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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
最終章 藤吉郎編

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第949話 寧々さん、母の見舞いに日向へ旅立つ(3)

慶長3年(1598年)7月中旬 土佐国浦戸城 寧々


鰹の事は名目上の理由であり、本題は積荷の返却についてだ。このままだと、うちが全部泥をかぶらされそうなので、ちょっとお・は・な・し……をするために。


「しかし、ちょっとでいいと言ったのに、あなたたち釣りすぎよ。お陰で船の中臭くなっちゃったじゃない」


「だって、慶次郎が挑発してくるからつい……」


「まあ、姫様はからかい甲斐がありましたからな。つい楽しくなってしまい、申し訳ありませんでした」


まあ……今更言っても仕方ないが、問題はそのせいでここに宮内少輔(長宗我部元親)がいない事だ。「何分、あの量ですからね……」と苦笑いを浮かべている息子の弥三郎(信親)では話にならないし、これは計算外だった。


「ああ、何か気分転換がしたいわね。お酒でもあれば良いんだけど……」


「寧々様?」


「何よ、半兵衛。あなただって禁煙の誓いを破ったでしょ。わたしにとやかく言う資格何てないんじゃ?」


「ふふふ、何を言われますか。それとこれとは話は別にございましょう。そもそも、お立場が違います。某が死んでも天下は揺らぎませんが、寧々様は……」


「ああ、長くなるからもう良いわ。それよりも……どうやら来たみたいよ」


部屋の外から聞こえてくる無数の足音。そして、襖が開かれて、現れた宮内少輔が侍女たちに命じてわたしたちの前に膳を並べさせた。お酒の香りが漂う徳利と共に。


「宮内少輔殿……これは、もしや……」


「土佐の名産『般若湯』にございます。我が国に来られてこれをお勧めしないとあらば、御仏への冒涜!ささ……今宵はとことん最後までお楽しみくだされ!」


う、うむぅ~♪御仏への冒涜となるになら、元・尼としては飲まないわけにはやっぱりいかないわよね。


「そうよ、それにこれはお湯。ただのお湯だし……」


「寧々様、いけませぬなぁ。その程度の言い訳で某を欺けると……?」


「や、弥八郎……」


「大体、そもそも……」


「ああ、待って!飲まないから!ほんの冗談だから!!」


危ない、危ない……。弥八郎のお説教は長いし熱が出るから、何としてでも回避しないと。


「左様ですか。飲まないのであれば、結構にて……」


うう、さようなら。わたしのお酒……。


「それで、寧々様を酔わせて、一体どうなさるおつもりだったのですかな。宮内少輔殿?」


「あ……い、いや、寧々様は禁酒をやめられたと聞いたもので、ただ単に喜んで貰おうと……」


いや、やめたいけど、ご覧の通りやめさせてくれないのだが……宮内少輔は、糞タヌキが情報源であると打ち明けてくれた。しかも……厠で飲んでいるなどと……!


「まさか……?」


「は、半兵衛!?ま、待って!飲んでいないからね!?流石のわたしでも、そんな臭いところでは飲めないわよ!」


「本当に、本当なのですかな?信じても……本当に大丈夫なのですよね?」


「いや、そこまでわたしって信用ないの……」


ちょっとこれは悲しい。半兵衛とは長い付き合いだからわかってくれると思っていたのに……。


「しかし、寧々様。今、少しだけかもしれませんが……『なるほど、その手があったか』と思われたでしょう?」


「え……慶次郎。な、何のことでしょう?」


「惚けても無駄ですぞ。寧々様との付き合いもかなり長くなっていますからな。その程度のこと、某が分からぬはずがございません」


う……す、鋭い。


「でも、やらないからね!だから、半兵衛もお仕置きの準備をしないで!と、兎に角、折角の料理だし、まずは頂きましょう!」


絶対に、小谷に帰ったら、誰が何を言おうがあの糞タヌキを肥溜めに叩き落して、それから糞ごと焼いてやろうと心に誓い……目の前の鰹料理に手を伸ばした。


「ほう……これは!」


「お気に召しましたか」


「ええ、これは本当に美味しいわね!」


ああ、箸が止まらない。これでお酒が飲めたらなお最高なんだけど、口にすればまたさっきの繰り返しなので、それはやめておく。


しかし、この料理……このままこの土佐に埋もれさせるには惜しいわね。


お読みいただきありがとうございます。

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