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寧々さん、藤吉郎を振る!~苦労して日本一の夫婦となり、死んだら過去に戻りました。もう栄耀栄華はいりませんので、浮気三昧の夫とは他人になります~  作者: 冬華
最終章 藤吉郎編

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第942話 寧々さん、平常運転でお孝の縁談を考える(後編)

慶長3年(1598年)6月上旬 近江国小谷城 寧々


お孝を秀忠殿の側室にする——。


ただ、その方針を正直に喜太郎に言えば、必ず反発を受けることになるはずだ。だからわたしは、今日の所は……と一先ず話を打ち切り、すぐに秀忠殿を部屋に呼んだ。そして……


「えっ!?お孝殿に手を付けろ……と!」


「そうよ。こういう事はね、要はやったもの勝ちなのよ。大体、あなたと希莉だってそうでしょう?」


「そ、それは……そうかもしれませんが、希莉が何というか……」


あれ?希莉はお孝と仲がいいから、てっきり側室にしても問題ないと思っていたが……違ったのかしら?


「大政所様……希莉の嫉妬深さは半端じゃありません。姫路城でのことですが……某がすれ違いざま少しでも『可愛いな』と思った侍女は、悉く次の日には不細工なおばさんと入れ替えられてしまいました」


「え……」


「それに、お孝にも何度も何度も釘を刺しているようです。そういう関係になったら、皆を殺して……最後は姫路城の天守で爆死すると」


「み、皆殺しで……爆死。そ、それは、穏やかじゃないわね……」


それだけ秀忠殿への愛情は深いという事だろうが、苦笑いを浮かべる秀忠殿に同情を禁じえない。


「……となれば、お孝を側室にはできないわね?」


「御意にございます。お力になれずに申し訳ございませぬが……何卒、ご容赦の程を」


仕方ない。そういう事情ならば、他を当たるしかないか。しかし、どうしたらいいものやら……。


「あはは!忠吉殿は、誠見事な若武者ですな!将来が楽しみで仕方ないでしょう、徳川殿!」


「誠に内府様の仰せの通りにて。ただ、惜しむらくは、部屋住みという事でして……」


「わかっており申す!この儂が!いずれ、どこかの大名になれるように忠元に口添えいたしますゆえ、どうか大船に乗ったおつもりで!」


「よろしく、よろしくお願いいたしますぞ、内府様!」


うん……。こちらが非常に真剣に考え事をしているというのに、タヌキ共は誠に今日も呑気に過ごしているようだ。何が大名になれるように口添えするよ。みんなまとめて、鍋の具にして煮込んでやろうかしら?


「大政所様……」


「ん?どうかした」


「忠吉では……お孝殿の相手ですが、忠吉ではダメでしょうか?」


「忠吉……?」


松平甚四郎忠吉。前世では、関ヶ原の戦いで勇名を馳せて尾張52万石の大名となったこの男は、先程糞康が言っていた通り……今世では徳川家の部屋住みだ。ただ、齢は19歳なので、お孝と同い年ではある。


「実は、あの二人……最近、仲が良いようでして……」


「そう。そういう事なら、一緒にさせてあげるのが二人にとっての幸せだろうけど……わかるわよね?このままでは条件が満たしていない事は……」


西村家は38万石の大名だ。しかも、帰蝶様の実家ともいうべきお家という事もあって、これから出世するからと説得するにしても、最低でも大名でなければ話にならない。


「でも、うちの人はさっき呑気そうに言っていたけど……これからの世の中、大名には中々なれないわよ?天下泰平で、手柄を立てる好機はほとんどないし、馬鹿な大名がやらかさない限り、領地の空きはなし……」


まあ、実際には現在進行形でお馬鹿な大名がいて、お家騒動という馬鹿な事をやらかしている最中ではあるけど。亡くなった忠三郎には気の毒だけど、蒲生もこのままだと潰れるわね……。


「では、大政所様。忠吉には某より領地を分与する事で、大名にしてはどうでしょうか?」


具体的には、播磨のうち赤穂郡を中心に5万石を分与したいと秀忠殿は言った。徳川本家はこれで49万石になるが、分家を残すことは血の保全に繋がるから悪い事ではないと続けて。


「ちなみに、この事は希莉も知っているの?」


「分与の事は相談済みです。このまま娘ばかりならば……と、悩んでいましたので、少し気持ち的に負担を軽くしようと思いまして、此間……」


本当にそれで気持ちが晴れるとは思えないけど、希莉も承知しているのであれば、わたしとしては言う事は何もない。


ゆえに、明日にでも喜太郎に提案しようと思う。5万石では不足というのであれば、官位の引き上げで誤魔化せばよい。忠元のお手付きになるよりはずっとマシなはずだ。


お読みいただきありがとうございます。

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