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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第2章 北近江編

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第94話 寧々さん、蜂須賀一党の移転先を相談する

永禄7年(1564年)12月上旬 近江国小谷城 寧々


「……?某の顔に何かついておられますかな?」


「あ……いえ、少し考え事をしていて、たまたまそこに半兵衛がいただけだから気にしないで」


「そうですか」


まずい。あの友松尼殿が描いた絵がどうしても頭から離れない。目の前には半兵衛だけでなく慶次郎もいるのだが、さっきから同じようにチラッと見ては思い出してしまい、彼からも不審な目で見られている。それは自覚していた。


「すまぬな。皆、待たせたな」


だが、そんなわたしの心を落ち着かせるお薬……政元様が部屋に入ってきて、彼らの疑惑を追及するような視線は一旦逸らすことができた。


「それで、俺に相談とは?」


「実は……」


わたしはすかさず、今日織田からの蜂須賀一党の件で詫びの使者が来たこと、そして、問題が解決した以上、その蜂須賀一党をどこに移すのか、相談したいと申し上げた。


だが、最近領内の改革のため、城下とお城を往復するだけで留守がちだった政元様にとっては寝耳に水で、困惑の色はありありとタヌキに似た可愛らしいお顔に出ていた。


「急な話だな。何か良き案を求められても、何も思いつかぬぞ……」


「しかし、このままお城での滞在が長引けば、お市様に莉々を連れて行かれてしまいます」


「なるほど……それは、早急に引っ越しせねばならぬな」


政元様にとっても、まだまだ莉々を嫁にやるつもりは当たり前だがないわけで、それならばと半兵衛に意見を求めた。何か良き策はないかと。


「それならば、一つだけ案がございます。但し、玄蕃頭様に殿を説得してもらう必要がありますが……」


「兄上に?何を頼めばよいのだ?」


「虎御前山に……蜂須賀一党の駐屯地を築く許可を」


「なに!?」


虎御前山とは、この小谷城の正面にある小高い山で、前世においては城攻めの最終局面でここに信長様の本陣が置かれた場所だ。


「無論、あの山はこの小谷城の首の付け根にあたる場所。それを新参者の蜂須賀一党に任せるというのは、当然裏切りを心配する声が家中に上がるのは必定。ですので、それを殿に提案すれば、玄蕃頭様にはご負担がかかりますが……」


「だが、莉々を取り上げられないためには必要なことなのだろう?ならば、やるしかないではないか。なあ、寧々」


「そのとおりですわ。わたしも、微力ながらできることをさせていただきます」


わたしにできることと言えば、お市様に直接お願いできる話ではないので、女子会で仲良くなった方に助力をお願いすることくらいだが、やらないよりかはマシだ。


「しかし、半兵衛殿。虎御前山に駐屯地を作ると言っても、資金はどうするつもりで?殿から頂戴できるように、それもお願いするのですか?」


「慶次郎殿。資金なら織田家から送られてくる賠償金がありますよ。もちろん、蜂須賀家の金ですからね。話を通しておく必要がありますが、連中も断ったりはしないでしょう」


それはそれで、間違いではないだろう。断れば、その時点で我らが蜂須賀一党を庇護する理由はなくなるのだ。それもわからないようならば、わたしとしても擁護するつもりはなかった。


「わかった。では、兄上にそのように申し上げて、許可を貰えるように働きかけてみよう」


「「「お願いします」」」


こうして衆議が一致を見て、わたしたちが一斉に頭を下げてお願いすると、政元様の口からため息が零れたのが聞こえた。忙しい中、負担を増やして済まないと思うが、これも莉々のためだ。

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