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re:Alize (リアライズ)  作者: 蒼之ユリ
7/14

第七話:二人

クレイ「…もう一度確認する。」


クレイ「あの三人がここへ来てから数日経った頃、一体目のゾディアックが街に現れ電車を襲撃。そしてその際に巫狩(いがり)も自分の能力に目覚める。」


レオネル「そうだ。」


 EST内本拠地、どこかの一室でまたもクレイ達は集まっていた。話す内容は勿論のこと、地球外生命体、『ゾディアック』の事についてだった。


クレイ「その日の夜にあの穀潰しが現れ、次の日には二体目のゾディアックが現れた。それに続いて昨日は三体目のゾディアックがESTに侵入し、これをゼルと水野が討ち取った。」


クレイ「その際に、水野も自分の能力に目覚める。」


レオネル「…そうだな。」


クレイ「何度検査しても異常無し。SFDにも反応しない…潜伏期間があるって事か?」


レオネル「どうだろうな。」


黙り込む二人に対して、メルルがやってくる。


メルル「ただ単純に味方だと思えばいいんじゃねーか?だって結果的に見てみりゃ、いつも助けてくれんじゃねーか。」


クレイ「お前は黙ってろ。」


メルル「なッ…」


クレイ「誰もお前に聞いてない。引っ込んでろ。」


メルル「コイツッ…人間のくせに、何か生意気じゃねーか?!大体さっきから聞いてりゃ俺の事を穀潰しだのなんだのって…俺の事をそんな名前で呼ぶんじゃねぇ!おいデカブツ!この女にはまず口の利き方ってもんを教えなきゃいけねェんじゃねェか!?」


レオネル「……………。」


レオネルは面倒くさそうに鼻を鳴らした。


クレイ「ゼルは何してる?おい!ゼル!」


 ゼルは同室の離れたソファで小川と向かい合いながら、昨日ESTで撃退したあの透明な化け物の資料を見ていた。


ゼル「こりゃ、一体なんだ…」


小川「なんだろ…エ、エイ…?」


ゼル「…イカじゃねェか?」


クレイ「おい、ゼル!何してるんだ!」


ゼル「!」


クレイ「早くこっちに来い!」


ゼル「お、おゥ。悪ィ。」


ゼルも席に着いた所で、再びクレイが話し始めた。


クレイ「…このまま行けば、おそらく次に能力が目覚めるのはまず間違いなく小川だ。」


ゼル「まァそう考えるのが妥当だろうな。今の所見ていても、特に変化は無さそうだが。」


レオネル「やはりゾディアックが鍵になるという訳か…。」


その時だった。クレイの携帯に情報室から連絡が入ったのだ。


ゼル「どうした?」


クレイ「長野からだ。昨日のゾディアックの事について何か話したい事があるらしい。全員情報室に向かうぞ。」


 立ち上がったクレイは部屋を出る直前、その場に居なかった二人の人物について名前を挙げた。


クレイ「…巫狩と水野は?」




巫狩「…………。」


巫狩は、EST内にあるとある中庭のベンチに座って、何を考えるでもなく時間を過ごしていた。


水野「……ここに居たんだ」


巫狩「…水野さん」


 水野は何も言わずに、巫狩の隣にあったもう一つの方のベンチに座った。しかし座ったはいいものの何かを喋る素振りもない為、巫狩は言葉を振り絞って何とか話しかけた。


巫狩「……体調の方は大丈夫なの?」


水野「…?あぁ、昨日の話、聞いたんだね…。」


水野「別に何ともないよ。どこか痛いって訳でも無いし…。昨日のことが、嘘みたい」


巫狩「………。」


水野「………。」


二人の間に、多少の沈黙が流れる。


水野「…巫狩君とは、あまり話した事無かったよね」


巫狩「…うん、そうだね。」


水野「巫狩君は怖くない?」


巫狩「…怖い?」


水野「うん。私は…怖い。まだここに来てからちょっとしか経ってないのに、色んな事ばっかり起きるし、昨日だってあんな事があったのに力がどうとか言われて…。巫狩君は、どう思う?」


