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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第4章 越前編

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第191話 寧々さん、謀反の可能性を考える

元亀元年(1570年)5月下旬 近江国小谷城 寧々


評定が終わり、屋敷に帰ろうとしていたわたしであったが、急遽長政様が呼ばれていると聞いて、別室に案内された。但し、そこは主殿とは離れた場所——かつての久政様の隠居所で、今は使われていない場所だけに、わたしは警戒する。今度は何を聞かされるのかと。


「殿。寧々様をお連れしました」


「通せ」


障子の向こうから声が聞こえて、中に通されると……そこには、長政様だけでなく、弟君の政之様も一緒におられた。


「これは、石見守様」


「義姉上、ご機嫌麗しゅう。相変わらず、お美しくあらせられますな」


「ダメですよ。やたらとそのように、女と見れば見境なくそう仰せになられては。さもなくば……殿のように、ご自分のまいた種で痛い目に……」


「こほん!……寧々殿。そのお話は、もうその辺で。それで、あなたをここに呼んだわけなのですが……」


話を誤魔化すように、長政様はわたしに意見を求めた。即ち、今日の評定で決した国替えがつつがなく終えることができると思うか否かについてだ。


「……すると、殿は上手くはいかないとお思いで?」


「何事も起こらず、上手くいけばそれに越したことはないが、おそらくはまだ一波乱はあると思っている」


「なるほど……」


確かに今日の評定は、わたしから見れば見事に立ち回られたとは思ったものだが、見方を変えれば、その強引なやり口に不満を抱く者はいないとはいえない。最後まで渋っていた田屋様や阿閉殿はいうまでもなく、周りの雰囲気に流された連中、さらにはこの評定に出席していない家臣たちも場合によっては……。


「しかし、兄上。今更国替えに従えないと申しても、評定で決した以上、これを覆すには武力をもってするしかないのでは?果たして、そう言った連中にそこまでの度胸があるとは……」


「石見守様。旗印になられるお方が居れば、如何でしょうか。例えば……殿の近しい御身内であるあなた様……」


「あ、義姉上……お戯れが過ぎましょうぞ。某はそのような野心は……」


「ないとは言い切れまい?政之よ。そなたは、何かと俺に対する不満をぶち撒いているそうだな。領地が欲しいとか、正式な官位が欲しいとかだったかな?」


「そ、それは……酒の上の戯言でして……」


「戯け!酒の戯言で済むと思っているのか!」


お酒の上での失敗と聞いて、わたしはこの義弟に親近感を覚えるが、長政様のご指摘は間違ってはいなかった。無人斎が養成している歩き巫女からも同じ報告が届いている。


ただ……政之様の方は顔を青くして焦って弁明しているが、長政様の方は罰するというよりは、寧ろこの機会に釘を刺すつもりなのだろう。こういうことで担がれてしまえば最後、兄弟の情があっても殺すしかなくなるのだから。


「よいか。その方はこれより後は、言動に気を付けろよ。俺は、弾正忠様のように弟をこの手にかけて平気でいられるほど、心が強いわけではないのだからな!」


「肝に銘じます!申し訳ありませんでした、兄上!」


そして、わたしが考え込んでいる間に、お二人の間で手打ちは済み、少なくともお家騒動の芽は摘まれた。他にも候補の方がいないわけではないが、まだ幼く、予め手元に置いておけば、問題は生じないだろう。ただ……


(本当にこれで大丈夫なのか?)


わたしは、何か見落としているような気がした。この浅井家……いや、北近江で影響力を持つお方がまだ居るような……


「あっ!」


「いかがした?寧々殿。そのような大きな声を出して……」


「殿!京極様は!?守護の京極様は大丈夫なのでしょうか?」


「あっ!」


忘れていたと言わんばかりに、長政様は驚かれた。実権はとうの昔に浅井家に奪われてはいるが、上平寺城におられる京極高吉公は、幕府から認められたこの北近江の守護様だ。反乱を起こす連中が担ぎ上げるには、もってこいの存在だろう……。

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