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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
第2章 北近江編

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第98話 今孔明は、公方様をシメることを提案する

永禄8年(1565年)1月下旬 近江国小谷城 竹中半兵衛


「……まあ、そういうことなのよ。このままじゃ、浅井家はまずいことになるから、何かいい方法はないかしら?」


事の次第を寧々様から聞いて、俺は思わず「謀反」を最上の策として進言しそうになった。予てより、備前守様は猪突猛進の猪武者で、それなら玄蕃頭様を当主に戴いた方が浅井家の未来を考えれば明るいのではないかと思っていたが、それは間違いではないと思って。


(そうすれば、この世界では金ヶ崎の裏切りは起こらない……)


「どうしたの?半兵衛。そんなに難しそうな顔をして」


「いえ……」


しかし、同時に理解もしている。寧々様も玄蕃頭様もその選択は望まれないことも。特に寧々様は、前世で色々と栄耀栄華を味わって嫌な経験を重ねているため、栄達に関する野心は皆無だ。つまり、提案しても受け入れられることはなく、それならばしない方が良いと自らの気持ちに折り合いをつけた。


「それで……要は、細川殿に限らず、幕府からの上洛要請が二度と来ない様にすればよろしいのですよね?」


「ええ、そのとおりよ」


「でしたら、どうでしょう。寧々様が直接京に乗り込んで、公方様をシメる……失礼、ご説得なされては?」


「……半兵衛。今、公方様をシメるって、不遜な言葉が聞こえた気がしたけど?」


「気のせいでしょう」


おっと、つい心の声が漏れて寧々様に聞かれてしまったようだ。ただ、そんな誤魔化した俺を寧々様はクスクスと笑った。「まあ、そういうことにしておきましょう」と言って。


「だけど、半兵衛。わたしが御所に乗り込んだところで、公方様は話を聞いてくれるでしょうか?そもそも、会ってくれるかさえも……」


「それは、近衛様を頼られては如何でしょう。今でも、文のやり取りはなされているのですよね?」


「ええ。莉々の名付け親にもなって頂きましたし」


「それならば、間に立ってもらえばよろしいかと。御台所様は近衛様の妹君ですし、義兄の頼みならば、公方様も無下にはできぬでしょう」


「なるほど……」


寧々様は「流石は今孔明ね」と某を褒めるが、実の所、近衛様の仲介がなくても、公方様はお会いになられると俺は見ている。


今、この小谷に来られている細川殿は、公方様の信任厚きお方であるし、その彼がここに寧々様の縁を頼って来られている以上、過去の発言を含めて公方様が知らぬとは考えづらい。それどころか、寧ろ好意的に思われている可能性すらある。


それゆえに、近衛様に仲介を頼むのは、別に理由がある。


「寧々様。上洛に際しては、某も同行しましょう。委細は全てお任せいただければ」


「本当?それは、心強いわ!」


寧々様の公方様への拝謁を隠れ蓑に、この際京における人脈作りをやっておこうと思っている。政変が5月に起こるのだ。公家の間に知己を増やして、情報を得る手段を確保すれば、それは寧々様の力となるだろう。やらない手はない。


「あ……でも、こんな重要な事、勝手に決めたら、またうちの人に叱られないかしら?それに、莉々や万福丸、竹松丸の事もあるし……」


「玄蕃頭様には、下野守様にお口添えを願いましょう。浅井家のためだと言って貰えば、内心はどうあれ反対はされないでしょう。あと、若様方と姫様の事ですが……」


莉々様と竹松丸様は、久政様に預ければ問題ないだろうが、万福丸様はこの際連れて行かれることをお勧めする。


「え……どうして、万福丸を?」


「万福丸様は、斯波家のご当主になられました。この際、公方様にお目見えして、その立場をお固めになられてはいかがでしょう?」


万福丸様は、寧々様たちがいくら取り繕ってみたとしても、どこまでも備前守様の庶長子だ。だからこそ、将来浅井の跡継ぎ候補として担がれないように、斯波家の当主としての色を強めておく必要がある。備前守様が君主としての器量に欠けているがゆえに……。

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