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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第2章 北近江編

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第95話 寧々さん、新年早々厄介ごとに巻き込まれる

永禄8年(1565年)1月下旬 近江国虎御前山 寧々


雪がまだ若干残っている中を男たちが木を切り、それを柱や板戸などに使えるように加工していく。聞けば、墨俣砦の築城に携わっていた者たちも幾人か後から合流することができたようで、その者らを中心に『蜂須賀丸』の建設工事は始まっていた。


「しかし……玄蕃頭様も本当にお忙しいですな。今日は鎌刃城の堀殿を見舞われているのでしょう?」


「ええ、遠江守殿はうちの人の傅役で、長年よく尽くしてくれたかけがえのない方ですからね……」


そう、年が明けてから間もなくして、鎌刃城に戻られていた堀遠江守殿の病状が芳しからずという知らせがこの小谷に届いたのだ。陰ひなたなく、いつも部下の樋口殿と共に政元様に付き従っていたのに、いつまで経っても戻ってこないから不思議に思っていたのだが、どうやらそういう事情があったようだ。


もちろん、わたしもここにはいるが、毎日仏様に手を合わせて、快癒されることを祈っている。


「そういえば、慶次郎。話は変わるけど、なんか美里殿を七内殿に寝取られたんですって?」


「……寧々様。どこでそのような馬鹿げた話を耳にされたのかは存じませんが、あえて俺の名誉のために誤りを訂正させていただきますと、寝取られたわけではありません。美里殿に一目惚れをした七内殿にどうしてもと頼まれて、お譲りしたのです!」


「あら、そうなの?その割には、城下の酒場でやけ酒飲んで暴れていたと聞いたけど?」


「う……そ、それは、今の寧々様のように某をからかってくる者がいたので、ついカッとなってしまっただけで、決して悔しかったわけではありませんし、あと……叔父が中々死なないので、早く死ねと思って多少鬱憤も溜まってましたので……」


「ふーん……まあ、そういうことにしておきましょうか」


これ以上からかって、ここでまた暴れるようなことになれば、工事の進捗に多大な影響を与えかねないので、わたしは話をここまでとして引き続き作業を見学した。しかし、そうしていると……坂の下から誰かがわたしを呼ぶ声が聞こえた。


「寧々様!寧々様は、いずれにおわしますか!」


「あれは……藤堂殿ではありませんか?」


慶次郎が見た先でわたしを呼びながらこちらに駆け上がってくる藤堂殿は、前世で主をとっかえひっかえして生き延びて、見事に豊臣を裏切った恩知らずの蝙蝠・高虎ではない。その父親で、今はお義父様の側近としてお働きになられている源助殿だ。


「源助殿!わたしならここに!」


「おお、寧々様!お忙しい中相済みませぬが、大殿より至急お城に参られるようにとのことでして……」


「お城に?」


今日は何か呼ばれるような予定があったのだろうかと首をかしげていると、源助殿は言った。今、幕府より使者が来ていて、我が浅井家に京におわす公方様から上洛を求める御教書が届けられたと。


「じょ、上洛の御教書ですって!?」


前世において、幕府が浅井家にそのような要請を行ったという話は聞いたことがない。それに、そもそもそのような話が来たとして、なぜわたしに声がかかるのかと不思議に思う。政元様がご不在だからその代理としてという線もあり得なくはないが、それでもやはり違和感があった。


「源助殿。もしかして、幕府の使者って、細川兵部大輔殿ですか?」


「よくおわかりで。それゆえに、面識のある寧々様に間に入って頂き、やんわりとお断りを入れて欲しいというのが大殿のご希望でして……」


なるほど。つまり、お義父様は上洛に反対なのだろう。それでも、何か断れない事情が発生していて、助太刀を求めているのだと理解した。それなら、行かないわけにはいかない。


「わかりました。そういうことなら、参ることにしましょう」


無論、厄介ごとの臭いがプンプンするが、それ以上にこのまま押し切られて、幕府と共にこの浅井家が沈むという事態はまっぴら御免だ。永禄の政変で、義輝公が弑されるのは今年の5月で、あと4か月しかないのだから。

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