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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第3章 金ヶ崎編

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第164話 寧々さん、近衛様の無実を証明する

永禄11年(1568年)11月中旬 京・下京 寧々


まあ……とはいったものの、やはりあれだけお世話になった人が困っているのを見過ごすわけにはいかない。内裏では主上に申し上げないことは約束したが、独自に調査してはいけないとはいわれていないのだ。やれるだけのことはやっておこうと思う。


それゆえに、まずわたしは藤吉郎殿を頼ることにした。


「なぜ、木下殿を?」


「あの場に居なかったでしょう、藤吉郎殿は。つまり、京を任されている三奉行の中で、独自に動いているんじゃないかと思ったのよ。それが上総介……じゃなかった弾正忠様のご意向かどうかはわからないけど……」


それならば、もしかして明智殿たちが知らない情報も掴んでいるかもしれない。それが近衛様の無実を証明するものかどうかはわからないけど、訊いてみて損はないと慶次郎に言った。


「しかし、寧々様。その木下殿がどこにいるのか、ご存じで?」


「周暠様に聞いてみたらわかるんじゃないかしら?相国寺に訪ねてこられたわけだし……」


「それもそうで……というか、噂をしていたら居ましたな。ほら、あそこに」


慶次郎は指を差したその先、すぐ目の前の通りの辻を藤吉郎殿が西に向かって歩いているのが見えた。


「あ……本当だ。藤吉……」


しかし、そう言いかけたところで、どこかで見たことのある女が隣でニコニコしながら、手をつないでいることに気がついた。そう、あれは確か……


「慶次郎。つけるわよ」


「えっ!?寧々様?」


思い出した。あの女は、前世で石松丸を産んだ南殿だ。なるほど、もうこの時期から浮気していたのか。なんだかとっても許せなくなって、動かぬ証拠を掴んだ上で岐阜にいる菜々さんにチクってやろうと思った。しかし……


「あれ?見失ったわね。どこにいったのかしら?」


「……寧々殿。儂らに何の御用で?」


「えっ!?」


尾行はあっさりと気づかれて、わたしと慶次郎は藤吉郎殿と南殿に背後を取られて、逆に追及される身となってしまった。


「何でわかったの?」


「まあ……そこにいる慶次郎殿の大きな体が隠れ切れていませんでしたからな。……というか、慶次郎殿。あなたは全く隠れる気などなかったのでしょう?」


「ええ。俺としては、その女が貴殿の愛人であろうとなかろうと、関係ありませぬし、興味もございませぬからな」


「あははは、なるほど。しかし、愛人には見えましたか。傍から見たらそう見えるのであれば、敵も欺けそうですな」


「敵?それって一体……」


「ああ、寧々殿。実は……」


藤吉郎殿は、南殿が信長様から付けてもらったくノ一で、特命を帯びて近衛様の容疑を洗い直しているのだと言った。なお、名前も前世の長浜時代では、住んでいた部屋からそう呼ばれていたが、本名はお葉というらしい。


「それで、どうなのですか?近衛様は無実なのですよね?」


「一概にはそうとも言い切れないのですよ。近衛様の家にいた小者が長きに渡って、三好方に情報を伝える見返りに金銭を受け取っていたということ自体は、どうやら嘘ではないようで……」


それは、今は味方となっている松永弾正殿が証言しているという。当時、三好方の窓口をしていたとして。


「それなら、何を調べているの?」


「問題は、その小者が伝えたという情報の出処が本当に近衛様からのモノであったかどうか。もしかしたら、近衛様以外の方から伝えられた情報だったのではないかと、その可能性を調べておりまして……」


そして、お葉殿と恋人の振りをしていたのは、女遊びに現を抜かしていると周りに印象付けておいて、彼女が集めた情報を確認していたそうだ。前世におけるこの後の展開を知っているだけに、本当にそれだけなのかは怪しい限りだが。


「……ちなみに、今は何の話をしていたの?」


「松永様より、その折の書状を預かっておりましてな。情報が発信された時期の裏付けをしているのですよ。もし、京にいない時期があったら、近衛様から命じられたと主張する小者の証言が嘘ということになりますからな。あとはそこを起点に切り崩していけば……」


しかし、藤吉郎殿はそうは言いながら、それでもそのほとんどが近衛様の在京の日と重なっていて、未だ足がかりが掴めていないと苦笑いを浮かべた。加えて、残るは永禄6年5月12日と永禄7年11月5日の2つだと言うが……


「永禄6年5月12日って……」


わたしは思わず言葉を失った。その日は莉々が生まれた日で、小谷に居た近衛様に名をつけて頂いた日でもあった。つまり、その日は確実に、近衛様は京に居なかったのだ。そして、その証人は、そう……他ならぬこのわたしだ。

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