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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第4章 越前編

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第206話 寧々さん、邪魔な朝倉旧臣の存在を知る

元亀元年(1570年)8月下旬 越前国府中城 寧々


この府中に引っ越してからもう間もなく10日が過ぎようとしていた。家の片付けもようやく済み、子供たちも城下に改めて作られた虎哉和尚の学問所に通い始めて、少しはわたしも落ち着けるかと思っていた矢先に、こうしてお城に呼ばれている。


今日の話題は、本拠地をどうするのかについてだ。


「あれ?……それって、北の庄にすると言われていませんでしたか?」


「寧々殿は反対なのだろう?ならば、強引に進めるわけにはいかぬではないか」


おそらくだが、例のご宸筆のことを気にしてそう言っているのだろう。まあ、国友村の件で、この手札を森殿に見せたことを聞いているのであれば、不思議ではないかもしれないが……


(もしかして、他に何か気になることでもあったのかしら?)


その苦虫を潰したような表情に、別の理由があるように思えて、わたしは「どうかされたのですか?」と長政様に訊ねた。すると、その口から突然、「朝倉式部大輔」の名が飛び出してきた。


「式部大輔って……織田軍と共に越前から去ったのではないのですか?」


「それがな、実はまだいるんだよ。しかも、降伏の際に本領安堵を弾正忠様から認められたとか言って、変らず領地に居座り続けているんだ」


さらにいえば、それは式部大輔だけではなく、朝倉の旧臣が幾人も同じことを主張して、こちら側から派遣した浅井の者に、領地を明け渡そうとしないらしい。その中には、長政様が拠点を遷そうと考えていた北の庄を領する朝倉土佐守もいるという。


「なんですか、それは!連中は、織田家に降伏したのでしょう?ならば、共に連れて行くのが筋ではありませんか!」


確か、この越前を我らに引き渡した織田方の責任者は佐久間殿だと聞いている。それゆえに、「こんな間抜けな仕事しかできないから、最後は追放されるんだわ!」と、心の内で悪態を吐いてみるが、わたしの気持ちを知らずに長政様は言った。


「我らも近江で同じことをしているではないかと言われた……」と。


「それは……」


確かにその指摘は間違いではない。我らとて国替えに際して納得のいかなかった連中は、織田家に判断を委ねているのだ。もしかすると、信長様も同じように悩まれている可能性があるだけに、そこを突かれては長政様も反論できなかったのは無理からぬことだ。


「それで……どうするおつもりなのですか?討伐してでも、強硬に事を進めるとか?」


「流石に今はそこまでの余力はないな。若狭にいる政元らにも相談する書状は送っているが、俺の意見としては、奴らを我が浅井家に仕えさせて、来る戦で使い潰したら良いのではないかというところだ」


「なるほど……」


その意見は理に適っているように思えて、わたしとしても反対する必要はなかった。そして、改めて気づく。だからこそ、北の庄に代わる本拠地を長政様は相談しているのだと。


「ちなみに、領地に立て籠もっている朝倉の旧臣たちの分布はどのようになっていますか?」


「地図はこちらに。赤の駒がその連中の領地です」


長政様に代わってそう説明してくれたのは、家老の赤尾様だ。見ると、越前北部の大野郡、坂井郡、足羽郡にその領地は点在しているのが窺える。


「つまり、これを見る限り、北の庄は敵のど真ん中と……」


「はい。それゆえに、殿は北の庄移転を見合わせて、他の地にと」


しかも、かの地は平地にあり、戦となればどんな立派な城を築いたとしても持たないことは、前世で柴田殿が実践済みだ。ゆえに、いつ攻めてくるかわからない状況では、本拠地にするのは不適格だと思う。


「ならば、この府中城でいいのではありませんか?元々、この地に国府が置かれていたわけですし、ここならば安全かと……」


「だがな、寧々殿。それでは、消極的過ぎやしないか?武士は舐められたらおしまいだぞ」


「でも、最後に勝てばよろしいのでは?わたしが思うに、そういう状況であるならば、北はまだしばらくは落ち着かないかと」


そういえば、前世でも朝倉を滅ぼして越前を平定したはずなのに、朝倉旧臣の反乱から一向一揆が起こって、越前は滅茶苦茶になったような気がする。……となれば、やはりこの府中で様子を見た方がいいのではないかと、わたしは思うのだった。

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