巫狩「僕は…」


巫狩「……………。」


巫狩「……正直まだ分からないかな。」


巫狩「怖いとか、どうとか…。ここに来て、そこまでちゃんと考えたことがないからかな…」


水野「そっか…あ。」


そこで水野が着信に気付く。


水野「そろそろ、行かなきゃね。」


そういって巫狩の方に携帯の着信画面を見せる。


巫狩「…うん。」


二人は、クレイ達が集まっていると思われる情報室へと向かった。




長野「──皆さん集まったようなので、早速本題に移りたいと思います。」


長野「昨日本部に侵入したゾディアックの検査結果ですが、やはりこれも、過去に出現したゾディアックの物質とは全く違うものでした。」


クレイ「…やはりな。やはり奴の言った通り、コイツらは違う星の、全く違う惑星から来ていると仮定して問題ないだろう。」


長野「…えぇ。ですが今回皆さんに集まって頂いたのは、この件についてでは無いんです。」


クレイ「何?」


長野「昨日ゾディアックの調査をするにあたって、一応ゾディアックが使ったであろう侵入経路とその付近の調査をしたんですけど、実はもう一つ、昨日出たゾディアックとは別に、新しい痕跡が発見されたんです。」


『!!』


ゼル「じゃあ、もう一匹新しいのがいるって事か!?おい、メル!」


メルル「し、知らねェよ!昨日見つけたのはあの一匹だけだ!それ以外は見つけてねェ!」


クレイ「──本当に間違いないのか?」


長野「…はい。昨日退治したゾディアックの方は、体を透明に見せるための神経の様なものが身体中に通っているんですけど、その被検体の方はそれが全く無いんです。昨日確認されたあの体の状態から予想されるに、身体の構造上、神経が通っていない場所は有り得ないんです。だから被検体の方にも同じように神経が通っていなければおかしいはずなのに…。」


長野さんはさらに被せるように話し続けた。


長野「しかも、被検体が見つかった場所自体、ゾディアックが通った侵入経路とは全く関係の無い所だったんです!大きさだって全然足りなくて…」


巫狩「…大きさ?」


長野「えぇ。被検体が見つかったのは侵入経路と反対側の、通路に続く小さなダクトの中だったんです。だから同一の物と考えるのは無理があるんじゃないかって…。」


ゼルは顔をしかめながら、クレイに聞いた。


ゼル「…どうする?」


クレイ「まず、隠れているんだと考えるなら同じような狭い場所…ダクトの中とか、配管にいると考えていいだろう。」


クレイ「隠れる理由は分からんが、攻撃するかもしれん。武器は持っておいて損はないだろう。…今も調査はしてるのか?」


長野「はい。他の職員が、研究棟から調査しに向かってます。」


クレイ「そうか。とりあえず武器は持たせておけ。私たちが行くのが一番だが、何があるか分からんからな。」


長野「分かりました。…しかもその被検体、たまにですけど、どうやら液体を出しながら移動してる形跡があるんですよね…。」


ゼル「げェッ。マジかよ!て事は相手はナメクジみてぇにパイプん中とか通気口を這いずり回ってるって事じゃねぇのかァ~〜〜~?!」


 嫌~~~~!!!と言いながら、ゼルはこんな状況だと言うのに呑気に震え上がっている。


巫狩 (………。)


巫狩「………ふぅん……。」


 巫狩は小さく鼻を鳴らした。次に何をするか指示が出るのを待っている。ふと目の前にいた、レオネルの向こう側に見える奥の壁に目をやった時だった。


巫狩「───ッ!!」


ガタッッ!!


 クレイがいち早く巫狩の異変に気付く。そんなクレイに続くように、周りの人間も巫狩が何に気付いたのかすぐに分かった。


『!!!』


 情報室右側。壁に付いているダクトの入口から、明らかに異質な半透明の物体が大量に漏れ出てきている。


ゼル「こッ…こいつは…ッ!」


 そしてそれは固まるように真ん中へ寄っていき、一つの物体へ形を成していく。ドロドロと下へと流れ落ちたそれは、こちら側にどんどん近付いてくる。


ゼル「おい!こっち来るぞ!」


小川「…………ッ。」


 部屋の中にいた全員が警戒する中、突然それはピタリと動きを止めた。すると、半透明の塊はボゴボゴと膨れあがり形を形成する。それは奇しくも人の形に見え、やがて半透明の水溜まりは、人型のような不安定な形の物体へと姿を変えた。


ゼル「…な、何だこいつ……」


クレイ「…………」


レオネル「…………」


 クレイはレオネルの方に目配せをした。全員武器は所持している。いざという時はすぐに撃てというクレイからの合図だった。


???「……………」


ゼル「おい…動かねェぞ。コイツ…。」


その時、『ソレ』は動き出した。


クレイ・レオネル「!!」


ガチャッッ!!!


