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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第2章 北近江編

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第78話 寧々さん、心の中で「裏切り絶対ダメ!」と誓う

永禄7年(1564年)7月下旬 近江国小谷 寧々


今の竹中殿のお話は、まさにわたしがずっと懸念してきた未来に繋がるものだった。それゆえに、政元様がどう返すのかを注意深く見ているのだが……どうやら、お顔の色があまりよろしくない様だった。もしかしたら、上手くいかないと思っているのかもしれない。


だから、この際政元様にはしっかりと、何が何でも信長様を裏切ることがないように釘を刺しておかなければならないと考えて、わたしは横からもっと今の話題を深堀してもらうため、口を挟もうとした。しかし……


「玄蕃頭様、ご歓談中の所すみませぬが、そろそろ登城の刻限にて……」


間が悪いことに、そこに慶次郎が現れては政元様に出立を促したため、話はこれまでとなった。そして、堀殿の代わりに登城には慶次郎が付き添うため、二人が出て行ったこの部屋には、わたしと竹中殿だけが残ることになる。


ただ……以前、裸を見せた間柄であるので、二人きりでいるのはやはり気まずい。そこで、その恥ずかしさを紛らわせるために、わたしは先程口にしようとしたことを訊ねてみることにした。


それは……もし、それでも浅井家が信長様を裏切ったら、どうなるのかということだ。


「……それは、聞くまでもないことでしょう。武田や上杉といった大大名でも滅びると言っているのですよ?浅井など一瞬で飛んじゃいますよ」


「それはわかっています。わたしがお聞きしたいのは、仮に我が浅井の兵が織田のお屋形様を確実にその……袋のネズミにして始末できた場合、この国はどうなるのかということなのです」


わたしは、あくまで仮定ということにして、前世における金ケ崎の戦いのあらましを竹中殿に話してみた。もちろん、取り逃がさないように若狭方面の逃走路に伏兵を置くなどして、完全に逃げられないようにした上でだ。


「……見事な作戦ですね。確かに、これなら織田殿を討ち取ることも可能でしょうな……」


そして、感心している竹中殿に、改めて成功した後のことを訊ねてみた。その場合、この日の本はどのような未来を迎えるのかと。すると……


「そうですね……余程稀有な後継者でも現れない限り、今までのような群雄割拠の戦乱の世は、まだまだこの先もずっと続くことになりましょう」


竹中殿は、わたしにはっきりとそう言い切った。仮にその時点で織田家が広大な領土を持っていたとしても、信長様という英雄を失えば、やがて内部闘争によってバラバラとなり、あとは元の木阿弥になると。それは、もう少し後の三好家と同じで。


だが、そうなると、海の外にあるイスパニアやポルトガルといった南蛮諸国が黙っていないことをわたしは前世で、藤吉郎殿から聞いて知っている。いずれ、この国に押し寄せてきては、人や財産を奪い去っていくとなれば、それは浅井家がどうこうというよりも、もっとまずい話だ。


「どうかなされましたか?寧々殿。お顔の色がお悪いようですが……」


「いえ……大丈夫です。絶対、裏切ってはダメだということが分かりましたから」


「そうですか。それはよかったです。……ところで、寧々殿。某からも少々、不躾なことをお聞きしたいのですが、構わないでしょうか?」


「不躾なこと?ま、まあ……お答えできる範囲で良ければ……」


「では、嫌ならお答えいただかなくても結構ですが……どうして、あなたは木下殿と別れたのですか?」


「え……?」


「某が会って見たところ、あの木下殿は中々の傑物。冷酷な内面が足を引っ張って、今のままではいずれ頭打ちとなるでしょうが、もし……あなたと一緒になられていて、抑えになることができたのならば、先程申し上げました織田殿の後継者になる可能性もあると思うのですが……」


「つまり、織田のお屋形様に何かあった時は、天下人……?」


「はい」


はっきりと頷きながら答える竹中殿に、それが間違っていないだけに、わたしも本心で答えることにした。それは、「誰もが天下人の妻になりたいわけではない」ということだった。


「わたしは、今のように優しい夫と可愛い子らと幸せに暮らせたら、それで十分なのですよ。だから、天下人になんてなる可能性はないとわかっていても、政元様を選んだのです。それじゃ、いけませんか?」


すると、竹中殿は一瞬驚いた顔を見せたものの、優しく微笑み「問題ありませんな」と答えてくれたのだった。

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