙が送られたら血相を変えるに決まっている。
昨日の晩よりも疲れた顔をした王様が数段高い段の上で、大きなイスに座っていた。左右に王様よりは小さいがお后様とお姫様がイスに座っている。
「よく来た、村を救った強き者たちよ」
礼儀として膝つくのだが、其れすら時間が惜しいのか。アチラから話しかけてきた。
「いえ、当然のことをしたまでです」
王様を相手に立派に公言するアトラスに、三邪王3人はじ~んと来る。親心で「うちの子りっぱになっちゃって」とかそういう心境。
「して、そなたたちはどの位強いのだ?」
直接過ぎる王様にハイゼットは心の中で呟く。
(かけ引きのかの字もねぇな…)
もう一件モンスターの討伐を頼みたいといっている様なものじゃないか、しかしそろそろいいタイミングになってきた。
隣に立つエッセと反対側に立っているミラジーノに目で合図を送ると、2人は頷く。ハイゼットは魔力静かに魔力を使い幻を作り出す、自分と瓜二つの幻影を作ると静かに姿を消す。
この一切をエッセとミラジーノ以外は気付いていない、一度お城の塔に瞬間移動して降り立つ。
空は晴天なのに、ハイゼットの心は雨雲が立ち込めていたがせねば。
そしてミラジーノの趣味丸出しの衣装を、何も無い空間を歪ませて取り出す。
手にとってロングコートみたいな軍服風味を広げた。
だっせぇ…。
でもミラジーノのごり押しで採用決定、ここで違う服を着て出てみろ?殺されるぜ、俺。
大きなため息をついて、その他の装飾品も含めて自分の着ている服とチェンジさせた。
幻影のハイゼットは無言のまま王様の話を聞き続ける、四人の中では唯一知らないアトラスは黙って王様の話を聞いていた。
ハイゼットが着替えている間に、昨晩あった事件を説明終えた王様にアトラスが聞き返す。
「では、お姫様を魔王が攫うと?」
「そうだ、直接モンスターを寄越してこのような文を残していった」
エッセが作り出してハイゼットが書き込んだ、文を王様は忌々しそうに取り出してアトラスたちに見せる。
納得したアトラスは視線を狙われているお姫様に向けた、お姫様は少しだけ俯いているが健気にも強い瞳をして前を向いていた。
容姿は流石としかいえない、魔王も狙うのが納得の可憐さだ。赤茶の長い髪をして気品ある姿。
正しいお姫様像に出てくる姿そのもの、ちょっとだけ丸い目だけが彼女を幼く見せて、ますます可愛らしく見せてしまう。
でもなんとな~くミラジーノはお姫様が気に入らなかった、好みとかそんなんじゃなくて雰囲気?みたいなのが。
まっミラジーノがどうこうよりも、今はハイゼットの登場の方が重要なので気を引き締める。
重要な話なので扉一つでも開いていないはずなのに、風が謁見の間に流れた。
お城に住んでいる者は皆、不思議そうな顔をして周りを見渡す。今は些細な出来事でも敏感に反応していしまう。
アトラスと三邪王以外の人々が異変に緊張している中、玉座を照らすように天井に張られていたステンドグラスの花のように中心に大きなガラスを張って其れを中心として、周囲に小さいステンドグラスを囲っている。
すると中心の一番大きなステンドグラスが大きな音を立てて、割れた。
太陽の光りを乱反射して美しく雨のように降るガラスと共に、1人の人間も床にゆっくりと降りたった。
全身白いロングコートのように上着は膝まである裾がふわりと舞って降る。
男はゆったりとした動作周囲を見渡す、男と表現したが男のような姿をしているだけで詳しい姿は見えない。
見えているが、隠しているのだ。顔には口元しか見えない白い仮面を被り、男の頭は白い羽根が髪の毛のように一枚一枚重なり覆っている。
白い服に黒い手袋、足には長い白いブーツ。
魔王といえば異質さから納得できるのだけど、カラーリング的に魔王っぽくない。
皆が声を出せずに、唖然として仮面の男を見続けている。
仮面の正体は当然、ハイゼットだった。
ただいま恥ずかしさで憤死しそうな本物の魔王様は頑張って、この場から逃げ出さないように立ち留まるのに必死でした。
脱字誤字王の私なので後でおかしい場所は修正します。
修正する前にお読みになった方はすいません。
もっと時間と心に余裕があるときに更新したいです。




