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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第3章 金ヶ崎編

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第151話 寧々さん、解決の糸口をつかむ(前編)

永禄11年(1568年)8月中旬 近江国小谷 寧々


「それでは、寧々。行って参る」


「お気をつけて、おまえ様。特に……城主となったからと浮気はダメですからね」


「わ、わかっている。般若のおまえを思い出して、肝に銘じることにしよう」


「まあ!般若とは酷い!」


冗談を交わして笑っているが、本音を言うと寂しく思っている。何しろ、若狭における統治基盤を固めるために、政元様は少なくとも来年の雪解けまでは居城に定められた後瀬山で過ごされるのだ。


しかも、正式に分家を興すというだけあって、半兵衛も蜂須賀党のみんなも若狭に移動する。慶次郎だけは、この若狭浅井家の小谷屋敷付の家老として残ってくれるようだが、例の宿題が解決しないまま周りから人が去って行く状況に、わたしは心細さを感じざるを得なかった。


「はぁ……どうやったら、殿の矜持を粉々にできるのかしらねぇ……」


政元様たちが出立してから大分時間が過ぎて、わたしは側に慶次郎が控えているのを見て、わざとそう呟いた。なぜなら、半兵衛は絶対に答えを思いついているが、きっと意地悪をして教えてくれないのだと思っている。それならば、慶次郎を揺さぶれば、もしかしたら教えてくれるかもしれないと。


「……寧々様。何度も申し上げた通り、某は何も教えてもらっておりません」


「えー。そんなこと言って、ホントは知っているんでしょ?ほんのちょこっとだけでいいからさ、教えてくれないかしら?」


「ですから、本当に何も知らないんですよ」


うーん、慶次郎はまさに難攻不落だ。そうしていると、屈みながらわたしの前をゆっくりと通り過ぎようとしている莉々の姿が目に止まった。


「莉々?あんた、どこに行くの?」


「か、かか様!?え……ちょ、ちょっと、厠に?」


「……厠に行くのに、その腰の木刀は邪魔にならないのかしら?」


「え?えぇ……と」


目が完全に泳いでいる。どうやらまた、虎哉和尚の学問所に忍び込むつもりだったようだ。ホントにこのお転婆は……。


「莉々。何度も言うけど、皆の邪魔になるからダメと……」


そこまで言いかけて、わたしは閃いた。そうだ。和尚ならば、もしかしたら答えを導き出してくれるかもしれない。


「どうしたの?かか様……?」


「慶次郎!わたし、虎哉和尚の所に行ってきます!莉々をよろしく頼みますね!」


「ね、寧々様!?いきなり何を!」


「かか様!お兄様の所に行くなら、あたしも連れてってよ!」


二人からそのような声が聞こえたような気がしたが、わたしは気にせずにそのまま家を出て、学問所に向かった。事はこの浅井家の命運にかかわることなのだ。少しでも早く答えを知ることができればと、気を急かして。


「おや……今日はお嬢ちゃんではなく、奥方様ですか」


「すみません、和尚様。実は教えていただきたいことがございまして……」


玄関に現れた虎哉和尚に、わたしは呼吸を整えながら、そのように申し上げた。すると、和尚様は「では、もう少しで休憩の時間に入るので、それまで別室でお待ちいただきたい」と、中へ通してくれた。


そして、それから小半時(15分)ほどして、和尚様はわたしの前に再び姿を現した。


「それで、拙僧に何をお訊きになりたいのですかな?」


「実は……」


わたしは、左少将様のご気性と懸念される織田家からの離反、半兵衛から与えられた宿題について、お話した。


「それで、どうしたらいいのかわからなくて……」


「なるほど。それは中々に難しい宿題ですな。例え思いついたとしても、実現は不可能で……半兵衛殿は、実に意地悪なことを言われる」


「思いついたとしても、とは……もしかして、和尚様は答えが分かったのですか!?」


「ええ、実現は無理だとは思いますが……」


「それでも構いません!教えて頂けないでしょうか!」


例え無理だとしても、解決の糸口に繋がるかもしれないと思って、わたしは和尚に懇願した。

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