第五話 ロマーノ
第五話です
感想お待ちしています
ヴァレンティノのところからの帰り道、
「さぁどう出るだろうね?」楽しそうに笑うシロイ。
「挨拶は終わりか?」シロイに付いてきただけのクロイが聞く。
「そうだね、僕たちにとっては挨拶なんだけどヴァレンティノ達には宣戦布告に聞こえただろうね」クロイと話す時のシロイは屈託なく笑う。
シロイとクロイの訪問後ヴァレンティノファミリー、厳密にはロマーノはあわただしく動いていた。
「誰だ? ボスの部屋にあいつらを入れたのは?」声を荒げているわけではないがその声を聞いた者たちには緊張が走った。
「ボスの部屋には誰も通していません、ここには誰も来ていません」状況がわからず困惑する者たちの答えに
「どういうことだ?」自分に問いかけるようにロマーノがひとり呟く。
少し考えてからすぐに電話をかける。相手はバルトロだ。
「ロマーノだ、一年ぐらい前にお前が連れてきたフリーの奴らについて情報を集めておけ、今はボスのところだがすぐにオフィスに向かう」これからの対応を頭の中でいくつか考えながらそれだけ伝えると電話を切る。
「誰をカールゴンの件に向かわせようか」何人か候補を思い浮かべながらバルトロの情報を確認してから決めることにした。
色々と思考を巡らせながらロマーノ自身が車を運転しながらオフィスへと向かった。
オフィスに到着するとバルトロがロマーノを出迎える。
「ロマーノさんお帰りなさい、早速ですが連絡をもらった件で今わかっている情報だけですがお伝えします」
バルトロからの情報は予想通りあまり多くなかった。
白い方が頭脳担当、黒い方が腕力担当。1年程前に色々な組織で仕事をしていたようでヴァレンティノファミリーの仕事を最後にうわさを聞かなくなったということぐらいだった。
「引き続き情報を集めろ、何かわかったらどんなことでもいいから報告しろ」バルトロにそう伝え下がらせる。
用心に越したことはないだろう、少し考え電話をかける。
「仕事の依頼だ、どれぐらいでオフィスまで来れる?」手短に最低限の内容だけ伝える。
「30分で伺います」電話の相手も同じく手短な返答。電話の相手はフリーではなく組織として動くドエイドのサイラスだ。
そしてちょうど30分後サイラスがオフィスへと現れる。ロマーノは時間に正確な相手としか仕事をしない、いくつかある仕事をするときのルールだ。
「お久しぶりです、ロマーノさん」へりくだるわけではないが丁寧な物言いのサイラス。
「久しぶりなのは世の中が平和な証拠だ、早速だが依頼の内容を説明する。報酬は10万ドル、ターゲットはカールゴンだ」
「10万ドルということはそれなりの内容なんでしょうね、カールゴンと言えば最近何やら後ろ盾ができたようで」この辺りの情報も周知している、どの業界でも情報は重要だ。
「知っているなら話が早い、アルカトラズとかいうルーキーがいる。カールゴンを攫ってそいつらもおびき出し始末してほしい。手強いぞ」最後の”手強いぞ”に力を込めて言う。
「ロマーノさんが手強いというからには10万ドルでも安いかもしれませんね」丁寧に値段交渉をちらつかせるサイラス。
「わかった、前金で5万、成功報酬でプラス10万だ」これでも割が合わないかもなと考えながらも表情には出さない。
「わかりました、他にご要望はありますか?」すんなりと金額が上がったことに違和感を感じながらも注意深くロマーノを観察しながら算段を立てる。
「いや、ない。わかっている情報としては相手は最低でも2人、チームを組んで動いた方がいいだろう、白い奴と黒い奴がいる。特に黒い方には気を付けた方がいい」ドエイドの仕事は確かだ、今まで依頼を出して失敗したことはない。だからこその選択だ。だが何かが引っかかる。
「承知しました、早速人選に取り掛かりましょう」過去の実績からくる自信に満ちた返答、失敗する事など頭の片隅にもないようだ。
奴らがヴァレンティノとロマーノの前に現れたことは伏せたまま依頼の交渉を終える。メンツの問題だ。
ロマーノのオフィスを後にするサイラス。”黒い方には気を付けた方がいい”ロマーノは奴らを知っているのか?
余計な詮索はしない方がいいと判断しあえて聞かずにいた。本当に割に合わない仕事かもしれないなと思いながらチームの編成を考えるサイラス。
翌日、オフィスでバルトロがロマーノに報告に来た。
「昨日の件なのですがいくつか分かったことがありまして」少し不安げな表情で話始めるバルトロ。
「どうした? お前の顔色が悪いのは寝る間も惜しんで情報を集めていたからなのか、それともその情報がお前をそうさせているのか、どちらだ?」不穏な気配はすぐに消し去る、この世界で長く生きていたいなら怠ってはいけないことだ。
「そ、それが、あの2人組の事を聞き込みに何人かと会ったんですが中堅以上の組織の仕事を受けていたようで、うちと付き合いのある組織の奴があいつらの現場をたまたま見たらしいんですが、実はそいつを連れてきてましてロマーノさんが良ければ直接話を聞いてもらえないかと思いまして」先ほどより不安感が増しているようだ。
「まあいいだろう、そいつを呼べ」少しイラつきを覚えたが話を進めることにした。
そして入ってきた奴はいきなりロマーノに話しかけてきた。恐怖に震えながら叫ぶように
「あいつらは悪魔です!」