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第四話 ヴァレンティノファミリー

第4話です、お楽しみください。

そして感想などいただけると喜びます。


少数の強者、普通であればかかわらない方がいい者たち。それがもっかのシロイとクロイの標的である。


「活きのいいルーキーがいるらしいな」ヴィンテージ調の深い木目をたたえた机を前に、座り心地のよさそうな皮の椅子に座ってヴァレンティノが言う。

「かなりあちこちにちょっかいをかけてるようで」ヴァレンティノの座る椅子と机を挟んだ向かい側に立つロマーノが答える。

イタリア系マフィア、ボスを筆頭に血の掟で結束された組織でファミリーと呼ばれている。

ヴァレンティノファミリーは勢力図が変化する中でも生き残っているいわゆる老舗的なファミリーだ。

そしてここニューヨークで大きな勢力を持っている組織の一つでもある。

彼らの存在は非合法ではあるが、世に必要とされているのもまた事実なのだ。

「カールゴンの件はどうなってる?」

「はい、何人か送り込ませる予定で手配しています」

彼らにとっては不穏な話も世間話のようなものだ。

「わかっているな?」

「ええ、もちろんです、ボス」

この世界ではメンツというものにこだわる。いきなり現れたルーキーの言うことなど気に留めはしない。

2人の話が終わるのを待っていたかのように扉が開き人が入ってきた。シロイとクロイである。

「やあ、こんにちは。僕たちがアルカトラズだよ」ヴァレンティノを見とめ挨拶をするシロイ。

「アルカトラズだと?」睨みつけるようにヴァレンティノが吐き捨てる。

「今日は挨拶に来ただけだよ、後、カールゴンにはノータッチでお願いするね」いつもの天使の微笑みで臆することなく答えるシロイ。

「子供の遊びに付き合ってられるわけないだろ」ヴァレンティノとシロイの間に割って入るロマーノ。

「あれ? ロマーノだ」ロマーノを見るなりシロイが話しかける。

「ん? あ、お前らは!」その話し方と天使の笑顔でロマーノの記憶を思い起こさせる

「久しぶりだね」きっと誰にでもそうなのだろうがとても親しそうにシロイはロマーノに話しかける。

「誰だ?」ヴァレンティノがロマーノに向かって状況を説明するように促す。

「一年程前やたらと腕の立つフリーの用心棒ってのが居るって聞きましてルキーノとこと取り合ってるビルにそいつらを行かせたんです」

簡潔にそれでいて伝わりやすいように先ずは要点を相手に伝えるロマーノ。できる男のようだ。



一年程前の話・・・

ロマーノは仲間たちとよく夕食を一緒にとる。そんなある日の食事の時の会話が一年後につながっていく。

「ロマーノさん、フリーでやってる奴なんですがやたら腕の立つ奴がいるようで」ロマーノの部下のバルトロが話しかける。

「フリー? 珍しいな。例のルキーノと取り合ってるビルにでも行かせてみるか」失敗したとしてもこちらに損害はない、そう考えロマーノが言う。報酬は後払いなのだから。

数日後、バルトロがそのフリーの用心棒とやらを連れてロマーノのいるオフィスへとやってくる。

普段であればそういったことは他の者に任せるロマーノであったが、フリーでやっているということに興味を持ち直接会うことにしていた。

「お前たちか?フリーでやっているっていうのは?」少年とも見て取れる2人を見て確認するようにロマーノが質問をする。

「そうだよ、僕がシロイ、こっちがクロイ」この頃にも天使の微笑みをたたえているシロイ。クロイは名前を言われたときに頷いただけで黙っている。

「そうか分かった、仕事の内容だがあるビルに行ってそこを占拠してくれればいい。もちろん敵対する奴らがいるからそいつらも始末しなきゃならないがね」

見た目の不安はあったが成功すればしたで実入りが期待できるし、失敗したところで損はない。そうそろばんを弾き2人に依頼を出すロマーノ。

「報酬は1万ドルだよね? そのビルの場所教えてくれる?」お駄賃をもらってお使いにでも行くようにシロイが聞く。

「詳しいことはバルトロに聞くといい」ロマーノの目的はこの2人を見定めること、後のことは自分の範疇外である。

バルトロに連れられ2人は部屋を出ていく。そしてロマーノは日常へと戻る。

それから1週間程してから思い出す、そういえばフリーの奴らはどうなったのかと。

バルトロにに確認するとあれからあのビルの一帯が静かになっているらしい。再び興味が沸き直接見に行くことにした。

護衛もつけず、もちろん1人で対応できる自信があるからこそなのだが例のビルへと向かう。

確かに静かだ。平和というわけではなく人の気配がない。その静けさの中建物へと入っていく。

建物に入るとすぐに真ん中あたりに踊り場がある一直線に2階へと続く階段がある。その踊り場の一段上の階段に座る人影と踊り場に立つ人影が見えた。

窓からの日に照らされその白と黒の影がロマーノを見降ろす。そして公園で知り合いにでも会ったかのように白い影が話しかける。

「やあ、ロマーノ。上の部屋にクロイが縛り付けた人達がいるよ」オフィスであった時と同じように微笑みかけられ背筋に冷たいものを感じる。

「なんだって?」その微笑みに似つかわしくない言葉にロマーノはひとり呟くように声に出す。

「もう5日ぐらいあのままだから連れて行ってちょっと拷問でもすれば色々聞けるんじゃないかな?」白い影は相変わらず微笑みを絶やさず似つかわしくない言葉を口にする。

「部屋がクサイ、早く連れて行け」初めて耳にする黒い影の声。

「やるじゃないか」驚いてばかりもいられない、修羅場ならいくつも搔い潜ってきた。用心しながらも階段を上がっていく。

「ほらね殺さなくてよかったでしょ、クロイ」白い影が黒い影に話しかける。

「そうみたいだな」黒い影が答える。

白と黒の影を横切り上の部屋に入っていく。そこには10人以上の男たちが縛られていた。糞尿を垂れ流した状態で。

鼻を突く臭いの中バルトロに連絡を入れ人手をよこすように指示を出す。そんな中縛られている1人がかすれるような声ですがるようにロマーノに話しかける。

「こんな奴らが居るなんて聞いてねぇ。ギャラと内容が合わねぇ」助けを求めるように首だけをロマーノに向け哀れに見上げる。



「それで、何の用だお前達?」その視線にずっと目の前の2人を捉えたままロマーノの話を聞き終えたヴァレンティノが言う。

「さっきも言ったとおりだよ、挨拶に来ただけだよ」敵意は感じられないが、どこかしら冷たさを感じるシロイの言葉。

しばらくの沈黙の中、各々が思惑を巡らせる中再びシロイが話し出す。

「じゃそういうことで僕たちは帰るね。またね」友達と別れ際のあいさつでも交わすようにヴァレンティノに手を振るシロイ。

「終わりか?」シロイと同じように敵意は感じられないが一部の隙も無く佇むクロイが初めて声を出す。

そしてゆっくりと振り返り部屋を出てゆく2人。ロマーノもそうだがヴァレンティノも死線を超えてきた男だ、2人のヤバさを感じ取り黙って去っていくのを見届ける。

「カールゴンの件は何人かではなく腕の確かな奴を差し向けろ、あれは並のヤツ程度じゃ相手にもならない」そういうとヴァレンティノは大きく息を吐きだす。緊張から解放されたように。


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