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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第2章 北近江編

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第73話 寧々さん、今孔明の知恵を求める(前編)

永禄7年(1564年)7月上旬 近江国小谷 寧々


お城から下がり、屋敷に戻ったわたしは政元様が帰っていないこともあって、一人部屋に籠り思案に暮れた。慶次郎や堀殿らと相談することも考えたが、まずは冷静になって自分の考えをまとめるために。


だが、この要求を跳ね除けるためには、朝倉家の武力を上回る力がなければならず、冷静になればなるほど、わたしは途方に暮れた。莉々と猿夜叉丸様の婚約を認めた近衛様の書状を見せても、そもそもその近衛様の妹君を離縁した朝倉には通用するとは思えない。


加えて言うならば、細川殿を介して幕府に動いてもらうとしても、その幕府が来年には消滅するのだから、やはり当てにすることはできない。


つまり、八方塞がりだ。もし、わたしが諸葛孔明ならば、もしかしたら何か解決策が浮かぶかもしれないが、生憎そのような知能は持ち合わせてはいなかった。ゆえに、また途方に暮れた。


(ん?諸葛孔明?)


そういえば、この時代には『今孔明』と呼ばれる人物がいることをわたしは思い出す。前世において、藤吉郎殿の軍師であった竹中半兵衛殿だ。


(そういえば、色々なことを相談したなぁ……)


長浜の内政のことや小姓たちの教育方針、安土におわす信長様へのご機嫌取りに、挙句は……藤吉郎殿の浮気についても信長様にチクるよう助言を頂くなど、幾度となくわたしを助けてくれたことを不意に思い出した。


「半兵衛殿ならあるいは……」


そう思うと居てもたってもいられずに、席を外してもらっていた慶次郎や堀殿らをこの場に呼び、自分の考えを伝えた。竹中半兵衛殿をこの小谷に招くことはできないかと。


「竹中殿ですか……?」


「そうよ。確かに2年前は敵対したけど、その竹中殿は斎藤家を見限ったって話らしいわね?それなら、こちらに招いてお知恵をお借りすることができるのではないかしら?」


「それは……」


ただ、妙案だと思ったこの考えに、慶次郎も堀殿も一様に渋るような態度を見せた。樋口殿などは、「正気の沙汰とは思えませぬ!」とまで言って、わたしに思い直すように促してきた。彼が言うには、竹中殿は政元様の首を刎ねようとしたので、許すわけにはいかないということだ。


だが、そのようなことは、大事の前の小事だ。


「慶次郎。これより、美濃に参ります。供をしなさい!」


「ちょ、ちょっと、お待ちください!大体そもそも、玄蕃頭様には相談していないのでしょう?勝手には……」


「それに、寧々様。そもそも稲葉山城は斎藤龍興の兵に取り囲まれていると聞きます。そのような場所に赴かれるのは……」


「お黙りなさい!事は一刻を争うのです。莉々が朝倉のクソガキの嫁にされるなんてこと、絶対に許してはなりません!そのためには、竹中殿のお力が今、必要なのです!!」


確かに慶次郎の言うように、政元様には相談をしていない。しかし、このままでは、いくら長政様や久政様が粘り強く交渉したところで、最後は押し切られる未来が待っているのだ。それならば、少しの時間も無駄にはしたくなかった。


それに……堀殿はわたしが稲葉山まで向かうと思っているようだが、行き先は近江との国境に近い竹中殿の所領、菩提山だ。


『誰もがあのとき、某らが稲葉山城に籠っていると思っていたでしょうが、たった16人で守り切れると思います?徹底抗戦の構えで立て籠もっているように見せかけて、数日のうちに、秘密の抜け道を使って、逃げ出したに決まっているではありませんか』


それは、かつて竹中殿本人から聞いた話だ。そして、無人になった城を半年に渡って、どんな奇策が飛び出してくるのかビビりながら包囲を続けていた斎藤龍興とその間抜けな仲間たちを……毎日、菩提山の居城で笑っていたらしい。


それゆえに、わたしはそちらに向かうことにしたのだった。

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