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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
最終章 藤吉郎編

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第943話 寧々さん、お孝の後任を推薦する

慶長3年(1598年)6月中旬 近江国小谷城 寧々


忠吉殿とお孝の縁談だが……あれよあれよという間にまとまった。聞けば、二人の関係は秀忠殿が言っていたようなものではなかったようだが、話が出たことで意識し始めて、後はもう止まらなくなったらしい。


「だからってね、夜の厠ですることはないでしょう!普通に恐怖だったわ!!」


「「申し訳ございませんでした!!」」


そして、プンスカ怒る希莉の前で、二人は正座して平謝り中だ。秀忠殿の姿も隣にあるが、こちらは苦笑いを浮かべるだけで、空気になるように徹していた。


ただ、ここのところ、夜中の厠で変な声が聞こえるから「幽霊でもいるのか」と侍女たちが騒いでいたので、これでめでたく事件は解決したわけだ。ああ、お茶が美味しいわ……。


「大体、順番が違うでしょう!普通は婚礼を先にやって……」


「希莉……あなたがそれをいう?」


「う……お、おばあ様!」


「なによ。本当の事でしょうが」


ホント、自分の時の事を棚に上げて、よくもまあ二人をこんなに責められるものよね。夜中の厠は確かにいただけないけど、そういう自分たちだって親に隠れて致していたというのに……。


「まあ、かく言われる寧々様も、身に覚えがあるので姫様……もうその辺りで。大体、夜中の厠など、侍女としてのお務め中にお城の執務室でされるよりかはずっとマシにて……」


「け、慶次郎!今はそれを言う必要ある!?な、ないでしょう!」


「あのとき、大変だったんですよ?人払いをしようとしているのに、声が大きいからわんさか人が集まって来るし、総見院様からは『どうやら春が来たようだな』と笑われるし……」


「そ、それは、ごめんだけど……」


清洲のお城でのあれは、もう40年近くも昔の話なのだ。いい加減にもう忘れてもらいたい……。


「兎に角、若気の至りは誰にだってあるという事!だから、もうこのお話は終わりにしましょう。それよりも……」


「ええ!おばあ様のお話を聞きたいんですけど!」


「希莉……ふざけたことをこれ以上言うようなら、夜までみっちり弥八郎の個人授業を受けさせるわよ?あんた、大名の奥方として身に着けておかなければならない行儀作法が十分とは言えないわけだし……」


「あ……生意気言って、すみませんでした。どうぞ、お話をお続けください」


こほん。お孝がこうして忠吉殿の奥方になるからには、その後任となる侍女が必要になるわけで……わたしはその者を引き合わせようと、すでに準備を整えていた。その事を希莉に伝える。


「名はお福といってね。辰之助の家老・稲葉内匠頭の奥さんだった方よ」


「奥さんだった……って、離婚したのですか!?」


「ええ、内匠頭が浮気したらしくてね。それでつい先日……」


ただ……聞けば、浮気を責めていたところ内匠頭が激高してお福を殴って、そのまま乳飲み子共々屋敷から追い出したそうだ。事態を知った辰之助から相談を受けて、わたしの方で保護したけれども……誠にもって許し難い所業だ。


「おばあ様の事だから、内匠頭には処罰を与えたのでしょう?」


「ええ、このわたしが自らの手で裁きを下したわ!」


お稲さんの診断では、骨を何本か折っているから全治半年というとこらしい。今頃きっと、床の上で己の愚かさを反省している事であろう……。


「それで、そのお福をわたしの侍女に……ということですか」


「そうよ。こうなった以上、稲葉家には戻れないでしょうから、あなたに面倒を見てもらいたいのよ。乳も出るから、柚希の乳母にしてもいいし……」


何しろ、希莉は次の子を……早く跡取りをと望んでいるのだ。そう言った事情を考慮して、渡りに船なのではないかとわたしは提案した。


「わかりました。確かにおばあ様の言われる通り、お福がわたしの所に来てくれたら大いに助かりそうね」


「じゃあ……」


「会うわ。別室に待機している様なら、早速こちらに……」


よし、これで決まりだ。わたしは部屋の外に控える侍女に、お福をここに連れて来るように命じた。


お読みいただきありがとうございます。

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