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第六話 影

第六話です。


お楽しみください。

2年程前、シロイとクロイがまだアルカトラズを名乗る前の話。

アジトにしている古びた倉庫に2人はいた。

「クロイさ、今影っていくつぐらい同時に出せる?」3人掛けのソファーの真ん中に座り興味深そうにクロイに問いかける。

「20ぐらいか? 出してみよう」数えたことはないなと思い、一人掛けのソファーに深く座ったままスーっと影を出すクロイ。

「おー、すごいね24も出てるよ。今度の依頼でそれ全部出してやってみようよ」新しいオモチャを手にした子供のように喜ぶシロイ。

「ああ、そういえばここの警戒用に常時6つ影を置いてるんだった」おもむろにクロイが言葉を発する。

「え? じゃあ全部で30じゃん、すごいよクロイ。30全部連れて行こう」さっきよりも瞳の輝きが増しているシロイ。

「ああ、分かった」なぜシロイが嬉しそうなのかわからないが嬉しいならそれでいいかと思うクロイ。

「よーし、じゃあ作戦会議にしよう」やはりクロイといる時はシロイは屈託なく笑う。


翌日、とある組織の依頼に向かう2人。

昨日のシロイの言う通りクロイは影を全て出し依頼をこなしていた。

全てを影に任せ、クロイ自身は成り行きを見守る。

「ねえ、今って全部オートだよね? 精密に操れたりもするよね?」どこにいても興味のあるものを目にすると楽しそうなシロイ。

「そうだな、操るとなると若干俺自身にも負担はあるが問題ない。ところで後ろの隠れて見てる奴はどうする?」顎を後ろへ少し傾けシロイに尋ねる。

「んー、あれね、2人目相手にしてる時ぐらいからいるよね。放っておいていいよ。僕たちのことちょっとは宣伝してもわなくちゃね、目撃者ってのも必要なんだよ」何か考えがある時にシロイは含みのある笑い方をする。

「そうか」その含み笑いを確認するとクロイはその考えが何かは分からなくとも受け入れることにしている。

依頼をこなし終えると影達はクロイの周りに集まり、そして音もなくスーっと床に沈み込み消えていく。

そして、その様子を物陰から覗き見ていた者は全身を震わせながら全力でその場から逃げるように去っていった。


時は戻り、現在のロマーノのオフィス。

バルトロが連れてきた男の話を聞いたロマーノは黙って考え込んでいた。

影みたいな悪魔ってのはなんだ? 見たことのないものは想像のしようがない、そもそも今の話が本当なのかどうかも怪しいと思われる内容だ。だがロマーノはすべての可能性を考える。癖のようなものだ。

使わないならそれでいい、だが使える手がないことの方が問題だ。

ドエイドの仕事に初めて不安感を覚える。だが任せた以上他をあたるのは信用問題になりかねない。

今は他に打てる手はない、半ば諦めのように自分に言い聞かせ不安感を払拭しようとしてみるがどうもうまくいかない。ロマーノにとって初めての感覚だった。


一方ドエイドのサイラスもアルカトラズの情報を集めていた。

サイラスの集めた情報もそれ程具体的なものはなかった。聞こえてくるのは”あいつらはヤバい”そういった類の抽象的なものだった。

その中でやはりロマーノと同じような影を操るという情報に困惑していた。

「影とはなんだ? 武器の類とは違うのか?」

問いかけるように1人でつぶやくサイラス。

しばらく考え、今動ける中で最上の人選で依頼にあたることにした。サイラスもまたそういった意味で鼻が利くようだ。

5人、それが今回の依頼のために動くドエイドのエージェント達だ。

それぞれに連絡を付け、明日の夜に顔合わせをする事にした。


そして翌日の夜8時半。

港の第三倉庫に不穏な空気を纏う一角があった。

「今回の依頼の内容を話す。自己紹介は後で適当にやってくれ」サイラスが無駄なく話し出す。

他の5人は黙ってサイラスを見ている。

「ターゲットはカールゴン、それとアルカトラズと名乗る2人。カールゴンを餌にアルカトラズをおびき出し全員始末する、ただそれだけだ」仕事の内容を伝え終わり、5人を順に見るサイラス。

「アルカトラズってのはどんな奴らなんだ?」一番右側のソファーに座る男がサイラスに問いかける。

「わかっている情報がやたらと少ない。ただ影を使うという情報が気にかかるとこだな」実際にサイラスが掴めた情報はこの程度だった。

「影? ファンタジーかよ」黒い帽子を深くかぶった若い男が笑いながら言う。

「報酬は1人2万ドル。状況の進捗と結果の報告を忘れないように」自分でもおかしなことを言っているのはわかっているが持っている情報は出し惜しみしてもしょうがない、それがサイラスの答えだった。

「2万ってことはそれなりの内容だってことだな。報告の件も了承した。後、影か。気に留めておこう」サイラスと対面する位置に座る体格のいい男が答える。

暫くの沈黙。それぞれがこの依頼での自分の役割を考え巡らせる。そしてタイミングを合わせたように5人それぞれが顔を見合わせ獲物を狩る眼へと変わってゆく。

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