第2章~あれから1年が過ぎて
いつもの4人は、相変わらず毎月のように飲み会をしていました。
ただ、あの時に清野さんが勿体ぶった相談をしてきた事は、メンバーの誰もがすっかり忘れていました。
それは、あの時から短期間で現場の人間関係が急速に悪くなってしまったので、飲み会でのネタとしては仕事の愚痴だけで充分だったからです。
現場でも居酒屋でも、来る日も来る日も仕事の愚痴を言い合っていたので、半年もすると酒が不味く感じる様になりました。
そこで、うちら飲み会のメンバーは、※1“せめて酒の席では仕事の話は止めよう”とお互いを牽制するようになりました。(※1→以後ローカルルールと表記します)
そうなってしまうと、酒の席で話すネタがほとんど無くなってしまうので、それはそれで困ってしまいました。
ローカルルール以外だと、飲みのネタはプロ野球か中央競馬か女の子に関する事か?
他には、過去に観た映画やドラマ、あとは車やバイクに関する事か?
う~ん、この中で選ぶとしたら、やっぱり女の子に関する事になるのかな。
でも、最近売れているアイドルって誰なんだろう?
自分は数年前に所帯を持ってから、最新のアイドルをチェックするという事はしていませんでした。
若い同僚から、あれこれと売れっ子アイドルの名前を聞く度に、“おじさんには分からないや…”と言うばかりだったので、これを機会に覚えるのも悪くないなと思いました。
アイドルの名前と顔をある程度覚えると、“この子とこの子だったらどっちが好みか?”というネタを仕込んでは飲み会に参加していました。
他のメンバーは、ローカルルールを回避するのに、ゲームに関する事や人気声優さんのライブに行った時の事等を話していました。
この日は、清野さんが飲み会で意味深長な相談を持ち掛けてから1年になる頃でした。
いつもの4人で、職場から2駅離れた穴場の居酒屋で飲む事になりました。
開始から1時間もすると、いつものように高玉さんが次に飲む店を提案してきました。
自分は、どっちの女性が好みかというネタを、アイドルばかりではなく若い女優さんも対象に入れて質問していました。
ただ、そのネタもそろそろ尽きてきていたので、次回はアニメのヒロインで同じ事をやろうかと考えていました。
自分は、アニメヒロインやサブキャラに関して恋心を抱いた事はありませんが、オタク心というものがあるのならば、面白い企画になるかも知れないと思っていました。
飲み会のメンバーも、特に目新しいネタが無くてマンネリになっていた時です。
そんな時、清野さんから次の飲み会で我々に相談したい事がある旨を伝えてきました。
うちら3人は、これで苦し紛れのネタ収集をしなくても済むと思い、誰もが歓迎ムードでした。
3週間後、職場から1駅離れた所にある個室がある居酒屋に、いつもの4人衆が集まりました。
飲み始めた時こそは、最近の時事ネタを話していましたが、30分が経ったところで岡野さんが切り出しました。
岡野「ところでさ、前に清野君が言ってた相談って何?」
清野「それなんですけどね、他の誰にも言わないで下さいよ」
岡野「ああ、それは約束する!あとの2人も同じだから」
清野「じゃあ、言いますけどね…」
清野「え~と、何から話そうかな~」
高玉「いいから早く言えよ!」
清野「分かりました」
ここで、やっと清野さんがゆっくりと話し始めました。