 二人が銃を撃とうと構え出したその時だった。『ソレ』は二人の予想とは違って、弱々しく、待ってほしいとでも言いたげに左手を前に出した。


クレイ「!?」


???「…………。」


 『ソレ』は横のテーブルに置いてあった電源のついているパソコンに近付き、そっとその画面に触れた。その次の瞬間。


ジジジッ!!!


『!!』


パソコンの画面が一瞬歪んだかと思うと、まるで高速再生されたかのように様々な画面に切り替わり始めた。それは一瞬で次から次へと切り替わり、ドラマのワンシーンやコメディ番組、はたまた海外のニュース速報など、瞬間的に入れ替わっていく。


ジジジジジジジ…………。


ゼル「何だ…これ……」


 そう皆が驚いていると、突然ピタッとパソコンの画面が停止した。ソレが画面から手を離したかと思うと、突然ソレはぐにゃぐにゃと変形し始めた。そしてその部分部分には色が着いていき体は骨格を帯びていく。全身の変形が終了したと思われると、もうそこには先程までの人型らしき物体は存在していなかった。


ゼル「────・・・。」


レオネル「な………」


小川「ウソ……だろ……」


 全員度肝を抜かれていた。そこには間違いなく、たった一人の『人間』が存在していたのだ。体は肌色に覆われ、服も生成されている。パソコンの情報から得たのか服の素材もまるで本物の布のように見える。


クレイ「────ッ。」


ゼル「…………。」


 クレイでさえも動揺していた。全員、信じられないといった様子だった。ゼルが驚愕のあまり、やっとの思いで口を開こうとしたその時だった。


ゼル「し……信じられね──」


???「ぁ…あ、あ、う……」



『『『!!!!』』』



???「あ、あ、あ……う……。」


ゼル「ウソだろ喋んのか……?!」


ゼルの予想通り、『ソレ』は喋り始めた。


???「…ぇ……」


???「………ぃえ、かえる……。」


クレイ「!?」


???「……いえ、かエる……ほー、…む。おシえてくだ、サい……ほーむ。」


ゼル「何言ってんだコイツ……ッ!?」


クレイ「……家に帰りたいって言ってるんじゃないか?」


 人の言葉を話しているが、その表情はまるで生気を感じない。目も焦点が合わずどこを見ているのかさえ分からない。


???「こわ、い、でス……あ、ふれ……」


???「やめ、テ……ころサ…ないデ……。」


 それはたどたどしく喋りながら、両手を前に出して手の平を見せた。ひどく怯えている様子だ。


クレイ「待て、大丈夫だ。敵意は無い。」


持っていた武器を捨て両手を前に差し出し、クレイは攻撃する意思が無い事を示した。

 クレイは少し考えてまた話した。


クレイ「………日本語だ。日本語。分かるか?ニッポンゴ。」


???「……ぁ…う…あなたは、なン、ですか…?」


ゼル「す、すげぇ…」


長野「ク、クレイさ──」


動揺する長野を片手で制すると、クレイは話し続けた。


クレイ (待て、私に任せておけ。)


???「ここハ、どこですか…?私は、いエに、かエリたいです…。」


クレイ「我々に敵意はない。とりあえず、落ち着いて話をしよう。」


クレイ「──ここへ来た時の事を、覚えているか?」


???「…お、おぼエて、いません。気づけば、ここにいましタ」


クレイ (やはりか…。)


クレイ「そうか。…ひとまず、お互い落ち着いて話をする為に、どこか別の場所でふたりで話さないか?」


???「………わ、ワかりました…。」


クレイはレオネル達に向かって静かに目配せをした。


クレイ (他の者を連れて離れておいてくれ。大事にはするなよ。)


レオネル (アリエスだけ残していく。人は寄越さないようにしておくからな。)


