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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第2章 北近江編

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第69話 寧々さん、初めて年上の甥と面会する

永禄7年(1564年)6月上旬 近江国小谷 寧々


目の前には、わたしよりも年上の甥が座っている。堺に住んでいるとは聞いていたが、態々この小谷まで来るとは、一体何の用だとは思うが、会わないという選択肢はなかった。


「お初にお目にかかります、叔母上。某は、斯波左兵衛佐義銀にございます」


「斯波義敦公が息女、寧々にございます。こちらこそ、お初にお目にかかり、恐悦にございます……」


そして、お互い初対面なので、こうして交わす挨拶もややぎこちないのは、無理からぬことであろう。しかも、相手は没落したとはいえども、名門斯波家のご当主様であらせられるお方だ。失礼のないように気をつけなければならない。


「……ところで、武衛様。本日はわたくしに如何なる御用で?」


「実は某、この度、叔母上のご子息であらせられる万福丸殿に我が斯波家の家督をお譲りいたしたく……」


「えっ!?」


いやいや、何でそんな話になるのかとわたしは焦りを覚えるが、義銀様の話によると、斯波家の当主である限り、尾張には帰れないわ、幕府から管領に就くように圧力をかけられるわで、全然いいことがないらしい。


それゆえに、万福丸に家督を譲って、今後は津川義近と名乗るらしいが……そういえば、前世において藤吉郎殿の御伽衆に、そのような名の者がいたなと思い出した。


「しかし……万福丸は傍流の子の上、まだ赤子ですよ?確かに斯波の名を名乗らせていただきたいとはお願いしましたが、流石に斯波家の家督を背負うには荷が重すぎるかと思うのですが……」


「誰もがそう思うからこそ、安全なのですよ。織田殿も流石に血筋の怪しい、しかも幼児が斯波家復興の旗頭になるとは思わないでしょうし、幕府も管領には望まないでしょう。……あ、これは失礼なことを申し上げましたな……」


「いえ、お気になさらず……」


義銀様が申されている「血筋の怪しい」という言葉は、わたしのことを指しているのだろうが、万福丸は完全に斯波家とは無関係な子だから、間違っているわけではない。加えて言うならば、後でわたしの方から信長様に、真相をこっそりと伝えれば、より安全であろう。


それゆえ、わたしは義銀様の申し出を受けることにした。わたしとしては、万福丸に斯波の名を継がせるのは、将来、浅井家の家中でそれなりの立場を保つことが目的であるため、危険な目にあわないのであれば、寧ろ家督を継いで立場が強くなる方が望ましいからだ。


「よし!それでは話がまとまったということで、ちょっと連れをこの場に呼んで構いませんでしょうか?」


「連れ?まあ……別に構いませんが?」


「そうですか。それなら……細川殿、入られませ!」


「えっ!」


障子が開けられて、一人の侍が部屋に入って来るが、それは本当に以前尾張でもてなしをした細川兵部殿であった。


「ご無沙汰しております、寧々殿」


「あ……いえ、こちらこそ。しかし、どうして兵部大輔殿がこちらに?」


「実は……」


細川殿が言われるには、現在将軍御所が置かれている家屋敷は、本来斯波家の所有地だとかで、毎年賃料を支払っているとか。


「まあ……家主が代わるわけなので、挨拶をしてもらおうと連れてきたわけですよ」


義銀様は、左様に惚けたことを言ってのけるが、絶対に違うだろうとわたしは思った。おそらくは、以前してあげたように幕府の運営に関する意見を聞きたいということだろうが、わたしは迷う。


なぜなら、三好長慶の死が来月、義輝公が討たれた「永禄の政変」が来年5月に控えている今、なるべくならば、幕府とは距離を置いておきたかったのだ。

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