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第7話 僕はただ隅の方でひっそり生きたかっただけなのに!!

「ああああああああああああああああああああああああああああ!! やっちゃったやっちゃったやっちゃった!! 思い出しちゃった! アリスはネフィラをいじめてたじゃん! 何が二人は友人同士だよ馬鹿か、僕!! そりゃあ変な顔するはずだよ!! 僕のこと家族ぐるみで殴ろうとするはずだよ!! ばーかばーか!!」



 と、この世界がゲームであることをレイが思いだしたのは、なんとハーピィ家の一件から一ヶ月後のことだった。



 レイの自室でのことである。



 やってしまったことをいつまでも悔いていても仕方ない、次に切り替えよう、などというポジティヴさはないにしても、このようなときには現実逃避的に「僕はどうせ嫌われているんだから仕方ない」と早々に切り替えるのがレイの常だった。



 が、今回ばかりはそうも言っていられない。



 レイヴン・ヴィランはゲームの悪役で、



 四年後、教会に磔にされたあげく餓死する運命にある。



 どのような変遷をたどってそこに向かうのかというのをはっきりとは思い出せていないレイではあったけれど、ゲームの主人公とヒロインたる【聖女】たち、そして教会の手によってそのような結末になることは解っていたし、魔族たちにも裏切られて、独り、誰にも助けられることなく死んでいくのも思い出していた。



「ゲームで魔族に裏切られたってのは、つまり、ヨルとかメイドちゃんとか父上とか、ヴィラン家の魔族にすら裏切られたって事だよね!? 追放されたって事だよね!? 今回はメイドちゃんたちの登場で事なきを得たけど、今後はそれを望めないってことだよね!?」



 そこから類推すれば、最悪の場合、ヨルやメイドちゃんたちが敵になるという可能性だって十分考えられる――ハーピィ家をあっという間にねじ伏せたメイドちゃんを含め、「最強」と呼ばれるヴィラン家全員が。



「……自分でなんとかするしかない。生き延びる方法を考えなきゃ。……まずは自分を鍛えるとか? ……いや、ダメだ」



 レイのステータスはほぼほぼ1でそれがMAX値であり、鍛えてどうこうなる状況にない。それは揺るぎない事実であり、ユニークスキルがあったところで覚醒してステータスがぶっ壊れる、と言うこともない。



 レイは頭を抱えて固まった。



「どうしてこんなことに!? 僕は隅の方でひっそり生きたいだけなのに!! こうなったら、裏切られる前に生きていけるだけの準備をしよう。このステータスじゃ魔界で生きるのは危険だから、人間界の辺鄙なところに土地を買うんだ」



 と言って、それだけでは金を稼ぐ手段がない。

 少し考えて思いつく。



「そうだ。僕一人じゃ生きていけないから、ゲームで誰も使わないような低レアだったキャラクターを仲間にしよう。そうすれば主人公にも【聖女】にも関わらなくてすむ! あったまいい僕!」



 すでにお前は【聖女】を一人助けてるが(第一話参照)。

 完全に忘れているレイだった。



「どうせ無条件で皆に嫌われるんだから顔を隠して細々と暮らすんだ。低レアキャラにも裏切られるだろうけど、その前に準備すれば良い!」



 被害を具体的に考えられるくせに、現状を全く把握できていないレイである。



 ネフィラを救い出し、ハーピィ家のメイドの待遇を改善して、家族からもスパイダー家からもがっつりと評価が上がっている――つまり、無自覚に追放を遠ざけたはずなのだけど、



「よくやったな」とか、

「さすがです」とか、

「鼻が高い」とか、



 そう言われるたびにハーピィ家で粗相をした自分への嫌みにしか聞こえなくて、責められていると思って泣きたかった。



「今回の件で僕はヴィラン家からの評価をがっつり落としたはずだ。つまり追放を近づけちゃったってことだ! 準備する前に追放されるのだけは避けないと!」



 着の身着のまま魔界の危険区域である『荒れ地』なんかに放り出されれば一瞬で死んでしまう――レイはそう思って決意した。



「まずはヴィラン家での評価を上げる! 善行を働いてステータスが低くてもできる奴だって証明するんだ!」






「さすがわたしのご主人様です」






 と、突然、自分以外誰もいるはずがないのにそんな声が降ってきて、レイは恐る恐る天井を見上げ、



 糸でぶら下がっている少女を見つけて、悲鳴を上げた。



 少女はレイの悲鳴など気にせず腕をくんと動かすと、天井や壁に渡した糸を引き寄せてその体を起こし、ゆっくりと床に降り立った。



 腰のあたりから伸びる三対の蜘蛛の足が器用にスカートの中に隠れ、そうしていると人間のように見えなくもない。



 ふわりと魔力で作られた糸が消えていく情景の中、



 

 ものすごい美少女がそこにいた。


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