そうしてレオネルは、ゼル含む巫狩達一行を連れて部屋を出て行った。





巫狩達が部屋を出てから数時間が経過した。


ゼル「…にしても遅せェなァ。まだかよォ。」


ガチャ…


ゼル「!」


レオネル「来たか!状況はどうだ?」


クレイ「とりあえず研究課の方に預ける事になった。数時間で返してくれるらしい。」


ゼル「預けるも何も…アイツは一体どうなったんだよ?」


クレイ「あいつは…ウチで監視する事になった。」


ゼル「は、はァ?!」


レオネル「何だと…?!2体目って事か!?」


クレイ「詳しく言うと、共同だな。本部とウチで協力して見る事になった。名前は無く、調査はしたもののやはり穀潰し同様、気付いたらここに居たってパターンだ。話も聞いてみたが、抵抗もしなければ、攻撃する素振りも見せない。こっちの言う事には真摯に答えるし受け答えだってできる。学習能力が高いようで、日本語だって流暢になってきた。多分アレを普通の人間が見たら、疑いもせずに同じ人間だって言うだろうな。」


ゼル「マジかよ…」


クレイ「…それにしても、随分とさっきは静かだったんだな?…穀潰し」


クレイはふわふわ浮いているメルルの方を向いた。


メルル「特に何って訳じゃないぜ。ただ好奇心で見てたが、実際にあんなのも居るもんなんだな。でもまぁ、人の姿に変わった時は流石にビビったな。」


クククといつも通りの笑いを見せると、また部屋のどこかへ飛んで行ってしまった。


クレイ「フン…。」


ゼル「なァ、これからどうなるんだ?」


クレイ「今も言った通り、これからはアイツもウチの監視区域に現れるようになる。しかし穀潰しと違って見た目通り危険性も無いので、特に警戒しなければいけないという訳では無い。ただウチと向こうの研究室を出入りするというだけの事だ。私たちが何かする必要は無い…。」


会話の最後に、クレイは強調するようにこれだけ言い残した。


クレイ「ただし!刺激はするなよ。」




ポタ………ポタ………。



 薄暗いランプに、響く水音。壁には黒く錆びたパイプがそこかしこに張り巡らされている。どこかの下水道だろうか。その暗く湿った世界の真ん中で、一匹の怪物が呻いていた。


???「グッ……グゥ……!」


???「ウッ……グ……ッ!」


???「……随分な有様だな。」


???「!」


???「あれ程威勢を放っていたのに、その結果がアレか?」


???「!!!」


???「そんな傷まで負って…出鼻を挫かれたって所だな…。」


 怪物の失態を責め立てるそのもう一方の怪物は付け足すようにその者の名前、『電車を襲い、クレイによって深手を負わされた者』の名前を言った。


???「なぁ…グラン。」


グラン「ウゥッ……!グッ……!」


傷を抑えながらその怪物、『グラン』はもう一方の怪物を睨み付ける。


グラン「殺されてェか……ッ!!てめェ……!!」


???「その傷でか…?情けないものだ…。」


パイプの影に隠れており、その怪物の姿は見えない。

怪物は感心するように静かに呟いた。


???「……しかし驚きだな。まさか人間にも、お前の様なやつと互角にやり合える者がいるとは…。」


???「どんな世界にも、『そういう存在』はいるものなのだな…。」



コツ、コツ…………



グラン「!」


怪物は、深い暗闇に向かって歩き出した。


グラン「おい!どこに行くつもりだ!」


???「試したくなった…。本来なら静観するだけのつもりだったが…。」


???「人間がどこまでやれるのか…人間がどこまで楽しませてくれるのか…見てみたくなった…。」


グラン「テメェ…ッ!!」



薄暗い世界で、ただ最後に怪物の声が響き渡った。


???「安心しろ…。ただ俺は、俺のやり方で楽しむだけだ…。」



 あの件があってから数日が経った。巫狩はあの日と同じように、中庭のベンチに座って自分が持ってきていた本を読んでいた。



サアァァァァァァ………。



 春の終わり、やわらかな日差しが樹葉の隙間から差し込んでいる。寒すぎず、暖かい5月の風がそっと体を撫でていく。



???「…ここにいたんだね。」


巫狩「あぁ。水野さ───」



巫狩「………………。」


巫狩の言葉は、そこで止まった。


巫狩「…………。」


 巫狩は振り向いて声の主を確認した時、声の正体が水野では無いことに気付くと、ついそれ以上喋るのを止めてしまった。


???「巫狩(いがり)くん…だよね。」


巫狩「あ…」


長く伸びた黒い髪、少年のような体。

それはちょうどこの前見たばかりのESTに侵入してきたゾディアックだった。


???「研究所の人がよく君の話をしていたからすぐに分かったよ。」


巫狩「あ、あの……。」


思ったより言葉が上手く出せず、巫狩は自分で驚いていた。


???「……そりゃ、そうだよね。急に話しかけられたら、びっくりするよね。」


???「…セスでいいよ。」


巫狩「セス?」


セス「うん。パソコンを通して色々勉強した時にちょうどこの名前が出てきてさ。研究所の人達も、呼び名が無くて困ってたから。」


巫狩「そっか…。じゃあ、セス。」


セス「うん。」


巫狩「…セスは、どこから来たの?」


セス「……。」


少し止まってから、セスは答えた。


セス「…それが、よく覚えてないんだ。故郷があったっていうのは覚えてるけど、どんな所かは曖昧で。」


巫狩「そうなんだ…。」


セス「…ねぇ、巫狩くんの事も教えてよ。」


巫狩「僕のこと?」


セス「うん。」


巫狩「例えば?」


セス「うーん…名前とか!」


巫狩「名前?」


セス「うん、名前!他の人が言ってたよ。日本人には皆、『もう一つ』名前があるんでしょ?」


巫狩 (下の名前の事を言ってるのか…?)


巫狩「まぁ…あるね。」


セス「ねぇ、なんて言うの?巫狩くんの名前は」


巫狩「…イツキ。カタカナで、イ、ツ、キ。巫狩(いがり)イツキ。」


 そう言うとセスは、何故か子供のように目を輝かせて食いついてきた。


セス「ふわぁ~~!そうなんだ!じゃあイツキだね!!イツキくん!」


巫狩「…?う、うん。」


 巫狩が反応したのもつかの間、セスは次に本を指さして興味を示してきた。


セス「ねぇ、これは何?!これってイツキくんのなの!?どこから持ってきたの?!」


巫狩「えっ?あぁ、これは、自分の家から持ってきた本だけど…」


セス「じゃあ図書館とか図書室にいけば、こういうのいっぱいあるって事!?」


巫狩「まぁ、そうだね。図書館はともかく、図書室にいけばこういうのは少なくとも───。」


ガッ!!


巫狩「──ッ!?」


 巫狩が話すのを待たずして、セスは半ば強引に巫狩の手を掴んで図書室まで引っ張って行ってしまった。


セス「行こう!!」


巫狩「えっ!?あっ!おっ、おい!ちょっと───!」



セス「──ねぇ、これは?!」


巫狩「…うーん、これは〇〇だな。~~が~~で…。」


 ふたりは、図書室や本拠地の中を巡ったりして同じ時間を過ごしていた。



レオネル「………無ッ…?」


レオネル「……リーダー。」


後ろにいたレオネルがクレイを呼び止める。


クレイ「ん?どうした?」


レオネル「あれは……。」


クレイ「……?」


 クレイもレオネルが向いている方角を向いた。すると遠くの反対側にある一階の廊下。そこで、セスと巫狩がふたりで話しているのが見える。セスが興奮した様子で前を駆け回り、それを巫狩が後ろからついて行くのが見えた。


クレイ「……………。」





セス「──ねぇ、次はどこ連れてってくれるの?」


巫狩「連れてくも何も、僕だって最近来たばっかで、そんな色々知ってる訳じゃ…」


セス「あっ!ねぇ!あそこって一体何の部屋?!行ってみようよ!」


巫狩「あっ、おい!あんま変なとこ行くなよ!」



巫狩「………フッ。」


巫狩が最後に、小さく微笑んだような気がした。




心做しか穏やかな雰囲気に包まれたESTを、オレンジ色の光が照らしていた。


グラン

街中に突如として現れたゾディアック。出生は不明。その体は赤黒の繊維に覆われており、2mという大きさを超える体長を持つ。筋肉質な体が特徴的でその性格は正に凶暴。幼体の時は自らの身を守る為に『対象を複製する』能力がついていて、相手の姿かたちをそのまま実体に映し出す事が出来たり、その映した実体を使う事で敵を騙したり捕食したりする事が出来る(なお成体になるとこの能力は使えなくなる模様)。どうやら他にも手を組んでいるゾディアックがいるみたいだが…?

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